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二部
101 マレウスの書20
しおりを挟む『追憶』。
魔術師であり歴史学者であるマレウスを筆頭に、精霊使いのハーフエルフメイド剣士、ルーシア。戦斧を使う神官戦士イヴァンの三人が名乗る、冒険者としての屋号だ。
追憶とは過ぎ去ったことに思いを馳せ、過去を偲ぶこと。
歴史学者として、各地の遺跡や文献を調べる冒険者として、マレウスが名づけたものだ。
いくつもの遺跡を攻略し、文献を解読し、ついにはこの世界に《沸騰/ボイル》という失われていた魔法を見出した、当代では屈指の冒険者が『追憶』だ。
かくして追憶という名前は冒険者業界に知れ渡り、本人たちもその名を過去を追うものとしての自嘲を含めて名乗っていた。
そして、周囲もそのように受け取っていた。
だが、実際にはこの名前には堂々と隠された意味があった。
マレウスが遺跡から発見した魔法は《沸騰/ボイル》だけではなかった。
「こちらの魔法は一般に知られるべき魔法だろう……しかし、この魔法は軽々に伝えるべき魔法ではない。いずれわたしが自らの後継者たる者と信じるに値する者が現れたとき、受け継ぐことにする」
マレウスのこの言葉は、仲間であるふたり以外は知ることがない。
そして、このふたりもまたマレウスと同じ意見であった。
第七位階魔術語魔法《追憶/リコレクション》。
これは儀式魔法であり、発動までに少なくとも数分の時間を要する。戦闘時や、能動的な行動の最中には使うことができない。
効果は“その場で起こった強い感情の記憶を、視覚のみ追体験できる”。
当然、この世ができてからすべての過去を見通すようなことはできない。発動するためには、十年単位でおおまかな時間の指定が必要だ。
しかも、効果範囲は術者を中心に十メートルほど。年代が古ければ古いほど消費する精神力が増し、一度使用した場所には二度と呪文をかけ直すことができない。
いわばこれは、他人のプライバシーを暴く魔法だ。
それゆえにマレウスはこの魔法を秘匿することを決意した。
魔法の名前をパーティ名にするあたりは、マレウス一流の諧謔といっていいだろう。
かつてこの地で起こったとされる、金獅子団長の位をかけて行われた決闘はおおよそ三百年前。
これは、現段階でマレウス個人が遡ることができるぎりぎりの年月だ。
マレウスが《追憶/リコレクション》を発動する。
三百年前この地で行われた、もっとも強烈な感情を求めて魔力が中庭に迸った。
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