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第二部
6.響の能力
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*誤字脱字訂正しました*
********************************************
ようやく静かになった事務所で私は自分の席に座り、パソコンを立ち上げた。未処理の画像やファイル、写真を整理して、溜まっている事務仕事を処理しなければ。
パートで東条さんの第二秘書をしながら、事務所の仕事もきちんとスケジュールを調整しながらこなしてきた。あまり長丁場になる仕事はさすがに出来ないけど、2~3日あれば調査できる仕事もある。自分から進んでやりたくはないけど、浮気調査などが一番証拠集めがしやすい。ターゲット情報を依頼主から聞いて、恐らく密会中と思われる時刻を予測する。あとは写真に決定的瞬間を激写できればOK。昼間からラブホに向うけしからん男を多数目撃していた為、正直恋愛に夢を抱けないんじゃって思ってたけど杞憂に終わったようだ。そしてデートシーンよりホテル前の写真のが言い逃れできない証拠で、背景と共に撮れれば言う事なし。美人な彼女がいるのに平気で二股三股や、浮気する男の心理が本当にわからないよ。
そして一番最近終えた仕事が、しつこく言い寄ってくる女性の交際を断る為に彼女のフリをして欲しいという依頼だった。半ばプチストーカー化してきた女性を諦めさせる為に半日デートして街中をうろついただけだけど。これは先週実行して、その場で話し合いにまでもって行き(後をつけていた女性が詰め寄ってきた為話し合いになった)、何とか無事に解決できた。そこそこ見た目も良くて受けの良さそうな依頼主は女性に厳しく言う事が出来ない性格だそうで。気弱な優男という表現がぴったりな人だった。面倒事に巻き込まれるからもう少しビシっと言える男性になってもらいたい。
簡単そうな仕事に見えるけど、実は私も結構内心ひやひや物だったんだ。いつ女性が襲ってくるかわからないし・・・一応人通りの多い場所を選んで行動していたけど、その女性も気性が激しい性格じゃなくて運がよかった。万が一護身術程度で何とかなるかびびってたけど拍子抜けだ。
ちなみにこれはまだ東条さんと付き合う前の話。万が一誰か知人に知らない男と歩いているのを目撃されても、私は浮気にならない。むしろ仕事だ。でもこれからは仕事でもこんな仕事は控えるべきかもしれない。私が逆の立場だったら嫌だしな・・・
そしてその報告書の作成がまだ出来ていない。一週間経ったし、いい加減作らないとまずい。
お気に入りのマグカップに熱々の紅茶を淹れてきて、デスクに戻る。既に書きなれてきた報告書を書こうとマウスをクリックした所で、鷹臣君の邪魔が入った。
「麗ー。言い忘れてたんだけどさ、お前の東条セキュリティーの派遣、この前更新してきたからな」
お行儀悪くデスクに足を乗せて携帯を弄る鷹臣君に思わず振り返る。東条さんの所で秘書仕事は確かに今月で契約が切れる。それを更新してきたって、私何も聞かされていないんですけど!?
