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本編
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私はポカンと口を開けると言う公爵令嬢にあるまじき醜態を晒して目の前で繰り広げられている茶番を唖然と見ていた。
貴族の子弟や優秀な平民が通う学院の開校記念日パーティー。
そこで行われているのは第一王子殿下による婚約破棄だ。
最近、異国の小説で流行っているらしいが、我が国はその異国とは違って貴族制の国家だ。
当然婚約とは家同士の契約であったり、派閥の力関係が有ったりと複雑な物だ。
その辺は小説では描かれていない。
ヒーローが悪役を断罪してヒロインと結ばれてハッピーエンドだ。
その後の関係者の実家の顛末や、民や他国からの評価などは考慮されない。
何故ならそれは貴族制では無い国で想像から生まれた娯楽小説だからだ。
このタングレント王国は、まだ自由で有り、他国のそう言った小説も輸入して読む事が出来るが、別の貴族制の国では不敬であると言う理由で禁書として閲覧が禁止されている国もあるくらいだ。
さて、そんな娯楽小説に影響されてしまった可哀想な人が、我が国の第一王子、ダミアン・フォン・タングレント殿下である。
右腕にはピンクの髪(小説の定番だ、染めたのだろうか?)で胸を強調する下品なドレスを着た(これも小説の定番、笑える)アニエス男爵令嬢が巻きついており、その周囲をダミアンの取り巻きである騎士団長の次男や宰相の甥、公爵家の嫡男がアニエス嬢を守る様に立っている。
周囲の生徒達は突然始まった茶番を興味深々で見守っていた。
ダミアン達は自分達が物語の主人公になったかの様に気分良さげに婚約者の悪事(証拠無し)を糾弾しているが、生徒達に好奇と共に軽蔑が加わった冷ややかな目を向けられている事に気付いてはいない。
私だって皆んなと同じ立場なら愚か者を見物したい。
「聞いているのか!エリシア・フォン・ラインバード!」
何故フルネームで呼ぶ?
溜息を飲み込んだ私、ラインバード公爵家の長女エリシア・フォン・ラインバードこそ、このおバカな第一王子の婚約者であり、婚約破棄の当事者なのだ。
「聞いておりますわ、ダミアン殿下。
しかし、私達の婚約は王家と公爵家によって決められた物、殿下の一存で破棄する事は叶いませんわ」
「ふん、父王の許可なら此処にある」
ダミアンが取り出した書類を受け取った私は、そこに書かれていた国王陛下のサインを確認した。
「これは……」
「分かっただろう?貴様はもう俺の婚約者では無い!」
このサインは偽物ね。
国王陛下は王妃殿下や宰相閣下と共に国際会議の為に隣国へ行っている。
その国王陛下のサインがダミアンの手にある筈がない。
まぁ、良いか。
「なるほど、確かに拝見致しました」
私は書状をダミアンに返して臣下の礼を取った。
「婚約破棄の件は了承致しました」
「それとアニエスに膝をついて謝罪せよ」
「はい?」
何を言っているのか。
「殿下、何故私がそこのアニエス男爵令嬢に謝罪しなければならないのでしょうか?」
私が首を傾げて尋ねると、ダミアン達はいきり立って声を上げた。
「何だと!」
「私が謝る必要など一切有りませんわ」
怒りで言葉が出ないダミアンに代わり、騎士団長の次男が私を糾弾する。
「貴様がアニエス嬢を虐げた事を棚に上げ、よくもそんな事を言えた物だ」
おっと、騎士団長の次男くん。
確かロナルドくんだったかな。
君、伯爵家の次男だよね?
良いのかな、私は公爵令嬢だよ?
