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第二部
17.堕天使の恋
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*作者に作詞の経験はおろか才能は一切ありませんので、どうか見逃してやってください・・・
*誤字訂正しました*
********************************************
欲しいのなら求めればいい
欲しいのなら奪えばいい
誰の目にも映らないように
茨の檻に閉じ込め、耳元で愛を囁け
狂気に満ちた獣が目を覚ました――
静寂と闇に支配されし真夜中、
月光に照らされた聖なる少女
堕ちた僕はもう、あの場所には帰れない
帰る羽は失った
それならここに落としてしまえ
僕の傍を離れないように純白で無垢な君を
黒く、染めて
欲しいのなら手を伸ばせばいい
欲しいのなら狂えばいい
苦しい夜を乗り越えて愛を歌え
捕らえてしまえと獣が咆哮をあげる
奪いたいと願った僕は逆に君に捕らわれた――
◆ ◆ ◆
「――え~と、『少女の仮面を脱いだ君は色香を放ち僕を惑わす・・・』って、ねえK君。これって何?」
手渡された紙に視線を落として朗読を続けた後、意味が分からず疑問符を浮かべる。何だか危ない片想いのポエムっぽくないか?純白で穢れのない聖女を黒く染めてって、ちょっと妖しい空気が醸し出されていない?見方によってはストーカー思想も若干入っていそうな気が・・・
「あれ、見てわからない?それ新曲の歌詞だけど」
淡々とマイペースな口調で答えたK君は突然サビの部分を歌いだした。
メロディーに乗せた歌詞を歌いだした瞬間。ぶわり、と産毛が逆立った気がした。うわ、鳥肌がっ!
曲調はロックっぽいのにどことなくバラードにも聞こえて、それをK君の魅惑ボイスで生で(!)歌われて。ほんのちょっとの短い時間だったのに、いっきに引き込まれてしまった。驚きすぎて声も出せない。
「――と、こんな感じ」
歌い終えたK君が普段のクールな真顔に戻る。初めて生で聞いて、隣のMIKAさんは首を傾げてうっとりした眼差しで遠くを見つめちゃってるよ。一体どこで何を見てるんですか、MIKAさん。
そしてようやく声を取り戻した私が告げた感想は、「エロい」の一言だった。
「・・・第一声がそれってどうなの?」
微妙に呆れた眼差しで言われてしまう。いや、まあ・・・ごもっともだけど!でもそれが正直な感想なんだもの!これじゃ女の子が聞いたら、傲慢俺様ストーカー的な内容も脳内変換されて、すっかり夢見る乙女の顔でうっとり身悶えちゃいますよ。目をハートにさせてね!その魅惑ボイスというよりもエロボイス、破壊力強すぎて怖いよ!
「エロいのは俺より麗だと思うけど」
は?
首を傾げて何を言っているのか問えば、視線が僅かに下がった。そしてまた下から上へ見られて、一言「大胆だよねそれ」と付け足した。
って、エロいのはこの衣装のことか!!
「ちょ、ちょっとあんま見ないでよ!ねえ、他に衣装ないの!?これいくらなんでも胸開きすぎじゃない!?この姿を大勢の人に見られるとか、一体何の羞恥プレイなのこれ!拷問なんですけど!」
衣装係の人に訊ねてやる!
そう意気込んでいたのに、あっさりとK君とMIKAさんは「「無理だね(よ)」」と否定した。即答なんてひどい!
「だってその衣装、今回の新曲に出てくる少女をイメージして作られたのよ~?」
MIKAさんが人差し指を立てながらありがたく教えてくれた。
イメージして作られたって事は、これって特注?え、それじゃもっと気を遣うんだけど!汚さないか不安になってきた・・・
「少女って、この歌の主人公?が恋してる相手だっけ。聖なる少女って何それ。人間じゃないの?」
清らかな存在を共にありたいから落としてしまえって、それってちょっと怖いんだけど。何かダークファンタジーっぽい歌だなぁ。
「聖なる少女は一応比喩だけど。でも、タイトルは『堕天使の恋』って事で、今回のPVのテーマは幻想世界だよ」
「え!幻想世界!?」
何だそのちょっと心ときめくテーマは!ファンタジー?ファンタジーなのね!?それは大好物ですよ!
