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二部
100 マレウスの書19
しおりを挟む「この広間だろう」
その後も現れるアンデッドや魔物たちを蹴散らし、たどりついたのは空の開けた場所。かつて、ユルセール城の中庭であったところだ。
イヴァンの持つ虹の戦斧は敵の弱点に応じて、刃を変化させることができる。ここまでどんなアンデッドであろうとも、マレウスは一目見るなりその力や習性、弱点などを瞬時に見抜いた。
もっとも効果的な攻撃を行えることが、『追憶』の最大の武器であるといってもいいだろう。
数が多い場合は、ハーフエルフのメイドであるルーシアが精霊魔法を使ってサポートすることもある。さらにルーシア自身も腕に覚えのある軽戦士――実のところは盗賊の技術にも長けている――であり、魔物たちをマレウスにまで肉薄させることなく進んできた。
マレウスといえば、魔物たちの弱点を見抜くことはするが、これまで一度も魔法を使っていない。もちろん『追憶』のマレウスといえば、現役で動いている冒険者の中では屈指の高位魔術師。だが、このたびの捜索においては意図的に魔法の使用を控えているようだった。
「この広間で、かつての金獅子団長、リハール・アト・レヨンイエッタと、後任金獅子団長であるラス・バルムンクが決闘を行った―― わたしが魔術師ギルドの塔で見つけた文献にはそう記されていた」
この広間もほとんどが瓦礫に埋もれていた。しかし、太陽が真上にある正午のわずかな時間、陽の光が入ってくるせいだろう。鳥たちが糞とともに落とすさまざまな植物が芽吹いている。
「この広間を植物たちが完全に覆い尽くしてしまう前で、よかった」
杖をついて広間の中心に移動すると、マレウスはそれまで見せたこともない柔和な表情でいった。
「このようなアンデッドや魔物が徘徊する場所に陽の光があり、植物が繁茂している。数々の遺跡を見てきたが、歴史に埋もれ、生命薄い土地に緑を見るのは嬉しいものだな」
マレウスが中庭の中央に立ち、しっかり杖をついて日差しに目を細める。その姿を認め、ルーシアとイヴァンがマレウスをはさんで両側に移動する。
「ご主人様。こちらには怪しい気配はありません」
「こっちもじゃ、マレウス」
「うむ、始めようか」
瓦礫の上、日差しを浴びながらマレウスはゆっくりと呪文を詠唱する。
「この地に蒔かれた種の数。芽吹いた数。枯れた数。枚挙してただ一枚を綴ろう。歴史の影にひっそりと咲いた大輪あれば、我が魔力は時空を越えて水と光と土と風を与えよう。花盛りの季節のひとときを思い出してごらん。過ぎ去りし三百の年月。振り返ることに臆せず、この過客が覚えているから。《追憶/リコレクション》」
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