「ええ!いつの間に!?ってか、ちょっと待って。私何も聞いていないよ?」
デスクを離れて鷹臣君に近付くと、鷹臣君は携帯から私に視線を移動してきた。訝しむ表情で見つめられる。
「何だ、嫌だったのか?てっきり『嬉しい!』と小躍りしながら喜ぶと思っていたのに」
「ちょっと私小躍りなんていつもしないよね。何その発想は!って、そうじゃなくって。いつ、いつそんな依頼来たの!?」
タバコに火をつけてふーと煙を吐いた鷹臣君は、「いつだったか?」と他人事のように呟いた。もしかしてもうボケたのか。30代前半でボケるのは早くないか。それよりも私が目の前に立っているのにタバコの煙を吹きかけるのはどうなの。嫌がらせに思えなくもない。
「今月入ってからだからまあ、2週間前くらいか。延長できるならした方がこっちとしても好都合だしな。お前も東条さんと付き合い始めたなら、傍にいたいだろ?何も問題ないじゃねーか」
「問題ないあるじゃなくって。そんな前に言われてたんなら私にも一応訊いてよ~!東条さんも司馬さんも何も言ってなかったし、私もさっぱり5月で終わりって忘れてたよ!」
我ながら能天気だと思う。でも期間限定だと思ってたから長月 都を演じる事が出来るわけで。それがもっと長引くとなると、そこそこ神経も使うし他の社員さんとの距離感も真剣に考えなくてはいけない。他部署に知り合いの人が出来たのは嬉しいけど、それは都としてであり、麗としてではないからだ。偽名を使って別人になっている以上、深く関わる事も馴れ合いもできない。
それとまさか東条さんとこんな関係になるなんて思っていなかったし、これからも会社で会えるのは嬉しいけど、上司と部下の関係ってどうなんだろう。社内で噂にならないかもっと注意を払う必要がある。近くで姿を見ていられるのは大歓迎だ。仕事中の東条さんは秘書のお姉さま方が感嘆の溜息を吐くほどかっこいい。真剣な眼差しで書類に目を落とした時に出来る睫毛の影とか、少し疲れた時に見せる憂い顔とか、零れる溜息が妙に色っぽくってドキドキする。司馬さんセットの東条さんを見れるだけでかなり恵まれた職場だと断言できる。代われる物なら代わりたい!と立候補してくる女性社員は大勢いるのだ。
嬉しいけど楽天的に喜べない。複雑な乙女心だ。
「難しい顔して悩むなよ。もっと気楽に今まで通りでいればいーだろ。どうせお前らが籍入れたら今のままでいられなくなるんだ。それまでの期間、上司と秘書の禁断ごっことやらを楽しんでおけ」
じゅ、と灰皿にタバコを押し付けて平然とした顔で告げると、意地悪くニヤっと笑った。
上司と秘書の禁断ごっこって・・・何だか発想も言い方もエロくない!?何考えているんだ、この人は!と、じと目で眺めてしまう。
まあ、ここは大人な私がさらりと流しておけばいい。さすがにヤバイ発言をした時は遠慮なくイエローカードを突きつけてやる。
「まあ、いいや。そういえば私も訊きたかったんだけど。響をアルバイトで雇うって本当?」
またしても私聞いていないんだけど?
目線で訴える。私一応響の姉ですよね?と。鷹臣君が私達の保護者代わり(成人している私に保護者は必要ないと思うけど)でも、私に報告する義務はあるはずだ。学園に書類を提出する段階で聞かされて、お姉ちゃんは地味にショックだったよ。
「ああ、そうだな。タイミングを見て言うつもりだったんだが、そう睨むな。別にお前をのけ者にしたわけじゃねーよ。土曜の事件の後、響を預かっただろ。その時決めたんだ」
確かにあの後珍しく鷹臣君が響を預かるって言って、強制的に連れて行ったんだっけ。私も東条さんの車で送られて、しかも響の事を考える余裕がなかったから忘れてた。あの時は自分の事でいっぱいで、余裕がなくなってたんだよ・・・。
「何で急に響を連れて行ったの?バイトも急だよね。鷹臣君、一体何考えてるの」
怪訝な顔でじっと目を見つめると、鷹臣君は私に椅子に座るよう促した。
「俺も隼人も全く気付かなかったんだがな、どうやら響もしっかりと古紫の血を受け継いでいるらしい」
軽く嘆息した鷹臣君は説明を続ける。
「あの日隼人に会場内の様子を探れって言ったらな、霞がかかってて視えないって言うんだ。上に行けば行くほど何かに拒絶されて中を覗くことが出来ない。隼人はてっきり俺が何かしているんじゃないかと疑ったらしいが、生憎俺は何もしていなかったんだ。それで辿り着いた原因が、響だ」