「いきなり食いついたね」とK君が小さく呟いた直後。
「K?そろそろ準備に入った方がいいよ」
ガチャ、と扉が開いたと同時に声が割り込んできた。
「んー、わかった」
表情を変えないままお礼を告げたK君が声の主に向き合う。その端麗な顔つきに長い銀髪の髪、紫の瞳と人間にはありえない先が尖った耳。まるで魔界の森に住まう美麗な容姿の人物は・・・
「あ!AddiCtのQ!?」
「え?そうだけど」
振り向いた人外のような美しい生物は、柔和な微笑みを浮かべて頷いた。
◆ ◆ ◆
何を驚いているんだか、K君がいるんだから他のメンバーにだって会うだろうに。私が見かける芸能人2号が人外生物になっていたため、余計にびっくりしてしまった。美しい、の一言だよ。エルフのような尖った耳も日本人でそこまで銀髪が似合うのも驚きだ。そして間近で見上げたAddiCtのクイーンのQは、藍色のロングジャケットを羽織り、その上にマントを身につけていた。コスプレのような格好なのに様になる。そしてクイーンの名に相応しいくらい、Qはどこか中性的な美貌を持っている。ビジュアル系の人ってみんなきれいな人多いけど、女装も似合いそうだよねこの人・・・。
じっと見つめていたら、QさんはK君のように私を上から下へ視線を移動させて、ポンと手を打った。
「ああ、君がレイラの代役の女の子か」
レイラ?
レイラって聞くと最近若い子に人気の雑誌モデルが思い浮かぶ。確か小柄な子だけど高校生からモデルを始めてて、現在20歳を過ぎたんだっけ。最近タレント業も始めたって聞いた気がする。
「レイラってどのレイラ?」
隣に佇むK君に思わずこっそりと訊ねると、「来栖レイラの事だけど」とあっさりと私が思い描いていた人物の名を告げた。
って、ええー!?
あのレイラがこの衣装を着るはずだったの!?そして、その子がノロにかかって、私が代役・・・・・・
うん。無理だわー。
踵を返して往生際悪くこっそり帰ろうとしたら。あっさり両側から捕獲された。右にK君、左にQさんまで!?ちょっと、ノリ良すぎじゃありませんかね!?
「何帰ろうとしてるの麗。往生際が悪いよ」
「うっ・・・!往生際が悪いのは認めるけど!無理、絶対にムーリー!レイラがやる予定だった役を一般人でただの助っ人ごときの私に務まるはずがない!」
「何言ってるの。もう衣装も着てメイクもばっちりじゃない。ちゃんと似合うんだから自信持てば?」
K君が淡々と宥めると、隣のQさんまでもが便乗してきた。
「そうだね、えーと麗ちゃん、だっけ?良く似合ってるよその衣装。すっごく美人だ」
にこにこ微笑みかけられて悪い気はしないので、とりあえずカツラがずれないように気をつけながらお辞儀をする。
「ああ、ありがとうございます・・・えーと、はじめまして?一ノ瀬 麗です」
そういえば私名前名乗っていなかった。礼儀知らずもいいところだ。タイミングが合わなかったんだけど。今更ながら名前を伝えると、Qさんもよろしくと一言挨拶を交わしてくれた。
「一ノ瀬?古紫じゃなかったっけ。博士の従妹でしょ?」
小首を傾げるK君に、そういえばあの会場で一ノ瀬の名前を使うのはまずかったから、咄嗟に古紫の名前を使ったのを思い出した。って、K君は今の今まで私の本名すら知らなかったのか!・・・まあ、私もKって名前以外知らないけどさ。
「一ノ瀬が本名なんだよ。古紫はお母さんの旧姓。あの時はちょっと一ノ瀬名乗れなくてね、咄嗟に借りただけ」
ふーんそうなんだ、と納得するK君を眺めていた私は、左隣で小さくQさんが私の名前に反応を示した事に気付かなかった。
「あんた達、まだここにいたの?もう呼ばれているわよ~!早く行ってきなさい」
いつの間にか部屋の外にいたらしいMIKAさんが伝言役になって呼びに来た。その声に反応して、私の体は石のように固まる。無理、いきなり主役級は絶対に無理!相手役なんてド素人の私が演じたなんて知られれば、すぐにネットでつるし上げにされるー!!
