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1話 黒髪のあの子
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「蓮!忘れ物はないね?」
母親の甲高い声が耳に響く。
もう高校生になるんだからお節介はやめてくれと思いつつも、一応リュックの中を確認する。
「大丈夫!じゃあ、いってきまーす。」
そう口早に言って家を出た。
自分がこれから3年間通うことになる、兵庫県立神戸中央高校は家から徒歩10分の所にある。
この高校を選んだ理由は、徒歩通学できるからだ。
そこそこ偏差値が高くて、家から近い、自分にはピッタリの学校だった。
塾の先生はトップ校の“神戸第一”を目指せと言ってたが、あんな山の上にある高校はごめんだ。それに頭が良い奴はどうも気に食わない。勉強ができるってだけで、人生勝ち組みたいな顔してる。これは俺がひねくれているだけだろうか。でも俺の友達はみんな、“神戸第一”に行った。
「蓮だったら絶対に“一高”受かってたのに。」
「まじかよ蓮。お前“神中”に行くんや。」
春休みに5万と聞いたセリフだ。
俺は行きたくて行くんだから誰にも文句を言われる筋合いはない。
俺からしたらなんでみんな、“神戸第一”なんかに行くんだ。
そっちの方がわからない。
とは言いつつも今こうやって通学路を一人で歩くのはどこか寂しさを感じる。
中学の頃はみんなでくだない話をして登校してたっけ。
------------------------------------------------------------------------------------------------
「蓮がゆいこちゃんと付き合ったらしいぜ」
「まじかよ!!」
「お前!それは秘密だって昨日言っただろ!」
「おい~蓮ちゃん。詳しい話聞かせてもらおうか」
------------------------------------------------------------------------------------------------
懐かしい思い出が蘇る。
「うまくやっていけるかな」
心の声が漏れ出た。
校門をくぐり中に入ると、人だかりができていた。クラス分けが張り出されているようだ。
「自分のクラスを確認した人は、速やかに教室へ行ってください。」
小太りの教員が拡声器を使って呼びかけているが意味はあまりない。
ほとんどの生徒が友達と来て、お互いのクラスを確認し合っている。
「やったー!一緒のクラスやん!」
「1組?俺7組やわ。めっちゃ遠いなぁ。」
「知ってるやつ誰もおらんねんけど。」
あちらこちらで感想会が開かれてるが、自分には関係がない。
早くクラスを確認して教室に行こう。
「すいません。通ります。」
人混みをかき分けて何とか掲示板までたどり着いた。1組から順に出席番号の真ん中のあたりを確認する。見つけた。
=5組25番 則本 蓮=
一応クラスのメンバーを確認するが知っている人は居なかった。
居てもたいして仲良くない人だから結果は変わらない。
なんならそっちの方が気まずい。
大体最初は、同じ中学同士がつるんで輪が広がっていく。
でも大して仲良くないやつとつるむとなると気を遣わなければならない。
だったら下手に同じ中学のやつがいない方がマシなのだ。
そう自分に言い聞かせ下駄箱へ向かう。
5組の下駄箱を見つけ上履きに履き替えた。
下駄箱を見たところ5組の教室に行っているのは自分以外に一人だけのようだ。
5組の教室は確か4階にあったはず。
教室までの道のりを歩いてるときにふと思った。
今教室に行けば知らない人と二人きり・・・。
気まずい。気まずすぎる。
ただでさえ俺は人見知りなのに、入学初日に二人きりは流石に辛い。
かといって時間を潰す場所も知らない。
下手に動いて迷子になる方が一大事だ。
仕方ない。渋々教室へ向かうこと決めた。
教室の前に着くと、急に心臓の鼓動が速くなったように感じる。
なんで俺はこんなに緊張しているんだ。
別に何も不安なことなんてないはずだ。
クラス全員知らない人だということは、下の掲示板で確認済み。
今更メンバーが誰かだなんて関係のないことだ。なのになんで。いや考えても仕方がない。ここでずっと突っ立っているところを誰かに見られる方が問題だ。
決意を固め大きく深呼吸をし、扉を開けた。
中を見渡すと、教室の左前方に一人の女生徒が座っていて窓から外を眺めていた。
