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二部
096 マレウスの書15
しおりを挟む「おおマレウス。三日ぶりじゃな。何か愉快な発見はあったのか?」
マレウスとルーシアが冒険者の店、猫八に戻ると、イヴァンはすっかり猫八の猫達が気に入ったようだ。足元に巨躯の白猫オフィーリアに纏わりつかれ、膝の上にはまだ仔猫――といってもすでに成猫に近い大きさのロザリンドを置いて、もふもふと顎の下を撫でまわしていた。
「……ああ、たっぷりとな」
髭面のドワーフが猫と戯れているのが一番愉快な発見だ。という感想を飲み込んで、マレウスたちもテーブルについた。
「新しい発見は多く、ここでは語り尽くせぬが…… ひとまずこのユルセラの地ですることは決まった」
「ほう?」
「予定通りユルセールの廃城に調査へ向かう」
「ようやく儂の出番のようだな」
ドワーフの目が鋭く光る。しかしその手はふわふわした白い毛並みのロザリンドを撫でまわしているので、あまり締まった感じではない。
「ユルセールの廃城? およしおよし!! あんなところもう冒険者たちが調べつくして、出てくるものっていったらアンデッドとリ=ハンから湧き出た魔神くらいなもんさよ!?」
たまたまマレウスたちの会話を耳にした猫八の女主人が、手と頭を振ってやめときなと叫ぶ。
女主人のいうとおり、いまではユルセールの城は廃墟と化しており、数十年にわたる冒険者たちと盗賊たちの手により、少しでも価値のあるものは軒並み持ち出されている。
今ではユルセールの城はアンデッドの棲家であり、リ=ハンからたまに出てくる魔神が出てくるだけの危険な場所だ。
「魔神が出るのですか? それではこのユルセラも危ないのでは?」
「誰がやったかは知らないけど、城の周りにはぐるっと結界があるって話だよ。バケモノは結界から出られないから、自分から入っていかなきゃ危ないこたないさね――旦那、ずいぶんお疲れの顔だけど何か食べるかい?」
女主人がマレウスのまぶたの下にあるクマに気づいた。
「胃に優しい汁物でももらおうか」
「あいよ。三日も留守にしたと思ったらエルフっ娘と何をしてたんだか」
「わっ! わたくしたちは別にそのような――!!」
ルーシアが顔を真赤にして反論しようとしたが、女主人の豪快な笑い声にかき消された。
「からかわれとるんじゃ。お前さんは」
「そ、そんなのわかってます!!」
マレウスはそのやりとりを眺め、ふふふと笑う。
「いやはや。わたしも歳だな。三日程度の読書でずいぶん身体が疲れているようだ。スープを飲み終えたら今日はおとなしく寝るとしよう」
「ユルセールの廃城は明日からじゃな?」
「うむ。すまないがもろもろの用意はイヴァン、ルーシア。お願いする」
「任せておけ」
「お任せ下さい」
大きなあくびをしてから、出されたトウモロコシのスープにゆっくりと口をつける。
「しかし惜しい。また機会があればユルセラの蔵書塔には一週間ほど篭っていたいものだ……」
「儂が退屈で死んでしまうわ」
書痴マレウスは読み終えた多くの書について頭のなかで反芻しつつ、数日ぶりの温かいスープをおいしそうに啜るのだった。
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