「大丈夫だって。今の麗は麗じゃないんだから」
またしても私の心を読んだかのようにK君がフォローを入れた。
「そそそ、そうかもしれないけど・・・!エキストラと違ってレイラ役をいきなり引き受けるなんてやっぱり無謀だと思うの!!」
必死の懇願にもK君は聞く耳持たず。代わりに私をじっと見下ろしてきては、いきなり話題を変えた。
「土曜の夜、東条さんが美女をエスコートしていたらしいね?それはそれはお似合いのカップルだったと社長が言ってたよ」
ビク、と肩が震える。
何でそんなことをいきなり話し出すのかわからなくて、じろりと睨み、「で?」と言ってやった。別にお似合いだったとか、もう悔しくはないんだから。
「かなり話題になったらしいね。まあ、その後何故かその美女は主役の男の子に付きっきりになったらしいけど」
当たり前じゃない。だってそっちが芹さんの本命なんだから。東条さんは付き合わされただけなんだし!
「事情があってたまたまエスコートするしかなかったんだよ。別に浮気なんてされていないんだからね?」
ふーん、と呟いたK君は、すっと目を細めてじっと見つめてきた。内心ちょっとびくつく。今度は何を考えているの!
「余裕だね、麗。次いつ第二、第三の高遠 芹が現れるかわからないのに。容姿と自分に自信があって女の武器を使ってくる女がどんどん迫っていくかもね。なんせ東条さんって見た目も財力も魅力的だし」
芹さんの名前を知っている事にも驚きだけど、そんな見た目と財力しか興味のない女と一緒にしないでよ!
「私は東条さんの財力になんて興味ないわよ!そりゃ外見は好みだけど、それだけで好きになったんじゃないし!」
反射的に噛み付くと、K君は「じゃ、もっと夢中にさせたくない?」と提案してきた。
思わずきょとんとした眼差しで見つめてしまう。何、今物凄く魅力的な言葉を聞いた気がするんだけど。
「麗。男はね、いくら彼女との仲がラブラブでもね、浮気はする時はするんだよ。彼女が可愛くて可憐で純情な子でも、刺激を求めて魔が差す時はあるんだ」
え・・・!何だって!?
聞き捨てならない事を聞いた私は、「そんなの冗談じゃない!」と反発した。浮気なんて絶対に許せないし、許したくない。東条さんが浮気する所なんて考えたくもないよ!
「うん。だからね、男は女が時折見せるドキッとする色気やセクシーさに弱い生き物なんだよ。普段は清楚で可憐でも、妖艶な女っぽさを感じると、絶対に離せなくなるね」
「な、何と・・・!」
色気に妖艶さ・・・浮気防止にはセクシーさが重要って事なの!?
「そう。一言で言えば、『エロ可愛い』って最高だよね」
K君が隣にいるQさんに振り向く。苦笑しながらQさんは「そうかもね」と肯定した。
エロ可愛い・・・それに色気。って、うわーん!私どっちも縁がない気がする!!鷹臣君からも『お前色気より食い気ってそろそろどうにかした方がいいんじゃねーか?』って呆れられてばっかりだ!!
まずい、まずいぞ。
彼氏の浮気を防止するためには、自分にもっと魅力をつけないといけないらしい。もっと夢中にさせて他の女性は眼中に入らなくさせれば解決って事だ。つまり、それには色気や妖艶さも必要で。
「今日の役って丁度いい練習になると思うけどねー?」
その一言を聞いて、私のスイッチが入った。
「・・・わかった。やる。完璧に演じてみせてやろうじゃない・・・!!」
この体験から女性として必要な色気か何かが見につくなら。恥を捨てて覚悟を決めて演じてやる。女に二言はないんだから。
「そうだよ、愛されたいなら努力をするって決めたばかりじゃん。東条さんを狙うハイエナに奪われないように、私の魅力度も上げないと・・・」
女は度胸と根性!
覚悟を決めた私を見て、K君はにんまりと微笑んだ。
◆ ◆ ◆
一部始終見ていたヘアメイクアップアーティストのMIKAとクイーンのQ、そして誘導した張本人のKは、いきなりやる気を見せた麗を見つめながら小声で話す。
「ねえ、あの子あんなに騙されやすくて大丈夫かしら?」
「騙されやすいって言うよりも、乗せられやすいんじゃない?」
MIKAの疑問にQが苦笑気味に返す。
ちらりと2人はKを窺ったが、Kは普段どおりのクールな表情で「扱いやすくていいよね」と感想を述べた。
「それにそこが麗のいい所でもあるんじゃない?」
ニヤリ、と微笑んだ彼こそが、やはり今回の主役の堕天使に相応しいのだろうと、Qは嘆息しながら再認識したのだった。
************************************************
恥ずかしい!白夜の変態妄想を書くより詩を書くのが恥ずかしいって何故ですかね?