「ロナルド様、私はダミアン殿下とお話ししているのです。口を挟まないで下さいませ」
「なっ⁉︎」
顔を真っ赤にしたロナルドを無視してダミアンに話掛ける。
「それで殿下。何故私がアニエス男爵令嬢に謝る必要が有るのでしょうか?」
「貴様がアニエスを虐げたからだ!」
「虐げた?具体的には?」
「アニエスに嫉妬した貴様は『無闇に王子に近づくな』などと暴言を吐き、私物を破壊し、取り巻きを使って陰湿な虐めを行なっていただろう!」
何を言い出すかと思えば……。
「何を言い出すかと思えば……」
おっと、心の声が漏れてしまった。
「私に心当たりがあるのは殿下に近づかない様に忠告したくらいですね。
当然でありましょう。
不用意に殿下に近づき無礼な振る舞いをする下位貴族の令嬢を排除するのは婚約者として当然の行いです。
これは殿下にも再三ご忠告申し上げた筈です。
アニエス男爵令嬢の私物の破損や虐めに関しては私は存じ上げませんわ」
「ふん、白々しい!」
吐き捨てる様に言うダミアンに冷たい視線を向けながら、私は淑女の礼をして背を向ける。
「待て、エリシア!逃げるつもりか!」
その言葉に足を止めた私は半顔で振り返る。
「私はもうダミアン第一王子殿下の婚約者では有りません。今後はラインバード公爵令嬢とお呼び下さるようお願い申し上げます」
「っ⁉︎」
その後は呼び止める殿下を無視してパーティー会場を出て行くのだった。
あの断罪劇から数日後、今日からまた学院が始まる。
ダミアンとは学年が違うのでそうそう会う事はないだろう。
周囲の生徒達からは好奇の目を向けられたり、同情されたりと面倒だけれどその内皆飽きるだろう。
友人であるロザリア・フォン・フェルト侯爵令嬢はいつも通りの態度で接してくれて、纏わりつく面倒な者達を追い払ってくれるお陰で、放課後には普段の空気へと戻っていた。
婚約者と帰るロザリアと別れ、私も屋敷に帰ろうと荷物を纏めて席を立つと、教室の扉が勢い良く開かれた。
貴族や優秀な平民ばかりのこの学院で、そんな乱暴な扉の開け方をする者が居るとは驚きだ。
私や残り少なくなったクラスメイト達が視線を向けると、そこに居た人達を見て眉を顰めた。
ダミアン一味がぞろぞろと下級生の教室にやって来たのだ。
「エリシア!何故生徒会室に来ない!」
「ラインバード公爵令嬢とお呼び下さい。ダミアン第一王子殿下」
「うるさい!」
うるさいのは貴方の方でしょう。
「うるさいのは貴方の方でしょう」
「何だと⁉︎」
おっと、また心の声が口から漏れてしまった。
「それで、何のご用でしょうか?」
更に喚き散らそうとするダミアン達を先を制して用件を尋ねた。
「っ⁉︎昼休みの事だ!何故生徒会室に来ない⁉︎」
「何故生徒会では無い私が生徒会室に行かなければ行けないのでしょうか?」
「お前は今まで生徒会の仕事を補佐していただろう!」
「それは私がダミアン第一王子殿下の婚約者だったからです。
もう私はダミアン第一王子殿下の婚約者では有りませんのでお手伝いする義理は有りません」
「ラインバード公爵令嬢、貴女には責任感と言うものが無いのですか?」
嫌味な言い回しで言うのは宰相の甥のサイモンだ。
私に仕事を押し付けて遊び歩いていた癖に良く恥ずかしげもく責任感などと言う言葉を口に出せた物だ。
「その責任は私が負うものでは有りませんわ。サイモン副会長」
「兎に角、生徒会室に来い!」
「お断り致します。馬車を待たせているので私はこれで……」
「良いから来い!王族命令だ!」
その言葉に残っていたクラスメイト達が騒ついた。
ダミアンはその言葉がどう言う意味を持っているのか理解しているのだろうか。
王族としての命令など、無闇矢鱈に使って良い物ではない。
国王陛下ですら王命など滅多な事では使わないと言うのに、ダミアンは私を生徒会室に連れて行く為だけに王族としての地位を出して命令したのだ。
この話はクラスメイト達を通じて彼らの親に、そして社交界に伝わって行く筈だ。
その辺りを全く理解していないのだろうな。
「御意」
私は敢えて大仰に臣下の礼を取りダミアン達に着いて行く事にした。
従順に従う私を見て満足げに傲慢な笑みを浮かべるダミアン達は現状を理解してないのだろうな。
場所を生徒会室に移すと、ダミアンは苛立たしげに書類が山積みになった机を指差した。
「見ろ、貴様がサボっていた所為で仕事が山積みだ」
「そうですか。大変ですね」
私が肩をすくめて言うと、ダミアンは舌打ちし、懐から書状を取り出して、ニヤつきながら私の目の前に広げて見せた。
「コレが何か分かっているだろう?」
「なっ⁉︎」
コレには驚いた。本当に驚いた。
ダミアンが持っていたのは黒い羽のデザインで縁取られた書状だ。
その書状には一切の文章が記されておらず、私の名前だけが書かれている。
ロナルドやサイモン、アニエスを見るが皆、ダミアンと同じ様に下品な笑みを浮かべている。
皆、この書状が何か知っていると言う事か。
あの黒い羽で縁取られた書状は命令書だ。
《クロウ》と呼ばれる国王陛下直属の組織、そこに命令を出す為の専用の書状である。
国王陛下でもこの書状を用意しなければ《クロウ》に命令する事は出来ない。
そして《クロウ》の仕事は1つ、タングレント王国に仇なす者達を密かに始末する……つまり暗殺組織だ。
簡単には裁けない権力者や、他国との関係で政治的に手が出せない者を排除する者達。
勿論、表向きそんな組織は存在せず、《クロウ》の事を知っているのは王位を継承する直系王族とその婚約者、歴代の宰相くらいだ。
