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神々の間では異世界転移がブームらしいです。 第2部 《精霊の紋章》
37話 治安の悪い国
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マーリンが魔法で創り出した水を桶に入れ、飼葉と共にシオンに与える。
飼葉を運んだ俺に唾を飛ばし、水を出したマーリンには額をすり寄せる。
安定のエロ馬である。
ミルミット王国の王都を出発して2ヶ月、俺達〈精霊の紋章〉はいくつかの依頼をこなしグリント帝国の端まで馬車を進めていた。
グリント帝国とヤナバル王国の国境の砦に到着した俺達にグリント帝国の紋章が入った鎧を着た兵士が近づいてくる。
「お前達、冒険者か?」
「はい」
兵士にギルドカードを預け、審査の間、1時間ほど時間を潰していると兵士に呼ばれた。
審査は無事終わった様で、兵士からギルドカードを返して貰う。
すると兵士は言葉を選ぶ様に忠告をしてくれた。
「この先はヤナバル王国だ。
ヤナバル王国は現在その……なんだ'……あまり治安が良くない。
気をつけろよ」
「ありがとうございます」
そして、グリント帝国領からヤナバル王国の領土に入る。
「止まれ」
そしてヤナバル王国の兵士に止められる。
これからもう1度、チェックを受けるのだ。
一緒にしろよと思わなくはないが、仕方のない事だ。
「ギルドカードを見せろ」
横柄な態度の兵士にギルドカードを手渡す。
「ふん、Dランク冒険者か。
違法な荷は無いだろうな」
「はい、荷は水と食料、野営具、魔物の素材などです」
「確認させて貰う」
数人の兵士がズカズカと馬車に上がり込み、ガサガサと漁り出した。
何だこいつらは?
本当に国の兵士なのか?
山賊や盗賊の類では無いかと心配になる。
そうこうして時間が過ぎ、兵士が戻って来た。
「ちっ、通っていいぞ」
「はぁ、ありがとうございます」
俺達はどうにかヤナバル王国へと入国する事が出来た。
しかし、事件は入国して半日程してから発覚する。
「あ!」
俺が手綱を握り、不満そうなシオンに指示を出していた時に、マーリンが声を上げた。
「どうした、マーリン」
だらっとしていたカートがマーリンに尋ねる。
「魔石の数が足りないのよ。
素材も少し減ってるし」
「こりゃあ、ヤられたか?」
「多分、国境の兵士だろうな」
「どうする? 戻る?」
「戻ってもしょうがないさ。
どうせ証拠がないとか言ってしらばっくれるに決まってるだろ。
下手をしたらこっちが犯罪者にされちまう」
「はぁ、仕方ない。
大した額では無いし、今回は勉強代だと思って諦めるか」
「そうね。
国王様から貰った路銀をマジックバッグに入れておいて良かったわ」
ようやく目的の国に到着した俺達だが、いきなり出鼻を挫かれるのだった。
===========================
グリント帝国で唯一、魔境に面していた辺境の地は、帝国一の迷宮都市アリアドネであったが、数年前より事情が異なっている。
隣国、イザール神聖国が魔境に飲み込まれると言う大事件が原因だ。
イザール神聖国は、光神教の教皇であり、国家元首でもある『聖女』ロザリー・フォン・イザールの圧倒的なカリスマと精強な騎士団、特に魔法と剣術を修めた魔法騎士で構成された精鋭、聖騎士団の武威によって周囲の小国が次々と魔境に呑まれ、滅亡していく中、平穏を保っていた。
しかし、そのイザール神聖国も魔境からあふれ出した魔物によって崩壊してしまった。
イザール神聖国の領土は魔物の領域とかしたのだ。
しかし、小国とは言え1つの国家の領土である。
その領土全てが魔物で溢れかえっているわけでは無い。
だが、イザール神聖国と接していた帝国の領地では魔物への対策を強いられているのだが、それが十分かと問われれば疑問の声が上がるだろう。
グリント帝国の森の中、男が1人歩いていた。
黒く染められた革鎧に黒いマントを羽織っているその姿は、闇に紛れ少し目を離せば、たちどころに存在を見失ってしまうだろう。
男が歩くのは元イザール神聖国領からほど近い田舎の森の奥だった。
魔物は多いが、特別強い魔物は少ない。
そんな森の中の拓けた場所で立ち止まる。
すると男は、マジックバッグから何かの骨を取り出した。
マジックバッグから次々に取り出された骨がうず高く積まれる。
