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神々の間では異世界転移がブームらしいです。 第2部 《精霊の紋章》

133話 亡国の人々

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「エリオ、無事紋章持ちを見つける事ができたのだな」

  ミルミット王国の王城の応接室で俺達はレオとシアに再会していた。
  ジンとバッカスは肝が太いのか、初めて会う王族を前にしてもいつも通りの態度を崩さない。
  始め、ガチガチに緊張していた俺とは大違いだ。
  
「ああ、こうして共に戦ってくれる事になった」

「そうか、私はこのミルミット王国の皇太子、レオンハルト・フォン・ミルミットだ。
  彼女は私の婚約のシンシア・フォン・レブリック。
  よろしく頼む」

  そう言う2人にバッカスは頭を下げる。

「私はバッカスと言います。
  人族の礼節には詳しく無い故、何卒ご容赦頂きたく思います」

「うむ、公の場で無いなら過度な礼は必要ない。
  私の事はレオと呼んでくれ」

「わたくしもシアで結構ですわ」

  バッカスに続きジンも頭を下げて自己紹介をする。

「私はジン、見ての通りエルフの冒険者です。
  私は紋章とやらは持っていませんがバッカスと共に戦いたいと考えています」

「よろしく頼む。
  それでエリオ、例の解呪の件なんだが……」

「ユウ先生の紹介してくれた方よね?
 交渉はどうなったの?」

  マーリンが思い出したかの様に口を挟む。

「ああ、交渉は上手くいった。
  事情を説明したら快く協力してくれる事になった」

「それは良かった。
  それで、何処に向かえばその方にお会い出来るのですか?」

  ソフィアの問いに何処か興奮した様なレオが答える。
  
「大丈夫だ。
  グリント帝国がワイバーンを出してくれてな。
  すでに王国にお着きになり、城に逗留されている」

「そうなのか?」

「ああ、すぐにでも診てもらおうと思って呼んであるが、くれぐれも失礼のない様にな」

  あまり礼儀を気にしないレオがそこまで言うとは、他国の要人なのかも知れないな。

「あんたがそこまで言うなんて、何者なの?」

「ふふふ、きっと驚きますわ」

  マーリンの問いにはシアが笑みを浮かべながら誤魔化した。

  するとノックの音が聞こえ、シアと少しやり取りしたあと、扉が開く。

  部屋に入って来たのは20代くらいの女性とフルプレートを装備した騎士だった。
  輝く様な美しい銀髪を肩まで伸ばしている。
  しかし、その美しい容姿の反面、右腕は肩から先を失っており、右目には眼帯をつけている。
  俺はその姿に僅かに戸惑ったが、俺よりも同様した者がいた。

  ガタッ!

  大きな物音を立てて立ち上がり、唖然とした表情を女性に向けているのはソフィアだった。

「そ、そんな!ろ、ロザリー様!」

「え、あ、貴女はたしか……ブリッツ伯爵家のソフィアですか?」

「は、はい、ソフィア・フォン・ブリッツです。
  ロザリー様……生きていらしゃったのですね」

  ソフィアの目からは涙が溢れている。
  しかし、ロザリーと呼ばれた女性は、ソフィアに驚いたあと、何かに気がついた様に共に部屋に入って来た護衛と思われる騎士に目をやる。
  騎士はフラフラと前に出ると顔を覆うフルフェイスのヘルムを外した。

「ソフィア……ソフィアなのか!」

「あ、兄上!」

  なんと、護衛の騎士はソフィアが探していた兄だった。
  その後は大騒ぎだ。
  ロザリーと呼ばれた女性はなんと死んだとされていたイザール神聖国の聖女であり、国家元首のロザリー・イル・イザールだった。
  彼女は大怪我を負ったが、スタンピートを生き延び、ソフィアの兄、レイネットさんと共に名を変えて帝国の田舎の村で暮らしていたそうだ。
  いまは帝国の保護を受けており、ローザと名乗っいるらしい。
  ざわざわとした混乱の中、ロザリー様……いやローザさんの取り敢えず今は俺の解呪が先決だと言う言葉で、皆んなは落ち着きを取り戻した。
  そして、ローザさんは俺の額に手を当て集中する。

「コレは……かなり強力な呪ですね。
  この呪を、解呪するには数日かかるでしょう。
  エリオさんにも相応の負担が掛かるので、今日は休んで疲労を取ってから解呪にかかりましょう」

  そこからは紅茶と軽食を貰い、ソフィアを中心にした話になった。
  
「え、こ、子供ですか⁉︎」

「ああ、去年産まれた。
  モーリスという名前だ。
  お前の甥という事になる」

「兄上と出会えたと思えばロザリー様……ローザ様が兄上と結婚していて、更に甥までいるとは……」

「ふふ、俺は家族は皆んなは死んだものだと思っていた。
  しかし、ソフィアが生きていてこうして出会えたのは嬉しいぞ」

「私もずっと探していた兄上に会えて嬉しいです」

「父上と母上も今頃は神の元で喜んでくれているだろう」

「え?」

「ん?」

「ああ!
  あの……父上は生きていますよ。
  多分ですが」

「なに⁉︎」

「私はエリオ達と出会う前、ダンジョンで手に入れた降霊石と言う、死者と会話出来るマジックアイテム使い家族の魂を呼び出そうとした事があります。
  その時、呼び出せたのは母上だけでした。
  だから私は父上と兄上が生きている事を知ったのです」

「なんと、父上は生きているのか⁉︎」

  ソフィアの話に兄であるレイネットさん(今はレインさんと名乗っているらしい)が驚きを返す。
  う~む、今日1日で衝撃的な事柄が起きすぎていると思う。

「それにしてもソフィア嬢がイザールの出身だったとはのぅ」

「イザールの一件では多くの難民が出たからな」

「そうなのか?」

  ジンとバッカスがしみじみと語る。
  俺はずっと田舎で暮らしていたのであまり詳しく無いが彼らは何だか詳しそうだ。
 
「ああ、ソフィア嬢ちゃんは運が良い。
  こうして兄貴に出会えたんだからな」

「ワシらの知り合いにもイザールの出身で、ずっと家族を探し続けている者もおる」

「そうですか……私が至らぬばかりに民には苦労ばかりを掛けてしまっていますね……」

  ローザさんは辛そうに呟いた。

「ああ、いや別にあんたの所為じゃないだろ」

「そうじゃ、あれ程の規模のスタンピードで多くの民が生き延びたのはお主と騎士団が命懸けで時間を稼いだおかげじゃろう」

「その知り合いもローザさんの事を恨んでなんかいなかったぞ。
  むしろ守れなかった事を悔やんでいた」

「守れなかった?
  その人は騎士だったの?」

  マーリンはジンの言葉に少し引っかかりを覚えた様だ。

「ああ、国家元首だったならば知っておるだろう。
  バルバロッサと言う男だ。
  国では聖騎士団長をしていたらしい」

「「「え⁉︎」」」

「「ん?」」

  イザール出身の3人の驚きの声にジンとバッカスは首を傾げる。
  そんな2人にソフィアが告げる。

「あの……バルバロッサ・フォン・ブリッツは私の父上です」

  今日の展開は早すぎる。
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