ダミアンもつい一月程前に私と共に国王陛下より直々に受けた王族教育で始めて知った程の国家機密である。
まさかそんな物を持ち歩き、誰の耳目が有るかも分からないこんな場所で取り出すとは思わなかったのだ。
「コイツを使われたくなければさっさと働くが良い」
「…………それは国王陛下にしか使えませんわ」
「俺が国王に成れば直ぐにでも使ってやる」
「…………分かりました」
私は席に座ると溜まった書類を処理し始めた。
それを満足気に見てダミアンは一味を引き連れ、「今日中に終わらせておけ」と命じて生徒会室を出て行った。
その日から私は毎日生徒会の仕事を1人でこなして行った。
◇◆☆◆◇
その日、王城の敷地内にある俺の宮の一室でアニエスの肩を抱き、友人達と酒を飲んでいた。
この場に居るのは5人、この俺、ダミアンと愛しのアニエス。配下であり友人のロナルド、サイモン。そして公爵家の嫡男レオンだ。
「しかし、エリシア相変わらず生意気だな」
「全くです。殿下に命じられずとも自分から仕事を終わらせるくらいの気遣いも出来ない女ですからね」
「ああ。だが今日、父王陛下がお戻りになられる。
あの女は父王陛下や王妃殿下に取り入るのは上手いからな。
明日、奴の悪辣さをお伝えして置かなければならないな」
それから俺は、エリシアの気に入らない所を次々と挙げつらい、それを肯定する仲間達と愚痴を言い合った。
しばらくすると、俺の部屋がノックされた。
「何だ!」
気分良く話していた俺は、邪魔された事に苛つきながら問うが、返事は無い。
この俺が問うているのに返事もしないとは、不敬な奴だ。
俺がロナルドに視線を向けると、彼は直ぐ様立ち上がり、その大きな体でのっしのっしと扉に近づくと何度か外に声を掛け、返事が無いと、そっと扉を開けた。
「ん?何で貴様が……」
何かを言い掛けた所でロナルドの巨体が宙を舞った。
俺達の目の前の机に叩きつけられたロナルドは、机の上の酒やツマミを撒き散らせながら止まる。
驚き扉の方を見ると何年も見慣れたエリシアが見慣れないドレスで立っていた。
「今晩は。お邪魔致しますわ、ダミアン第一王子殿下」
優雅に淑女の礼をするエリシアは、普段は着ない様な真っ黒のドレスを身に纏い、髪には黒い羽飾りを付けている。
「どう言うつもりだ!不敬だぞ!」
エリシアは俺の叱責を無視して懐から書状を取り出した。
その書状は黒い羽のデザインで縁取られ、俺の名前だけが書かれている。
そして端には国王だけが持つ王印が押されている。
「ダミアン第一王子殿下、国王陛下は貴方を処分する事に決めました。
既に貴方の王族としての権限は剥奪されております。
無駄な抵抗はせず、私の指示に従いなさい」
俺は言葉が出せず口をパクパクとさせる。
父上が俺を処分する?
エリシアは何を言っているんだ?
俺はこの国の第一王子だぞ?
「てぇめぇ!!!」
呆然とする俺は直ぐ近くから上がった雄叫びに意識を戻した。
ロナルドが拳を振り上げエリシアに殴り掛かっている。
エリシアを殴り飛ばしたと思った。
だがエリシアの手が振り下ろされたロナルドの拳にそっと添えられたかと思うと、ロナルドの巨体をエリシアは片手でクルリと投げ飛ばして背中から大理石の床に叩きつけた。
エリシアは痛みにのたうち回るロナルドには目も向けず、懐から他の書状も取り出して見せた。
どれも同じ黒い羽のデザイン。
それが4枚。
そこに書かれた名前は『ロナルド・フォン・ユーフォリア』『サイモン・フォン・アンドレア』『レオン・フォン・マーカレン』そして『アニエス・フォン・ナッシュ』。
「な、何で……」
俺が思わず呟くと、エリシアは溜息を吐いた後答えた。
「彼らは国家機密を、我々《クロウ》の存在を知ってしまったのです。
情報の漏洩を防ぐ為に処分するのは当然ですわ」
「エリシアが……《クロウ》?」
「ああ、殿下が《クロウ》について漏らされたこの場に居ないクラスメイト2名に関しては既に処分されておりますわ。
それぞれ病死と事故死として処理されております」
エリシアのその言葉にアニエスが『ひっ!』と悲鳴を上げる。
「お、俺達を殺すと言うのか?」
「はい。全ては国王陛下の決定です」
サイモンもレオンも父上の名を出された青くなり震え出す。
「お分かりいただけたのなら大人しく御同行をお願い致します」
「同行だと?」
「はい。流石にこの人数を一斉に殺すと騒ぎになりますので、皆様には王都の外れにある崖で馬車ごと転落して頂きます。
皆様の死は、明日からの連休を観光地で過ごす為に出かけた際の事故とする予定です」
淡々と俺達の死について説明するエリシアに、俺は不気味な恐怖を感じた。
指先や足先が氷の様に冷たくなり、左腕に絡まる様に捕まっていたアニエスは腰が抜けた様に脱力し失禁していた。
「だ、だ、誰か!!誰が来い!!」
俺は叫ぶがその声に反応する者は居ない。
クスクスと笑ったエリシアが告げる。
「誰も来ませんわ。今この宮には貴方達しかおりませんし、宮の周囲にも人払いがされております。
皆様が旅行に行ったと証言する者も用意されておりますのでご安心を」
エリシアはそう言うと丁寧に一礼し、命令する。
「連れて行きなさい」
するとエリシアと同じく全身を黒い衣装で揃え、顔を仮面で隠した者達が部屋に雪崩混んで来て俺達を拘束した。
王族の命令だと言って辞めさせようとしたが、誰も従わなかった。
