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第零話 幕開け
しおりを挟む広いメインルームに、殺伐とした機械音が響いていた。この閉鎖的な空間は白一色であり、全くと言っていいほど面白みに欠けている。
俺はいつものように、選別された電子メールを確認する。幾度となくやった作業であり、不自然な情報を見逃すことはない。
毎日、”テロリズム”、”ダビディアン教団”、そして” ”9 11” などといった有害なキーワードを見ていると、つくづくこの世の中はおっかないな、と思う。
そして、この仕事にはきりがない。どれだけ多くの情報を確認しても、また、沢山の情報が押し寄せてくる。そこがこの仕事の面白みだ、という者もいるのだが、俺はそうは思わない。
この仕事に就いてからというもの、システムエンジニアの凄さを、肌で感じるようになった。コンピューターの性能を高めてくれ、我々の仕事を楽にしてくれるからだ。
ただし、選別できる情報の精度は上がっても、全体としての犯罪の件数は変わらない。そのため、仕事の量も雀の涙ほどにしか変わりがない。
それに追い打ちをかけるように、エドワード・スノーデンの告発があった。その内容と言うのが、PRISMで有線データ通信さえも盗聴されていることだった。
この告発をきっかけに、人々による "エシュロン" というシステムが世に認知され始めた。
当然のように、この事実を知った人々は、エシュロン対策を行い始めた。代表的なものに通信傍受システムへのハッキングがある。アメリカでは大規模なサーバーのダウンが起こったと聞いている。
また、日常的にシステムに探知されるキーワードを電子メールに付記するといったことは、我々にとって地味にダメージはが大きい。
この対策に敢えて総称をつけるならば、コンピューターに負荷を与える操作と言ったところだろう。
情報を吟味する側の俺達としては、非常に迷惑な話だ。
隠された世界を彼が世界中に広めたことで、俺達の労働時間が増えたのだから。
ただし、通信傍受システムは明らかな人権侵害だ。無差別に人を監視し、個人情報を集める。そんなことが、正しいはずがない。
しかし、エシュロンによってテロが未然に防がれているのも事実だ。日本青軍最高幹部であった、重信房子の逮捕のきっかけも、エシュロンが極秘裏に、日本に帰国して潜伏しているという情報を得たことだった。
このことからも、エシュロンはある意味で、”表裏一体だ” と言える。
だから、俺はこの問題を極力考えないようにしている。深く考えれば考えるほど、善悪の判断がつかなくなる気がして恐ろしい。
俺の同僚にも、大きな事件に関わったことにより、自責の念にとらわれ、亡命した者もいる。先輩の話では、重大な事件解決に走った者の約者4割が、精神的苦痛により、仕事を辞めたそうだ。
故に、俺は毎日 ”事件に出会いませんように” と祈っている。
そんな時、ある一通のメールが、俺の目に飛び込んできた。
『日本の ”9・11” だ』
このメールを見た瞬間、俺の体に戦慄が走った。
明らかに異質で、ほかのものとは一線を画している。文体から考えても、一般市民が興味本位で調べたものでもなく、エシュロン対策でもない。
テロ、もしくは事件に関わることだというのが容易に推測できる。
そして、確信を持って言えることが一つだけあった。
「これによって、俺は事件に巻き込まれる」と
俺はただただ、嘘で在ってくれ、と祈るばかりだった・・・
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
某時刻
東京都内の一画にて秘密裏に話し合いが行われた。
「おい、何やってんだ! あのメールを見られたら俺らにも捜査が及ぶじゃねーか!」
「そう焦るなって! 簡単にあのメールが見られるわけないだろ。それよりも、金は払えるんだろうな」
「ああ、お前の働き次第だがな」
「それよりも、奴の乗る機は押さえてあるのか?」
「ああ、もちろんだ。実行者はどうなった? 用意してあるんだろ」
「二人な。いい奴が居たんだぜ。入国申請も済ませてある」
「おお! 珍しい事もあるもんだな。それじゃあ、調停だ・・・」
これは、日本の歴史に残るテロ計画の一部始終だった・・・
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日本での同時多発テロ及び、内閣総理大臣殺害に関する協定書
・概要
今回の飛行機ハイジャック等のテロ(以後本件とする)において、以下三名とそれに関わる者は、下記の計画の遂行を第一に考え、行動する。
・協定者
・アイマン・ラディン(アルケイダ 最高指導者)
・坂口 隆之(江戸 坂口組 三代目組長)
・鈴木 哲也(IT企業 社長)
・計画
1 9月11日の午前7時、成田空港発ソウル行きの、ボーイング767号機を高度3千メートル付近でハイジャックする。
※鈴木哲也監修のジャックウェア”改”でオートパイロットを改ざんし、突入を支援する。
2 鈴木システムで、管制のコントロールを奪い、対応を遅延させる。
3 状況に応じて、○○門ヒルズ及び、○宿パークタワー等に突入する
4 突入後の救助活動現場に、車両を進入させ、歩行者を殺傷する。
※車両に自動小銃等を搭載し、被害を拡大させる。
5 最後に車両を爆破し証拠の隠滅を図る。
発効日
・20XX年 8月13日
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