黒髪ロングヘア。
今にも吸い込まれそうな大きな瞳。
なにか物思いに耽るような表情。
遠くから見るその子の横顔は「美しい」の一言だった。
母親の甲高い声が耳に響く。
もう高校生になるんだからお節介はやめてくれと思いつつも、一応リュックの中を確認する。
「大丈夫!じゃあ、いってきまーす。」
そう口早に言って家を出た。
自分がこれから3年間通うことになる、兵庫県立神戸中央高校は家から徒歩10分の所にある。
この高校を選んだ理由は、徒歩通学できるからだ。
そこそこ偏差値が高くて、家から近い、自分にはピッタリの学校だった。
塾の先生はトップ校の“神戸第一”を目指せと言ってたが、あんな山の上にある高校はごめんだ。それに頭が良い奴はどうも気に食わない。勉強ができるってだけで、人生勝ち組みたいな顔してる。これは俺がひねくれているだけだろうか。でも俺の友達はみんな、“神戸第一”に行った。
「蓮だったら絶対に“一高”受かってたのに。」
「まじかよ蓮。お前“神中”に行くんや。」
春休みに5万と聞いたセリフだ。
俺は行きたくて行くんだから誰にも文句を言われる筋合いはない。
俺からしたらなんでみんな、“神戸第一”なんかに行くんだ。
そっちの方がわからない。
とは言いつつも今こうやって通学路を一人で歩くのはどこか寂しさを感じる。
中学の頃はみんなでくだない話をして登校してたっけ。
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「蓮がゆいこちゃんと付き合ったらしいぜ」
「まじかよ!!」
「お前!それは秘密だって昨日言っただろ!」
「おい~蓮ちゃん。詳しい話聞かせてもらおうか」
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懐かしい思い出が蘇る。
「うまくやっていけるかな」
心の声が漏れ出た。
校門をくぐり中に入ると、人だかりができていた。クラス分けが張り出されているようだ。
「自分のクラスを確認した人は、速やかに教室へ行ってください。」
小太りの教員が拡声器を使って呼びかけているが意味はあまりない。
ほとんどの生徒が友達と来て、お互いのクラスを確認し合っている。
「やったー!一緒のクラスやん!」
「1組?俺7組やわ。めっちゃ遠いなぁ。」
「知ってるやつ誰もおらんねんけど。」
あちらこちらで感想会が開かれてるが、自分には関係がない。
早くクラスを確認して教室に行こう。
「すいません。通ります。」
人混みをかき分けて何とか掲示板までたどり着いた。1組から順に出席番号の真ん中のあたりを確認する。見つけた。
=5組25番 則本 蓮=
一応クラスのメンバーを確認するが知っている人は居なかった。
居てもたいして仲良くない人だから結果は変わらない。
なんならそっちの方が気まずい。
大体最初は、同じ中学同士がつるんで輪が広がっていく。
でも大して仲良くないやつとつるむとなると気を遣わなければならない。
だったら下手に同じ中学のやつがいない方がマシなのだ。
そう自分に言い聞かせ下駄箱へ向かう。
5組の下駄箱を見つけ上履きに履き替えた。
下駄箱を見たところ5組の教室に行っているのは自分以外に一人だけのようだ。
5組の教室は確か4階にあったはず。
教室までの道のりを歩いてるときにふと思った。
今教室に行けば知らない人と二人きり・・・。
気まずい。気まずすぎる。
ただでさえ俺は人見知りなのに、入学初日に二人きりは流石に辛い。
かといって時間を潰す場所も知らない。
下手に動いて迷子になる方が一大事だ。
仕方ない。渋々教室へ向かうこと決めた。
教室の前に着くと、急に心臓の鼓動が速くなったように感じる。
なんで俺はこんなに緊張しているんだ。
別に何も不安なことなんてないはずだ。
クラス全員知らない人だということは、下の掲示板で確認済み。
今更メンバーが誰かだなんて関係のないことだ。なのになんで。いや考えても仕方がない。ここでずっと突っ立っているところを誰かに見られる方が問題だ。
決意を固め大きく深呼吸をし、扉を開けた。
中を見渡すと、教室の左前方に一人の女生徒が座っていて窓から外を眺めていた。
黒髪ロングヘア。
今にも吸い込まれそうな大きな瞳。
なにか物思いに耽るような表情。
遠くから見るその子の横顔は「美しい」の一言だった。
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