「え?響?何それ、響は別に特別な力なんて持っていないはずじゃ・・・」
私も響も子供の頃にそう判断された。
お母さんと違い、子供2人は周囲が落胆するほど何の力も持っていない。ほんのちょっとしか動かせない念動力や遠い未来を夢で見る予知夢なんてないも同然だ。響は私以上に特殊な力を使えない普通の子供だった。
なのに一体どういうことなの。
「それを調べる為に響を借りたんだよ。で、結果だがな。どうやらあいつは力を撥ね退けるというか、寄せ付けない体質らしい」
「寄せ付けない?」
首を傾げて訊ねると、鷹臣君が頷いた。
「所謂、拒絶ってやつか。隼人の千里眼で響を視ようとしても映らない。他にも試しに念力で投げたフォークは跳ね返ってきたな。後は出ると噂の心霊スポットに丑三つ時に連れて行ったが、全く無反応でさすがに俺も驚いたぜ。こりゃ使えるってな」
「って、ちょっとー!?人の弟に何勝手に危ないことしてるの!フォークを投げるとか危ないじゃん!しかも響を心霊スポットに連れて行ったとか!!」
最後の台詞を言った鷹臣君の背後から悪魔の尻尾がチラリと見えた気がした。笑いを堪えて声が少し震えている。そして凶悪な笑みを浮かべていた。ここまで来たらバイトの件も大方想像出きてきた。
「鷹臣君。まさかと思うけど、心霊系の依頼が来た時に響を使うつもりとか言わないよね?」
胡乱な眼差しで問い詰める。この男、使える物は何でも使えって信条だ。全く性質が悪くて手に負えない。
「珍しく察しがいいな。その通りだ」
さらりと肯定した鷹臣君にふつふつと怒りが沸いた。さすがにそれは許可できないよ!
「やめてよ冗談じゃないよ!そんな危ない事にかわいい弟を巻き込まないで!」
「何言ってる。あいつは俺にとっても可愛い従弟だ。男なら若い時に何でも経験つんでおくに限るだろ。じゃねーといい男にならないぞ」
「うっ・・・」
いろんな経験は必要だと思うけど、この件に関しては素直に頷けない。
「それにな、最近昔馴染みから頼まれた案件でそーゆーお祓いが必要な話があったんだよ。知り合いの霊能者が経営している事務所を紹介したんだがな、響みたいな能力はありがたがられるんだ。人間多かれ少なかれ、霊感ってのは備わっている。まあ、現代の人間はその第6感やら野性の勘って奴は薄れつつあるが、逆に全くないって奴は貴重な存在でな。俺は視える方じゃないが、一緒に行った視える奴はえらく感動してたぞ。響の鈍感さに」
・・・それは人一倍鈍いって事か。
霊的不感症・・・みたいな?そんな感じ?
「そこでたまに貸してくれって頼まれてだな。まあうちを通してならまだ俺が間に入って把握できるだろ?って事でうちでバイトするかって訊ねたら自分からするって言ったんだ」
「え、ちょっと確認。それって響は自分からそのゴーストバスター的な仕事をしたいって言ったわけ?」
思わず昔見たアニメを思い出す。ボディコンスーツを着た美人霊能者と男子高校生が確か悪霊とかを退治していたような・・・?ひどく曖昧な記憶だけど。
はは、と笑った鷹臣君は「何言ってんだお前。当たり前だろ?」と答えた。その反応にホッとした直後。
「俺がそんなの言うわけねーじゃん。そんな今から怖気づいて逃げられたら困ることを。まずはうちの雑用から入れってだけ伝えて、徐々にそっちにまわして行くつもりだ」
やっぱり最低だこの男!
「信じらんない!鷹臣君の鬼ー!!響にまで無茶させないでよね!?」
「無茶はさせねーよ。あちらさんの所長はかなりの人格者だぞ。逆に学べる事は多いはずだ」
って事で、お前は余計な事を言うなよ。
そう釘を刺してから鷹臣君は室長室へ戻って行った。その姿を見届けた後、思わずデスクの上に突っ伏してしまう。
ごめんね響。無力なお姉ちゃんは多分響が嫌がっても何も出来ないと思うの。こんなお姉ちゃんをどうか許して欲しい。
まだ雑用バイトすら始まってないのに早くも私は弱気になって、心の中で謝っておいた。
************************************************
何だかずっと麗がツッコミ役をしていた気がします・・・。除霊物と言うと某アニメを思い出します(笑)そういえば相方男子高校生だったよね??名前は覚えてませんが(汗)
響は恐らくバイト先で運命の出会いをする予定です(多分!)その話はいずれどこかで・・・
誤字脱字見つけましたら報告お願いします!!