外に用意されていた馬車に詰め込まれた俺達は、不自然な程に人気の無い王城の中を走り、俺も知らない出入り口から王都の外に出た。
そして数時間後、切り立った崖の中程で馬車は止まった。
そこで俺達だけを残してエリシアや黒ずくめの部下達は馬車を降りた。
俺達も逃げ出したかったが、外では別の馬車でついて来ていた何人もの《クロウ》のメンバーが剣を構えていて出れない。
俺は扉越しにエリシアに命乞いをするが、あの女は一切取り合わなかった。
エリシアは馬車の屋根の物置から大きな袋を取り出す。
その袋から出て来た物に俺達は震え上がった。
上等な服を着せられた男だ。
「な、何だそいつは……」
「御者役の男ですわ。先日捕らえられた盗賊ですが、ちゃんと身なりを整え、王族の馬車の御者が出来るだけの身分を用意して有ります」
エリシアは男を拘束していた縄を解くと命乞いをしようと口を開きかけた男を容赦無く崖から突き落とした。
崖の下へと消えて行く男の悲鳴を聞き、俺達は皆、自分の死を実感し、アニエスとサイモンは嘔吐する。
「落としなさい」
容赦なく告げられたエリシアの声。
次の瞬間には馬車が崖を転げ落ち、俺達を激しい衝撃が襲った。
全身の痛みで意識を取り戻した俺は周囲を見回した。
両足は力が入らず、痛みしか感じない。
見れば左腕は肘から先がちぎれ飛んでいた。
「うぅ……た、助け……」
先ず見つけたのはサイモン。
しかし、サイモンは両手両足が不自然な方向へ曲がっており、何より首が90度折れ曲がっている。
その目に生気は無い。
「あ、が……おえぇ!!」
凄惨なその姿に胃の中の物を全て吐き出した俺は視線を別の方へと向ける。
そこには砕けた馬車の破片で串刺しになったロナルドが居た。
大量に流れ出した血で真っ赤に染まっている。
「あ、あ、あぁぁあ!!!」
「あら、まだ息が有りましたか。しぶといですわね」
「ひっ!」
俺の前に再びあの女が現れる。
「ま、待って、待ってください!た、助けて!謝る!謝るから!婚約破棄は撤回する!
だから……」
「今更何を言っているのですか?
あと、貴方と再び婚約するなんて死んでもお断りですわ」
地面に這いつくばり涙を流して命乞いする俺を、虫けらでも見る様に見下すエリシア。
そこにエリシアの部下が声を掛けた。
「エリシア様、ロナルドとサイモン、レオンの3名の死を確認致しました」
「アニエスは?」
「まだ息が有ります」
「そう、では予定通り獣に食い散らかされた様に偽装して殺して」
「はっ!」
エリシアは恐ろしい事を何でもない事の様に命令した。
「ぁぁあ!!!いや!いやぁぁあ!!痛い!止め、や……ぎぁぁあ!!」
男が消えた方、馬車の残骸で俺からは見えなかった場所からアニエスの悲鳴が聞こえ、やがてその声は弱々しくなり消えて行った。
「あ、あ、あ」
全身を震わせて言葉にならない言葉を口にする俺を見下ろし、エリシアは美しく微笑んだ。
「ご安心ください、殿下。
殿下も直ぐに愛するアニエス男爵令嬢の所へお連れしますわ」
そう言うエリシアの手には獣の牙を模したのだろう、斬れ味の鈍そうなギザギザした大振りなナイフが握られていた。
◇◆☆◆◇
私が学園のカフェテリアでお茶を飲んでいた時、空いていた正面の席に友人のロザリアが座った。
「エリシア様、聞きまして?」
「どうされたのですか?ロザリア様」
「ほら、例のダミアン殿下の呪いのお話ですわ」
「ああ、詳しくは聞いていませんわね」
「もう噂ですわよ。
ダミアン殿下がエリシア様に非道な行いをしたから事故にあったと。
何でも遺体は獣に食い荒らされて酷い状態だったとか。
更に同日、ダミアン殿下と親しかったクラスメイト2名も急病や事故で亡くなったとか」
「ふふ、呪いなんてあるわけないわよ」
私は恐ろしがるロザリアに笑って言った。
貴族の子弟や優秀な平民が通う学院の開校記念日パーティー。
そこで行われているのは第一王子殿下による婚約破棄だ。
最近、異国の小説で流行っているらしいが、我が国はその異国とは違って貴族制の国家だ。
当然婚約とは家同士の契約であったり、派閥の力関係が有ったりと複雑な物だ。
その辺は小説では描かれていない。
ヒーローが悪役を断罪してヒロインと結ばれてハッピーエンドだ。
その後の関係者の実家の顛末や、民や他国からの評価などは考慮されない。
何故ならそれは貴族制では無い国で想像から生まれた娯楽小説だからだ。
このタングレント王国は、まだ自由で有り、他国のそう言った小説も輸入して読む事が出来るが、別の貴族制の国では不敬であると言う理由で禁書として閲覧が禁止されている国もあるくらいだ。
さて、そんな娯楽小説に影響されてしまった可哀想な人が、我が国の第一王子、ダミアン・フォン・タングレント殿下である。
右腕にはピンクの髪(小説の定番だ、染めたのだろうか?)で胸を強調する下品なドレスを着た(これも小説の定番、笑える)アニエス男爵令嬢が巻きついており、その周囲をダミアンの取り巻きである騎士団長の次男や宰相の甥、公爵家の嫡男がアニエス嬢を守る様に立っている。
周囲の生徒達は突然始まった茶番を興味深々で見守っていた。
ダミアン達は自分達が物語の主人公になったかの様に気分良さげに婚約者の悪事(証拠無し)を糾弾しているが、生徒達に好奇と共に軽蔑が加わった冷ややかな目を向けられている事に気付いてはいない。
私だって皆んなと同じ立場なら愚か者を見物したい。
「聞いているのか!エリシア・フォン・ラインバード!」
何故フルネームで呼ぶ?