拙い作詞ですみません・・・あまり考えないでスルーして下さい。
*誤字訂正しました*
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欲しいのなら求めればいい
欲しいのなら奪えばいい
誰の目にも映らないように
茨の檻に閉じ込め、耳元で愛を囁け
狂気に満ちた獣が目を覚ました――
静寂と闇に支配されし真夜中、
月光に照らされた聖なる少女
堕ちた僕はもう、あの場所には帰れない
帰る羽は失った
それならここに落としてしまえ
僕の傍を離れないように純白で無垢な君を
黒く、染めて
欲しいのなら手を伸ばせばいい
欲しいのなら狂えばいい
苦しい夜を乗り越えて愛を歌え
捕らえてしまえと獣が咆哮をあげる
奪いたいと願った僕は逆に君に捕らわれた――
◆ ◆ ◆
「――え~と、『少女の仮面を脱いだ君は色香を放ち僕を惑わす・・・』って、ねえK君。これって何?」
手渡された紙に視線を落として朗読を続けた後、意味が分からず疑問符を浮かべる。何だか危ない片想いのポエムっぽくないか?純白で穢れのない聖女を黒く染めてって、ちょっと妖しい空気が醸し出されていない?見方によってはストーカー思想も若干入っていそうな気が・・・
「あれ、見てわからない?それ新曲の歌詞だけど」
淡々とマイペースな口調で答えたK君は突然サビの部分を歌いだした。
メロディーに乗せた歌詞を歌いだした瞬間。ぶわり、と産毛が逆立った気がした。うわ、鳥肌がっ!
曲調はロックっぽいのにどことなくバラードにも聞こえて、それをK君の魅惑ボイスで生で(!)歌われて。ほんのちょっとの短い時間だったのに、いっきに引き込まれてしまった。驚きすぎて声も出せない。
「――と、こんな感じ」
歌い終えたK君が普段のクールな真顔に戻る。初めて生で聞いて、隣のMIKAさんは首を傾げてうっとりした眼差しで遠くを見つめちゃってるよ。一体どこで何を見てるんですか、MIKAさん。
そしてようやく声を取り戻した私が告げた感想は、「エロい」の一言だった。
「・・・第一声がそれってどうなの?」
微妙に呆れた眼差しで言われてしまう。いや、まあ・・・ごもっともだけど!でもそれが正直な感想なんだもの!これじゃ女の子が聞いたら、傲慢俺様ストーカー的な内容も脳内変換されて、すっかり夢見る乙女の顔でうっとり身悶えちゃいますよ。目をハートにさせてね!その魅惑ボイスというよりもエロボイス、破壊力強すぎて怖いよ!
「エロいのは俺より麗だと思うけど」
は?
首を傾げて何を言っているのか問えば、視線が僅かに下がった。そしてまた下から上へ見られて、一言「大胆だよねそれ」と付け足した。
って、エロいのはこの衣装のことか!!
「ちょ、ちょっとあんま見ないでよ!ねえ、他に衣装ないの!?これいくらなんでも胸開きすぎじゃない!?この姿を大勢の人に見られるとか、一体何の羞恥プレイなのこれ!拷問なんですけど!」
衣装係の人に訊ねてやる!
そう意気込んでいたのに、あっさりとK君とMIKAさんは「「無理だね(よ)」」と否定した。即答なんてひどい!
「だってその衣装、今回の新曲に出てくる少女をイメージして作られたのよ~?」
MIKAさんが人差し指を立てながらありがたく教えてくれた。
イメージして作られたって事は、これって特注?え、それじゃもっと気を遣うんだけど!汚さないか不安になってきた・・・
「少女って、この歌の主人公?が恋してる相手だっけ。聖なる少女って何それ。人間じゃないの?」
清らかな存在を共にありたいから落としてしまえって、それってちょっと怖いんだけど。何かダークファンタジーっぽい歌だなぁ。
「聖なる少女は一応比喩だけど。でも、タイトルは『堕天使の恋』って事で、今回のPVのテーマは幻想世界だよ」
「え!幻想世界!?」
何だそのちょっと心ときめくテーマは!ファンタジー?ファンタジーなのね!?それは大好物ですよ!