お気に入り登録、感想、評価ありがとうございます。
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ようやく静かになった事務所で私は自分の席に座り、パソコンを立ち上げた。未処理の画像やファイル、写真を整理して、溜まっている事務仕事を処理しなければ。
パートで東条さんの第二秘書をしながら、事務所の仕事もきちんとスケジュールを調整しながらこなしてきた。あまり長丁場になる仕事はさすがに出来ないけど、2~3日あれば調査できる仕事もある。自分から進んでやりたくはないけど、浮気調査などが一番証拠集めがしやすい。ターゲット情報を依頼主から聞いて、恐らく密会中と思われる時刻を予測する。あとは写真に決定的瞬間を激写できればOK。昼間からラブホに向うけしからん男を多数目撃していた為、正直恋愛に夢を抱けないんじゃって思ってたけど杞憂に終わったようだ。そしてデートシーンよりホテル前の写真のが言い逃れできない証拠で、背景と共に撮れれば言う事なし。美人な彼女がいるのに平気で二股三股や、浮気する男の心理が本当にわからないよ。
そして一番最近終えた仕事が、しつこく言い寄ってくる女性の交際を断る為に彼女のフリをして欲しいという依頼だった。半ばプチストーカー化してきた女性を諦めさせる為に半日デートして街中をうろついただけだけど。これは先週実行して、その場で話し合いにまでもって行き(後をつけていた女性が詰め寄ってきた為話し合いになった)、何とか無事に解決できた。そこそこ見た目も良くて受けの良さそうな依頼主は女性に厳しく言う事が出来ない性格だそうで。気弱な優男という表現がぴったりな人だった。面倒事に巻き込まれるからもう少しビシっと言える男性になってもらいたい。
簡単そうな仕事に見えるけど、実は私も結構内心ひやひや物だったんだ。いつ女性が襲ってくるかわからないし・・・一応人通りの多い場所を選んで行動していたけど、その女性も気性が激しい性格じゃなくて運がよかった。万が一護身術程度で何とかなるかびびってたけど拍子抜けだ。
ちなみにこれはまだ東条さんと付き合う前の話。万が一誰か知人に知らない男と歩いているのを目撃されても、私は浮気にならない。むしろ仕事だ。でもこれからは仕事でもこんな仕事は控えるべきかもしれない。私が逆の立場だったら嫌だしな・・・
そしてその報告書の作成がまだ出来ていない。一週間経ったし、いい加減作らないとまずい。
お気に入りのマグカップに熱々の紅茶を淹れてきて、デスクに戻る。既に書きなれてきた報告書を書こうとマウスをクリックした所で、鷹臣君の邪魔が入った。
「麗ー。言い忘れてたんだけどさ、お前の東条セキュリティーの派遣、この前更新してきたからな」
お行儀悪くデスクに足を乗せて携帯を弄る鷹臣君に思わず振り返る。東条さんの所で秘書仕事は確かに今月で契約が切れる。それを更新してきたって、私何も聞かされていないんですけど!?