溜息を飲み込んだ私、ラインバード公爵家の長女エリシア・フォン・ラインバードこそ、このおバカな第一王子の婚約者であり、婚約破棄の当事者なのだ。
「聞いておりますわ、ダミアン殿下。
しかし、私達の婚約は王家と公爵家によって決められた物、殿下の一存で破棄する事は叶いませんわ」
「ふん、父王の許可なら此処にある」
ダミアンが取り出した書類を受け取った私は、そこに書かれていた国王陛下のサインを確認した。
「これは……」
「分かっただろう?貴様はもう俺の婚約者では無い!」
このサインは偽物ね。
国王陛下は王妃殿下や宰相閣下と共に国際会議の為に隣国へ行っている。
その国王陛下のサインがダミアンの手にある筈がない。
まぁ、良いか。
「なるほど、確かに拝見致しました」
私は書状をダミアンに返して臣下の礼を取った。
「婚約破棄の件は了承致しました」
「それとアニエスに膝をついて謝罪せよ」
「はい?」
何を言っているのか。
「殿下、何故私がそこのアニエス男爵令嬢に謝罪しなければならないのでしょうか?」
私が首を傾げて尋ねると、ダミアン達はいきり立って声を上げた。
「何だと!」
「私が謝る必要など一切有りませんわ」
怒りで言葉が出ないダミアンに代わり、騎士団長の次男が私を糾弾する。
「貴様がアニエス嬢を虐げた事を棚に上げ、よくもそんな事を言えた物だ」
おっと、騎士団長の次男くん。
確かロナルドくんだったかな。
君、伯爵家の次男だよね?
良いのかな、私は公爵令嬢だよ?
「ロナルド様、私はダミアン殿下とお話ししているのです。口を挟まないで下さいませ」
「なっ⁉︎」
顔を真っ赤にしたロナルドを無視してダミアンに話掛ける。
「それで殿下。何故私がアニエス男爵令嬢に謝る必要が有るのでしょうか?」
「貴様がアニエスを虐げたからだ!」
「虐げた?具体的には?」
「アニエスに嫉妬した貴様は『無闇に王子に近づくな』などと暴言を吐き、私物を破壊し、取り巻きを使って陰湿な虐めを行なっていただろう!」
何を言い出すかと思えば……。
「何を言い出すかと思えば……」
おっと、心の声が漏れてしまった。
「私に心当たりがあるのは殿下に近づかない様に忠告したくらいですね。
当然でありましょう。
不用意に殿下に近づき無礼な振る舞いをする下位貴族の令嬢を排除するのは婚約者として当然の行いです。
これは殿下にも再三ご忠告申し上げた筈です。
アニエス男爵令嬢の私物の破損や虐めに関しては私は存じ上げませんわ」
「ふん、白々しい!」
吐き捨てる様に言うダミアンに冷たい視線を向けながら、私は淑女の礼をして背を向ける。
「待て、エリシア!逃げるつもりか!」
その言葉に足を止めた私は半顔で振り返る。
「私はもうダミアン第一王子殿下の婚約者では有りません。今後はラインバード公爵令嬢とお呼び下さるようお願い申し上げます」
「っ⁉︎」
その後は呼び止める殿下を無視してパーティー会場を出て行くのだった。
あの断罪劇から数日後、今日からまた学院が始まる。
ダミアンとは学年が違うのでそうそう会う事はないだろう。
周囲の生徒達からは好奇の目を向けられたり、同情されたりと面倒だけれどその内皆飽きるだろう。
友人であるロザリア・フォン・フェルト侯爵令嬢はいつも通りの態度で接してくれて、纏わりつく面倒な者達を追い払ってくれるお陰で、放課後には普段の空気へと戻っていた。
婚約者と帰るロザリアと別れ、私も屋敷に帰ろうと荷物を纏めて席を立つと、教室の扉が勢い良く開かれた。
貴族や優秀な平民ばかりのこの学院で、そんな乱暴な扉の開け方をする者が居るとは驚きだ。
私や残り少なくなったクラスメイト達が視線を向けると、そこに居た人達を見て眉を顰めた。
ダミアン一味がぞろぞろと下級生の教室にやって来たのだ。
「エリシア!何故生徒会室に来ない!」
「ラインバード公爵令嬢とお呼び下さい。ダミアン第一王子殿下」
「うるさい!」
うるさいのは貴方の方でしょう。
「うるさいのは貴方の方でしょう」
「何だと⁉︎」
おっと、また心の声が口から漏れてしまった。
「それで、何のご用でしょうか?」
更に喚き散らそうとするダミアン達を先を制して用件を尋ねた。
「っ⁉︎昼休みの事だ!何故生徒会室に来ない⁉︎」
「何故生徒会では無い私が生徒会室に行かなければ行けないのでしょうか?」
