神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ

文字の大きさ
40 / 418
神々の間では異世界転移がブームらしいです。 第1部 《漆黒の少女》

閑話 薬師の少女と私

しおりを挟む
  2年前の事だ。
  まだ、11歳だった娘が足が痛いと言いだした。
  娘の足には砂の様な出来物ができていた。
  虫にでも刺されたのだろうと軽く考えていたが、砂の様だった出来物は直ぐに石の様になり、一年も経つと娘の両足は石に覆われ、立つことさえ出来なくなった。
  私は王国中の医者に相談した。
  学院時代の友人である現国王陛下に頼み、王宮医師にも見て貰った。
  しかし、誰も原因すら分からなかったのだ。
  しきりに妹を心配する長男を学院へと送り出した私は、腕が立ち、信頼出来る執事であるシルバに大陸の国々を回り、娘の病について調べる様に命じた。
  シルバは各国を回り、懸命に調べてくれたが成果はなかった。
  そんな時、学院にいる息子から手紙が届いた。
  手紙には近況報告と学院で出来た友人に協力して貰い、妹の病について調べている事などが書かれていた。
  そして友人の1人はあのレブリックの才女らしい。
  彼女の計らいで最近ようやく交流が始まったばかりの東方の島国へと行ける事になった。
  
「シルバ、戻ったばかりで済まないが東方の島国へ行ってくれないか?」

「お任せください、旦那様。今度こそユーリアお嬢様の病を治す方法を見つけて見せます」

「うむ、それと東方の島国は大陸の端の更に先だ。ガストの街からでは従魔を召喚出来ないかも知れない。
  コレを持っていけ」

  私は自分のマジックバックから召喚魔法の補助魔方陣を刺繍した絨毯をシルバへと渡した。
  この魔方陣と触媒を用いる事で遠方からの召喚が可能になる……らしい。
  私自身は召喚魔法が使えないので使ったことはないのだ。
  なんでも私の曽祖父が作らせた物らしく宝物庫に転がっていた。

  シルバを送り出して数ヶ月が過ぎた頃私の元にシルバの従魔が飛んできた。
  従魔の足に付けられた器具から手紙を外した私は、従魔を使用人に任せ、手紙に目を通した。
  しかし、手紙には期待していた言葉は書かれていなかった。
  東方の島国の医師や薬師達にも娘の病を治せる者はいなかったのだ。
  シルバからの手紙は泣きながら書かれたのか所々インクが滲んでいた。
  娘が多くの人々に愛されている事を誇りに思う。
  最早、この大陸に娘を治せる者は居ないのだろう。
  後はせめて最後の時まで幸せに過ごして貰いたい。
  私はシルバからの報告を妻に伝え、2人で涙を流すのだった。
  くれぐれも娘の前では涙を見せない様に。


  それから3カ月が過ぎ、そろそろシルバが戻って来る頃だと思う。
  私の元に戻ったのはシルバでは無く、シルバの従魔だった。
  戻って来るだけの旅でなんの報告が必要なのか疑問に思いながら手紙を読むと私は不覚にも崩れ落ちそうになった。
  なんとシルバの弟がギルドマスターを務めるガナの街に最近、魔法遺跡の事故で大陸の外から転移して来た者が居るらしい。
  しかも、その者は非常に腕の立つ薬師であり、娘の病を治せるかも知れないと言う。
  余りに都合のいい展開に疑う気持ちが無かった訳ではないが藁にも縋りたい思いとシルバへの信頼で、信じる事に決めた私は手紙に同封されていた治療に必要になる可能性の有る素材を集める為、使用人に指示を出すのだった。

  手紙を受け取ってから7日程して、シルバが戻ってきた。
「良くやってくれた、シルバ」

「いえ、全て弟が計らってくれたからです。
  それに治せるかはユーリアお嬢様を診て貰わないと分からないそうですから」

「あぁ、分かっている。しかし、今まで全く手がかりが無かったのだ。
  少しばかり興奮してしまうのは仕方ないだろう。
  それで、薬師殿は応接室だったな」

「お待ち下さい旦那様」

「ん、どうした?」

「それが薬師のユウ様なのですが過去に何が有ったのか分かりませんが貴族に対して余り、良い感情を持ってい無い様なのです。
  私と弟の説得で旦那様が横暴を働く様な貴族では無いと分かって頂けましたが交渉にはお気をつけください」