「ええ!いつの間に!?ってか、ちょっと待って。私何も聞いていないよ?」
デスクを離れて鷹臣君に近付くと、鷹臣君は携帯から私に視線を移動してきた。訝しむ表情で見つめられる。
「何だ、嫌だったのか?てっきり『嬉しい!』と小躍りしながら喜ぶと思っていたのに」
「ちょっと私小躍りなんていつもしないよね。何その発想は!って、そうじゃなくって。いつ、いつそんな依頼来たの!?」
タバコに火をつけてふーと煙を吐いた鷹臣君は、「いつだったか?」と他人事のように呟いた。もしかしてもうボケたのか。30代前半でボケるのは早くないか。それよりも私が目の前に立っているのにタバコの煙を吹きかけるのはどうなの。嫌がらせに思えなくもない。
「今月入ってからだからまあ、2週間前くらいか。延長できるならした方がこっちとしても好都合だしな。お前も東条さんと付き合い始めたなら、傍にいたいだろ?何も問題ないじゃねーか」
「問題ないあるじゃなくって。そんな前に言われてたんなら私にも一応訊いてよ~!東条さんも司馬さんも何も言ってなかったし、私もさっぱり5月で終わりって忘れてたよ!」
我ながら能天気だと思う。でも期間限定だと思ってたから長月 都を演じる事が出来るわけで。それがもっと長引くとなると、そこそこ神経も使うし他の社員さんとの距離感も真剣に考えなくてはいけない。他部署に知り合いの人が出来たのは嬉しいけど、それは都としてであり、麗としてではないからだ。偽名を使って別人になっている以上、深く関わる事も馴れ合いもできない。
それとまさか東条さんとこんな関係になるなんて思っていなかったし、これからも会社で会えるのは嬉しいけど、上司と部下の関係ってどうなんだろう。社内で噂にならないかもっと注意を払う必要がある。近くで姿を見ていられるのは大歓迎だ。仕事中の東条さんは秘書のお姉さま方が感嘆の溜息を吐くほどかっこいい。真剣な眼差しで書類に目を落とした時に出来る睫毛の影とか、少し疲れた時に見せる憂い顔とか、零れる溜息が妙に色っぽくってドキドキする。司馬さんセットの東条さんを見れるだけでかなり恵まれた職場だと断言できる。代われる物なら代わりたい!と立候補してくる女性社員は大勢いるのだ。
嬉しいけど楽天的に喜べない。複雑な乙女心だ。
「難しい顔して悩むなよ。もっと気楽に今まで通りでいればいーだろ。どうせお前らが籍入れたら今のままでいられなくなるんだ。それまでの期間、上司と秘書の禁断ごっことやらを楽しんでおけ」
じゅ、と灰皿にタバコを押し付けて平然とした顔で告げると、意地悪くニヤっと笑った。
上司と秘書の禁断ごっこって・・・何だか発想も言い方もエロくない!?何考えているんだ、この人は!と、じと目で眺めてしまう。
まあ、ここは大人な私がさらりと流しておけばいい。さすがにヤバイ発言をした時は遠慮なくイエローカードを突きつけてやる。
「まあ、いいや。そういえば私も訊きたかったんだけど。響をアルバイトで雇うって本当?」
またしても私聞いていないんだけど?
目線で訴える。私一応響の姉ですよね?と。鷹臣君が私達の保護者代わり(成人している私に保護者は必要ないと思うけど)でも、私に報告する義務はあるはずだ。学園に書類を提出する段階で聞かされて、お姉ちゃんは地味にショックだったよ。
「ああ、そうだな。タイミングを見て言うつもりだったんだが、そう睨むな。別にお前をのけ者にしたわけじゃねーよ。土曜の事件の後、響を預かっただろ。その時決めたんだ」
確かにあの後珍しく鷹臣君が響を預かるって言って、強制的に連れて行ったんだっけ。私も東条さんの車で送られて、しかも響の事を考える余裕がなかったから忘れてた。あの時は自分の事でいっぱいで、余裕がなくなってたんだよ・・・。
「何で急に響を連れて行ったの?バイトも急だよね。鷹臣君、一体何考えてるの」
怪訝な顔でじっと目を見つめると、鷹臣君は私に椅子に座るよう促した。
「俺も隼人も全く気付かなかったんだがな、どうやら響もしっかりと古紫の血を受け継いでいるらしい」
軽く嘆息した鷹臣君は説明を続ける。
「あの日隼人に会場内の様子を探れって言ったらな、霞がかかってて視えないって言うんだ。上に行けば行くほど何かに拒絶されて中を覗くことが出来ない。隼人はてっきり俺が何かしているんじゃないかと疑ったらしいが、生憎俺は何もしていなかったんだ。それで辿り着いた原因が、響だ」