「いきなり食いついたね」とK君が小さく呟いた直後。
「K?そろそろ準備に入った方がいいよ」
ガチャ、と扉が開いたと同時に声が割り込んできた。
「んー、わかった」
表情を変えないままお礼を告げたK君が声の主に向き合う。その端麗な顔つきに長い銀髪の髪、紫の瞳と人間にはありえない先が尖った耳。まるで魔界の森に住まう美麗な容姿の人物は・・・
「あ!AddiCtのQ!?」
「え?そうだけど」
振り向いた人外のような美しい生物は、柔和な微笑みを浮かべて頷いた。
◆ ◆ ◆
何を驚いているんだか、K君がいるんだから他のメンバーにだって会うだろうに。私が見かける芸能人2号が人外生物になっていたため、余計にびっくりしてしまった。美しい、の一言だよ。エルフのような尖った耳も日本人でそこまで銀髪が似合うのも驚きだ。そして間近で見上げたAddiCtのクイーンのQは、藍色のロングジャケットを羽織り、その上にマントを身につけていた。コスプレのような格好なのに様になる。そしてクイーンの名に相応しいくらい、Qはどこか中性的な美貌を持っている。ビジュアル系の人ってみんなきれいな人多いけど、女装も似合いそうだよねこの人・・・。
じっと見つめていたら、QさんはK君のように私を上から下へ視線を移動させて、ポンと手を打った。
「ああ、君がレイラの代役の女の子か」
レイラ?
レイラって聞くと最近若い子に人気の雑誌モデルが思い浮かぶ。確か小柄な子だけど高校生からモデルを始めてて、現在20歳を過ぎたんだっけ。最近タレント業も始めたって聞いた気がする。
「レイラってどのレイラ?」
隣に佇むK君に思わずこっそりと訊ねると、「来栖レイラの事だけど」とあっさりと私が思い描いていた人物の名を告げた。
って、ええー!?
あのレイラがこの衣装を着るはずだったの!?そして、その子がノロにかかって、私が代役・・・・・・
うん。無理だわー。
踵を返して往生際悪くこっそり帰ろうとしたら。あっさり両側から捕獲された。右にK君、左にQさんまで!?ちょっと、ノリ良すぎじゃありませんかね!?
「何帰ろうとしてるの麗。往生際が悪いよ」
「うっ・・・!往生際が悪いのは認めるけど!無理、絶対にムーリー!レイラがやる予定だった役を一般人でただの助っ人ごときの私に務まるはずがない!」
「何言ってるの。もう衣装も着てメイクもばっちりじゃない。ちゃんと似合うんだから自信持てば?」
K君が淡々と宥めると、隣のQさんまでもが便乗してきた。
「そうだね、えーと麗ちゃん、だっけ?良く似合ってるよその衣装。すっごく美人だ」
にこにこ微笑みかけられて悪い気はしないので、とりあえずカツラがずれないように気をつけながらお辞儀をする。
「ああ、ありがとうございます・・・えーと、はじめまして?一ノ瀬 麗です」
そういえば私名前名乗っていなかった。礼儀知らずもいいところだ。タイミングが合わなかったんだけど。今更ながら名前を伝えると、Qさんもよろしくと一言挨拶を交わしてくれた。
「一ノ瀬?古紫じゃなかったっけ。博士の従妹でしょ?」
小首を傾げるK君に、そういえばあの会場で一ノ瀬の名前を使うのはまずかったから、咄嗟に古紫の名前を使ったのを思い出した。って、K君は今の今まで私の本名すら知らなかったのか!・・・まあ、私もKって名前以外知らないけどさ。
「一ノ瀬が本名なんだよ。古紫はお母さんの旧姓。あの時はちょっと一ノ瀬名乗れなくてね、咄嗟に借りただけ」
ふーんそうなんだ、と納得するK君を眺めていた私は、左隣で小さくQさんが私の名前に反応を示した事に気付かなかった。
「あんた達、まだここにいたの?もう呼ばれているわよ~!早く行ってきなさい」
いつの間にか部屋の外にいたらしいMIKAさんが伝言役になって呼びに来た。その声に反応して、私の体は石のように固まる。無理、いきなり主役級は絶対に無理!相手役なんてド素人の私が演じたなんて知られれば、すぐにネットでつるし上げにされるー!!