「お前は今まで生徒会の仕事を補佐していただろう!」
「それは私がダミアン第一王子殿下の婚約者だったからです。
もう私はダミアン第一王子殿下の婚約者では有りませんのでお手伝いする義理は有りません」
「ラインバード公爵令嬢、貴女には責任感と言うものが無いのですか?」
嫌味な言い回しで言うのは宰相の甥のサイモンだ。
私に仕事を押し付けて遊び歩いていた癖に良く恥ずかしげもく責任感などと言う言葉を口に出せた物だ。
「その責任は私が負うものでは有りませんわ。サイモン副会長」
「兎に角、生徒会室に来い!」
「お断り致します。馬車を待たせているので私はこれで……」
「良いから来い!王族命令だ!」
その言葉に残っていたクラスメイト達が騒ついた。
ダミアンはその言葉がどう言う意味を持っているのか理解しているのだろうか。
王族としての命令など、無闇矢鱈に使って良い物ではない。
国王陛下ですら王命など滅多な事では使わないと言うのに、ダミアンは私を生徒会室に連れて行く為だけに王族としての地位を出して命令したのだ。
この話はクラスメイト達を通じて彼らの親に、そして社交界に伝わって行く筈だ。
その辺りを全く理解していないのだろうな。
「御意」
私は敢えて大仰に臣下の礼を取りダミアン達に着いて行く事にした。
従順に従う私を見て満足げに傲慢な笑みを浮かべるダミアン達は現状を理解してないのだろうな。
場所を生徒会室に移すと、ダミアンは苛立たしげに書類が山積みになった机を指差した。
「見ろ、貴様がサボっていた所為で仕事が山積みだ」
「そうですか。大変ですね」
私が肩をすくめて言うと、ダミアンは舌打ちし、懐から書状を取り出して、ニヤつきながら私の目の前に広げて見せた。
「コレが何か分かっているだろう?」
「なっ⁉︎」
コレには驚いた。本当に驚いた。
ダミアンが持っていたのは黒い羽のデザインで縁取られた書状だ。
その書状には一切の文章が記されておらず、私の名前だけが書かれている。
ロナルドやサイモン、アニエスを見るが皆、ダミアンと同じ様に下品な笑みを浮かべている。
皆、この書状が何か知っていると言う事か。
あの黒い羽で縁取られた書状は命令書だ。
《クロウ》と呼ばれる国王陛下直属の組織、そこに命令を出す為の専用の書状である。
国王陛下でもこの書状を用意しなければ《クロウ》に命令する事は出来ない。
そして《クロウ》の仕事は1つ、タングレント王国に仇なす者達を密かに始末する……つまり暗殺組織だ。
簡単には裁けない権力者や、他国との関係で政治的に手が出せない者を排除する者達。
勿論、表向きそんな組織は存在せず、《クロウ》の事を知っているのは王位を継承する直系王族とその婚約者、歴代の宰相くらいだ。
ダミアンもつい一月程前に私と共に国王陛下より直々に受けた王族教育で始めて知った程の国家機密である。
まさかそんな物を持ち歩き、誰の耳目が有るかも分からないこんな場所で取り出すとは思わなかったのだ。
「コイツを使われたくなければさっさと働くが良い」
「…………それは国王陛下にしか使えませんわ」
「俺が国王に成れば直ぐにでも使ってやる」
「…………分かりました」
私は席に座ると溜まった書類を処理し始めた。
それを満足気に見てダミアンは一味を引き連れ、「今日中に終わらせておけ」と命じて生徒会室を出て行った。
その日から私は毎日生徒会の仕事を1人でこなして行った。
◇◆☆◆◇
その日、王城の敷地内にある俺の宮の一室でアニエスの肩を抱き、友人達と酒を飲んでいた。
この場に居るのは5人、この俺、ダミアンと愛しのアニエス。配下であり友人のロナルド、サイモン。そして公爵家の嫡男レオンだ。
「しかし、エリシア相変わらず生意気だな」
「全くです。殿下に命じられずとも自分から仕事を終わらせるくらいの気遣いも出来ない女ですからね」
「ああ。だが今日、父王陛下がお戻りになられる。
あの女は父王陛下や王妃殿下に取り入るのは上手いからな。
明日、奴の悪辣さをお伝えして置かなければならないな」
それから俺は、エリシアの気に入らない所を次々と挙げつらい、それを肯定する仲間達と愚痴を言い合った。
しばらくすると、俺の部屋がノックされた。
「何だ!」
気分良く話していた俺は、邪魔された事に苛つきながら問うが、返事は無い。
この俺が問うているのに返事もしないとは、不敬な奴だ。