「え?響?何それ、響は別に特別な力なんて持っていないはずじゃ・・・」
私も響も子供の頃にそう判断された。
お母さんと違い、子供2人は周囲が落胆するほど何の力も持っていない。ほんのちょっとしか動かせない念動力や遠い未来を夢で見る予知夢なんてないも同然だ。響は私以上に特殊な力を使えない普通の子供だった。
なのに一体どういうことなの。
「それを調べる為に響を借りたんだよ。で、結果だがな。どうやらあいつは力を撥ね退けるというか、寄せ付けない体質らしい」
「寄せ付けない?」
首を傾げて訊ねると、鷹臣君が頷いた。
「所謂、拒絶ってやつか。隼人の千里眼で響を視ようとしても映らない。他にも試しに念力で投げたフォークは跳ね返ってきたな。後は出ると噂の心霊スポットに丑三つ時に連れて行ったが、全く無反応でさすがに俺も驚いたぜ。こりゃ使えるってな」
「って、ちょっとー!?人の弟に何勝手に危ないことしてるの!フォークを投げるとか危ないじゃん!しかも響を心霊スポットに連れて行ったとか!!」
最後の台詞を言った鷹臣君の背後から悪魔の尻尾がチラリと見えた気がした。笑いを堪えて声が少し震えている。そして凶悪な笑みを浮かべていた。ここまで来たらバイトの件も大方想像出きてきた。
「鷹臣君。まさかと思うけど、心霊系の依頼が来た時に響を使うつもりとか言わないよね?」
胡乱な眼差しで問い詰める。この男、使える物は何でも使えって信条だ。全く性質が悪くて手に負えない。
「珍しく察しがいいな。その通りだ」
さらりと肯定した鷹臣君にふつふつと怒りが沸いた。さすがにそれは許可できないよ!
「やめてよ冗談じゃないよ!そんな危ない事にかわいい弟を巻き込まないで!」
「何言ってる。あいつは俺にとっても可愛い従弟だ。男なら若い時に何でも経験つんでおくに限るだろ。じゃねーといい男にならないぞ」
「うっ・・・」
いろんな経験は必要だと思うけど、この件に関しては素直に頷けない。
「それにな、最近昔馴染みから頼まれた案件でそーゆーお祓いが必要な話があったんだよ。知り合いの霊能者が経営している事務所を紹介したんだがな、響みたいな能力はありがたがられるんだ。人間多かれ少なかれ、霊感ってのは備わっている。まあ、現代の人間はその第6感やら野性の勘って奴は薄れつつあるが、逆に全くないって奴は貴重な存在でな。俺は視える方じゃないが、一緒に行った視える奴はえらく感動してたぞ。響の鈍感さに」
・・・それは人一倍鈍いって事か。
霊的不感症・・・みたいな?そんな感じ?
「そこでたまに貸してくれって頼まれてだな。まあうちを通してならまだ俺が間に入って把握できるだろ?って事でうちでバイトするかって訊ねたら自分からするって言ったんだ」
「え、ちょっと確認。それって響は自分からそのゴーストバスター的な仕事をしたいって言ったわけ?」
思わず昔見たアニメを思い出す。ボディコンスーツを着た美人霊能者と男子高校生が確か悪霊とかを退治していたような・・・?ひどく曖昧な記憶だけど。
はは、と笑った鷹臣君は「何言ってんだお前。当たり前だろ?」と答えた。その反応にホッとした直後。
「俺がそんなの言うわけねーじゃん。そんな今から怖気づいて逃げられたら困ることを。まずはうちの雑用から入れってだけ伝えて、徐々にそっちにまわして行くつもりだ」
やっぱり最低だこの男!
「信じらんない!鷹臣君の鬼ー!!響にまで無茶させないでよね!?」
「無茶はさせねーよ。あちらさんの所長はかなりの人格者だぞ。逆に学べる事は多いはずだ」
って事で、お前は余計な事を言うなよ。
そう釘を刺してから鷹臣君は室長室へ戻って行った。その姿を見届けた後、思わずデスクの上に突っ伏してしまう。
ごめんね響。無力なお姉ちゃんは多分響が嫌がっても何も出来ないと思うの。こんなお姉ちゃんをどうか許して欲しい。
まだ雑用バイトすら始まってないのに早くも私は弱気になって、心の中で謝っておいた。
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何だかずっと麗がツッコミ役をしていた気がします・・・。除霊物と言うと某アニメを思い出します(笑)そういえば相方男子高校生だったよね??名前は覚えてませんが(汗)
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