「大丈夫だって。今の麗は麗じゃないんだから」
またしても私の心を読んだかのようにK君がフォローを入れた。
「そそそ、そうかもしれないけど・・・!エキストラと違ってレイラ役をいきなり引き受けるなんてやっぱり無謀だと思うの!!」
必死の懇願にもK君は聞く耳持たず。代わりに私をじっと見下ろしてきては、いきなり話題を変えた。
「土曜の夜、東条さんが美女をエスコートしていたらしいね?それはそれはお似合いのカップルだったと社長が言ってたよ」
ビク、と肩が震える。
何でそんなことをいきなり話し出すのかわからなくて、じろりと睨み、「で?」と言ってやった。別にお似合いだったとか、もう悔しくはないんだから。
「かなり話題になったらしいね。まあ、その後何故かその美女は主役の男の子に付きっきりになったらしいけど」
当たり前じゃない。だってそっちが芹さんの本命なんだから。東条さんは付き合わされただけなんだし!
「事情があってたまたまエスコートするしかなかったんだよ。別に浮気なんてされていないんだからね?」
ふーん、と呟いたK君は、すっと目を細めてじっと見つめてきた。内心ちょっとびくつく。今度は何を考えているの!
「余裕だね、麗。次いつ第二、第三の高遠 芹が現れるかわからないのに。容姿と自分に自信があって女の武器を使ってくる女がどんどん迫っていくかもね。なんせ東条さんって見た目も財力も魅力的だし」
芹さんの名前を知っている事にも驚きだけど、そんな見た目と財力しか興味のない女と一緒にしないでよ!
「私は東条さんの財力になんて興味ないわよ!そりゃ外見は好みだけど、それだけで好きになったんじゃないし!」
反射的に噛み付くと、K君は「じゃ、もっと夢中にさせたくない?」と提案してきた。
思わずきょとんとした眼差しで見つめてしまう。何、今物凄く魅力的な言葉を聞いた気がするんだけど。
「麗。男はね、いくら彼女との仲がラブラブでもね、浮気はする時はするんだよ。彼女が可愛くて可憐で純情な子でも、刺激を求めて魔が差す時はあるんだ」
え・・・!何だって!?
聞き捨てならない事を聞いた私は、「そんなの冗談じゃない!」と反発した。浮気なんて絶対に許せないし、許したくない。東条さんが浮気する所なんて考えたくもないよ!
「うん。だからね、男は女が時折見せるドキッとする色気やセクシーさに弱い生き物なんだよ。普段は清楚で可憐でも、妖艶な女っぽさを感じると、絶対に離せなくなるね」
「な、何と・・・!」
色気に妖艶さ・・・浮気防止にはセクシーさが重要って事なの!?
「そう。一言で言えば、『エロ可愛い』って最高だよね」
K君が隣にいるQさんに振り向く。苦笑しながらQさんは「そうかもね」と肯定した。
エロ可愛い・・・それに色気。って、うわーん!私どっちも縁がない気がする!!鷹臣君からも『お前色気より食い気ってそろそろどうにかした方がいいんじゃねーか?』って呆れられてばっかりだ!!
まずい、まずいぞ。
彼氏の浮気を防止するためには、自分にもっと魅力をつけないといけないらしい。もっと夢中にさせて他の女性は眼中に入らなくさせれば解決って事だ。つまり、それには色気や妖艶さも必要で。
「今日の役って丁度いい練習になると思うけどねー?」
その一言を聞いて、私のスイッチが入った。
「・・・わかった。やる。完璧に演じてみせてやろうじゃない・・・!!」
この体験から女性として必要な色気か何かが見につくなら。恥を捨てて覚悟を決めて演じてやる。女に二言はないんだから。
「そうだよ、愛されたいなら努力をするって決めたばかりじゃん。東条さんを狙うハイエナに奪われないように、私の魅力度も上げないと・・・」
女は度胸と根性!
覚悟を決めた私を見て、K君はにんまりと微笑んだ。
◆ ◆ ◆
一部始終見ていたヘアメイクアップアーティストのMIKAとクイーンのQ、そして誘導した張本人のKは、いきなりやる気を見せた麗を見つめながら小声で話す。
「ねえ、あの子あんなに騙されやすくて大丈夫かしら?」
「騙されやすいって言うよりも、乗せられやすいんじゃない?」
MIKAの疑問にQが苦笑気味に返す。
ちらりと2人はKを窺ったが、Kは普段どおりのクールな表情で「扱いやすくていいよね」と感想を述べた。
「それにそこが麗のいい所でもあるんじゃない?」
ニヤリ、と微笑んだ彼こそが、やはり今回の主役の堕天使に相応しいのだろうと、Qは嘆息しながら再認識したのだった。
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恥ずかしい!白夜の変態妄想を書くより詩を書くのが恥ずかしいって何故ですかね?
拙い作詞ですみません・・・あまり考えないでスルーして下さい。
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