男が軽く指を振ると、骨を囲むように魔法陣が浮かび上がり、明滅する。
それを見届けた男は僅かに口角を上げると骨に背を向けて立ち去って行った。
飼葉を運んだ俺に唾を飛ばし、水を出したマーリンには額をすり寄せる。
安定のエロ馬である。
ミルミット王国の王都を出発して2ヶ月、俺達〈精霊の紋章〉はいくつかの依頼をこなしグリント帝国の端まで馬車を進めていた。
グリント帝国とヤナバル王国の国境の砦に到着した俺達にグリント帝国の紋章が入った鎧を着た兵士が近づいてくる。
「お前達、冒険者か?」
「はい」
兵士にギルドカードを預け、審査の間、1時間ほど時間を潰していると兵士に呼ばれた。
審査は無事終わった様で、兵士からギルドカードを返して貰う。
すると兵士は言葉を選ぶ様に忠告をしてくれた。
「この先はヤナバル王国だ。
ヤナバル王国は現在その……なんだ'……あまり治安が良くない。
気をつけろよ」
「ありがとうございます」
そして、グリント帝国領からヤナバル王国の領土に入る。
「止まれ」
そしてヤナバル王国の兵士に止められる。
これからもう1度、チェックを受けるのだ。
一緒にしろよと思わなくはないが、仕方のない事だ。
「ギルドカードを見せろ」
横柄な態度の兵士にギルドカードを手渡す。
「ふん、Dランク冒険者か。
違法な荷は無いだろうな」
「はい、荷は水と食料、野営具、魔物の素材などです」
「確認させて貰う」
数人の兵士がズカズカと馬車に上がり込み、ガサガサと漁り出した。
何だこいつらは?
本当に国の兵士なのか?
山賊や盗賊の類では無いかと心配になる。
そうこうして時間が過ぎ、兵士が戻って来た。
「ちっ、通っていいぞ」
「はぁ、ありがとうございます」
俺達はどうにかヤナバル王国へと入国する事が出来た。
しかし、事件は入国して半日程してから発覚する。
「あ!」
俺が手綱を握り、不満そうなシオンに指示を出していた時に、マーリンが声を上げた。
「どうした、マーリン」
だらっとしていたカートがマーリンに尋ねる。
「魔石の数が足りないのよ。
素材も少し減ってるし」
「こりゃあ、ヤられたか?」
「多分、国境の兵士だろうな」
「どうする? 戻る?」
「戻ってもしょうがないさ。
どうせ証拠がないとか言ってしらばっくれるに決まってるだろ。
下手をしたらこっちが犯罪者にされちまう」
「はぁ、仕方ない。
大した額では無いし、今回は勉強代だと思って諦めるか」
「そうね。
国王様から貰った路銀をマジックバッグに入れておいて良かったわ」
ようやく目的の国に到着した俺達だが、いきなり出鼻を挫かれるのだった。
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グリント帝国で唯一、魔境に面していた辺境の地は、帝国一の迷宮都市アリアドネであったが、数年前より事情が異なっている。
隣国、イザール神聖国が魔境に飲み込まれると言う大事件が原因だ。
イザール神聖国は、光神教の教皇であり、国家元首でもある『聖女』ロザリー・フォン・イザールの圧倒的なカリスマと精強な騎士団、特に魔法と剣術を修めた魔法騎士で構成された精鋭、聖騎士団の武威によって周囲の小国が次々と魔境に呑まれ、滅亡していく中、平穏を保っていた。
しかし、そのイザール神聖国も魔境からあふれ出した魔物によって崩壊してしまった。
イザール神聖国の領土は魔物の領域とかしたのだ。
しかし、小国とは言え1つの国家の領土である。
その領土全てが魔物で溢れかえっているわけでは無い。
だが、イザール神聖国と接していた帝国の領地では魔物への対策を強いられているのだが、それが十分かと問われれば疑問の声が上がるだろう。
グリント帝国の森の中、男が1人歩いていた。
黒く染められた革鎧に黒いマントを羽織っているその姿は、闇に紛れ少し目を離せば、たちどころに存在を見失ってしまうだろう。
男が歩くのは元イザール神聖国領からほど近い田舎の森の奥だった。
魔物は多いが、特別強い魔物は少ない。
そんな森の中の拓けた場所で立ち止まる。
すると男は、マジックバッグから何かの骨を取り出した。
マジックバッグから次々に取り出された骨がうず高く積まれる。
男が軽く指を振ると、骨を囲むように魔法陣が浮かび上がり、明滅する。
それを見届けた男は僅かに口角を上げると骨に背を向けて立ち去って行った。
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