  残念な事だか貴族の中には特権意識ばかりが高く、護るべき民を搾取の対象としてしか見ていない様なクズが多く存在する。
  恐らくそう言ったクズから何か迷惑を掛けられたのだろう。

「分かった。怒らせない様に慎重に接するとしよう。
  もし、怒らせて治療して貰えなかったら大変だ」

「いえ、当然、治療もそうですがユウ様は冒険者としても非常に腕の立つ方ですので……」

「……そんなにか?」

「はい。ガナの街の近くに現れたゴブリンロードを単独で討伐しています。
  旅の間の戦闘を見た限りですが少なくとも私程度では手も足も出ないでしょう」

「ゴブリンロードを単独か……まだ若いと聞いたが末恐ろしいな」

「性格は非常に優しく、善良ですが盗賊などには容赦がなく、躊躇なく殺して居ました。
  こちらが礼を尽くして接すれば問題は無いと思います。
  身長が低く、年齢にしては幼い顔立ちをしていますが、ユウ様の国の方々はそういった人種らしいので年齢などには触れない方が懸命だと思います」

「わかった。では薬師殿に会いに行くとするか」

  こうして覚悟を決め会いに行ったユウ殿は丁寧で礼儀正しく、優しい少女だった。
  そして、薬術の腕前は予想以上だった。
  まさか、大陸中の医者が匙を投げる病を僅か10日で完治させるとは驚きを隠せない。
  治療が終わった日には街を上げたお祭り騒ぎになった。
  少し調子に乗りすぎたらしい。
   
  私は酒が残り、少し痛む頭を振りながら王都に居る息子に手紙を書くのだった。
しおりを挟む
感想 890

あなたにおすすめの小説

不遇な死を迎えた召喚勇者、二度目の人生では魔王退治をスルーして、元の世界で気ままに生きる

六志麻あさ
ファンタジー
異世界に召喚され、魔王を倒して世界を救った少年、夏瀬彼方(なつせ・かなた)。 強大な力を持つ彼方を恐れた異世界の人々は、彼を追い立てる。彼方は不遇のうちに数十年を過ごし、老人となって死のうとしていた。 死の直前、現れた女神によって、彼方は二度目の人生を与えられる。異世界で得たチートはそのままに、現実世界の高校生として人生をやり直す彼方。 再び魔王に襲われる異世界を見捨て、彼方は勇者としてのチート能力を存分に使い、快適な生活を始める──。 ※小説家になろうからの転載です。なろう版の方が先行しています。 ※HOTランキング最高4位まで上がりました。ありがとうございます!

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

無職が最強の万能職でした!?〜俺のスローライフはどこ行った!?〜

あーもんど
ファンタジー
不幸体質持ちの若林音羽はある日の帰り道、自他共に認める陽キャのクラスメイト 朝日翔陽の異世界召喚に巻き込まれた。目を開ければ、そこは歩道ではなく建物の中。それもかなり豪華な内装をした空間だ。音羽がこの場で真っ先に抱いた感想は『テンプレだな』と言う、この一言だけ。異世界ファンタジーものの小説を読み漁っていた音羽にとって、異世界召喚先が煌びやかな王宮内────もっと言うと謁見の間であることはテンプレの一つだった。 その後、王様の命令ですぐにステータスを確認した音羽と朝日。勇者はもちろん朝日だ。何故なら、あの魔法陣は朝日を呼ぶために作られたものだから。言うならば音羽はおまけだ。音羽は朝日が勇者であることに大して驚きもせず、自分のステータスを確認する。『もしかしたら、想像を絶するようなステータスが現れるかもしれない』と淡い期待を胸に抱きながら····。そんな音羽の淡い期待を打ち砕くのにそう時間は掛からなかった。表示されたステータスに示された職業はまさかの“無職”。これでは勇者のサポーター要員にもなれない。装備品やら王家の家紋が入ったブローチやらを渡されて見事王城から厄介払いされた音羽は絶望に打ちひしがれていた。だって、無職ではチートスキルでもない限り異世界生活を謳歌することは出来ないのだから····。無職は『何も出来ない』『何にもなれない』雑魚職業だと決めつけていた音羽だったが、あることをきっかけに無職が最強の万能職だと判明して!? チートスキルと最強の万能職を用いて、音羽は今日も今日とて異世界無双! ※カクヨム、小説家になろう様でも掲載中

処理中です...