俺がロナルドに視線を向けると、彼は直ぐ様立ち上がり、その大きな体でのっしのっしと扉に近づくと何度か外に声を掛け、返事が無いと、そっと扉を開けた。
「ん?何で貴様が……」
何かを言い掛けた所でロナルドの巨体が宙を舞った。
俺達の目の前の机に叩きつけられたロナルドは、机の上の酒やツマミを撒き散らせながら止まる。
驚き扉の方を見ると何年も見慣れたエリシアが見慣れないドレスで立っていた。
「今晩は。お邪魔致しますわ、ダミアン第一王子殿下」
優雅に淑女の礼をするエリシアは、普段は着ない様な真っ黒のドレスを身に纏い、髪には黒い羽飾りを付けている。
「どう言うつもりだ!不敬だぞ!」
エリシアは俺の叱責を無視して懐から書状を取り出した。
その書状は黒い羽のデザインで縁取られ、俺の名前だけが書かれている。
そして端には国王だけが持つ王印が押されている。
「ダミアン第一王子殿下、国王陛下は貴方を処分する事に決めました。
既に貴方の王族としての権限は剥奪されております。
無駄な抵抗はせず、私の指示に従いなさい」
俺は言葉が出せず口をパクパクとさせる。
父上が俺を処分する?
エリシアは何を言っているんだ?
俺はこの国の第一王子だぞ?
「てぇめぇ!!!」
呆然とする俺は直ぐ近くから上がった雄叫びに意識を戻した。
ロナルドが拳を振り上げエリシアに殴り掛かっている。
エリシアを殴り飛ばしたと思った。
だがエリシアの手が振り下ろされたロナルドの拳にそっと添えられたかと思うと、ロナルドの巨体をエリシアは片手でクルリと投げ飛ばして背中から大理石の床に叩きつけた。
エリシアは痛みにのたうち回るロナルドには目も向けず、懐から他の書状も取り出して見せた。
どれも同じ黒い羽のデザイン。
それが4枚。
そこに書かれた名前は『ロナルド・フォン・ユーフォリア』『サイモン・フォン・アンドレア』『レオン・フォン・マーカレン』そして『アニエス・フォン・ナッシュ』。
「な、何で……」
俺が思わず呟くと、エリシアは溜息を吐いた後答えた。
「彼らは国家機密を、我々《クロウ》の存在を知ってしまったのです。
情報の漏洩を防ぐ為に処分するのは当然ですわ」
「エリシアが……《クロウ》?」
「ああ、殿下が《クロウ》について漏らされたこの場に居ないクラスメイト2名に関しては既に処分されておりますわ。
それぞれ病死と事故死として処理されております」
エリシアのその言葉にアニエスが『ひっ!』と悲鳴を上げる。
「お、俺達を殺すと言うのか?」
「はい。全ては国王陛下の決定です」
サイモンもレオンも父上の名を出された青くなり震え出す。
「お分かりいただけたのなら大人しく御同行をお願い致します」
「同行だと?」
「はい。流石にこの人数を一斉に殺すと騒ぎになりますので、皆様には王都の外れにある崖で馬車ごと転落して頂きます。
皆様の死は、明日からの連休を観光地で過ごす為に出かけた際の事故とする予定です」
淡々と俺達の死について説明するエリシアに、俺は不気味な恐怖を感じた。
指先や足先が氷の様に冷たくなり、左腕に絡まる様に捕まっていたアニエスは腰が抜けた様に脱力し失禁していた。
「だ、だ、誰か!!誰が来い!!」
俺は叫ぶがその声に反応する者は居ない。
クスクスと笑ったエリシアが告げる。
「誰も来ませんわ。今この宮には貴方達しかおりませんし、宮の周囲にも人払いがされております。
皆様が旅行に行ったと証言する者も用意されておりますのでご安心を」
エリシアはそう言うと丁寧に一礼し、命令する。
「連れて行きなさい」
するとエリシアと同じく全身を黒い衣装で揃え、顔を仮面で隠した者達が部屋に雪崩混んで来て俺達を拘束した。
王族の命令だと言って辞めさせようとしたが、誰も従わなかった。
外に用意されていた馬車に詰め込まれた俺達は、不自然な程に人気の無い王城の中を走り、俺も知らない出入り口から王都の外に出た。
そして数時間後、切り立った崖の中程で馬車は止まった。
そこで俺達だけを残してエリシアや黒ずくめの部下達は馬車を降りた。
俺達も逃げ出したかったが、外では別の馬車でついて来ていた何人もの《クロウ》のメンバーが剣を構えていて出れない。
俺は扉越しにエリシアに命乞いをするが、あの女は一切取り合わなかった。
エリシアは馬車の屋根の物置から大きな袋を取り出す。
その袋から出て来た物に俺達は震え上がった。
上等な服を着せられた男だ。
「な、何だそいつは……」
「御者役の男ですわ。先日捕らえられた盗賊ですが、ちゃんと身なりを整え、王族の馬車の御者が出来るだけの身分を用意して有ります」
エリシアは男を拘束していた縄を解くと命乞いをしようと口を開きかけた男を容赦無く崖から突き落とした。
崖の下へと消えて行く男の悲鳴を聞き、俺達は皆、自分の死を実感し、アニエスとサイモンは嘔吐する。
「落としなさい」
容赦なく告げられたエリシアの声。
次の瞬間には馬車が崖を転げ落ち、俺達を激しい衝撃が襲った。
全身の痛みで意識を取り戻した俺は周囲を見回した。
両足は力が入らず、痛みしか感じない。
見れば左腕は肘から先がちぎれ飛んでいた。
「うぅ……た、助け……」
先ず見つけたのはサイモン。
しかし、サイモンは両手両足が不自然な方向へ曲がっており、何より首が90度折れ曲がっている。
その目に生気は無い。
「あ、が……おえぇ!!」
凄惨なその姿に胃の中の物を全て吐き出した俺は視線を別の方へと向ける。
そこには砕けた馬車の破片で串刺しになったロナルドが居た。
大量に流れ出した血で真っ赤に染まっている。
「あ、あ、あぁぁあ!!!」
「あら、まだ息が有りましたか。しぶといですわね」
「ひっ!」
俺の前に再びあの女が現れる。
「ま、待って、待ってください!た、助けて!謝る!謝るから!婚約破棄は撤回する!
だから……」
「今更何を言っているのですか?
あと、貴方と再び婚約するなんて死んでもお断りですわ」
地面に這いつくばり涙を流して命乞いする俺を、虫けらでも見る様に見下すエリシア。
そこにエリシアの部下が声を掛けた。
「エリシア様、ロナルドとサイモン、レオンの3名の死を確認致しました」
「アニエスは?」
「まだ息が有ります」
「そう、では予定通り獣に食い散らかされた様に偽装して殺して」
「はっ!」
エリシアは恐ろしい事を何でもない事の様に命令した。
「ぁぁあ!!!いや!いやぁぁあ!!痛い!止め、や……ぎぁぁあ!!」
男が消えた方、馬車の残骸で俺からは見えなかった場所からアニエスの悲鳴が聞こえ、やがてその声は弱々しくなり消えて行った。
「あ、あ、あ」
全身を震わせて言葉にならない言葉を口にする俺を見下ろし、エリシアは美しく微笑んだ。
「ご安心ください、殿下。
殿下も直ぐに愛するアニエス男爵令嬢の所へお連れしますわ」
そう言うエリシアの手には獣の牙を模したのだろう、斬れ味の鈍そうなギザギザした大振りなナイフが握られていた。
◇◆☆◆◇
私が学園のカフェテリアでお茶を飲んでいた時、空いていた正面の席に友人のロザリアが座った。
「エリシア様、聞きまして?」
「どうされたのですか?ロザリア様」
「ほら、例のダミアン殿下の呪いのお話ですわ」
「ああ、詳しくは聞いていませんわね」
「もう噂ですわよ。
ダミアン殿下がエリシア様に非道な行いをしたから事故にあったと。
何でも遺体は獣に食い荒らされて酷い状態だったとか。
更に同日、ダミアン殿下と親しかったクラスメイト2名も急病や事故で亡くなったとか」
「ふふ、呪いなんてあるわけないわよ」
私は恐ろしがるロザリアに笑って言った。
応援ありがとうございます!
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みんなの感想(2件)
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通知を見落としており、本日拝読しました。
国家機密というのは、そういうことで。エリシアさん、できる方、でしたね……!
不審な点を一切残さないところ、そしてその後のお姿。
やはり、プロフェッショナルでした。
感想ありがとうございます。
(`・ω・´)ノシ
面白かったです!
よくある主人公がウェルカムな婚約破棄の話と違い、クロウなどのエッセンスがとても効いていました。
王子はホントにバカだなぁw
容赦なく断罪していたのもスッキリです!
他の作品でちょっと内容に気持ちが納得いかずキツいコメントを書いてしまいましたが(すみません)、そちらもこちらも文章が読みやすくテンポよく素敵です。
他の作品も拝読させていただきたいと思います。
感想ありがとうございます。
(`・∀・´)ノシ