彼女は素直です。

ツッチー

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2話 彼女の名前は?

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「なぁ蓮。女テニの部長の人めっちゃ可愛いと思わへん?」
「まぁ可愛いんじゃない。ていうか、なんだよ一目惚れか?」
「そんなとこかな。」
「お前って面食いなんだな。女は顔も大事だけど性格も重要だぜ!」
「だから幼稚園からずっと一緒のゆいこちゃんと付き合ったのか。納得納得。」
「おいその話はするなよ!」
「そっかそっか付き合ってたった3ヶ月でスピード破局だったもんな。」
「それ以上言ったらぶっ飛ばすぞ。」
「ごめん!ごめん!でもさ、男と女の出会いってのはファーストコンタクトが大事だと思うけどね。」
「いーや。女は顔じゃない!性格が大事!」
「何カッコつけてんだよ。そなこと言ってても蓮もいずれは一目惚れする時が来るよ。」
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何秒ぐらい彼女のことを見つめていたのだろう。ふと我に返る。
まずい。ずっと見てたこと気づかれたか。
恐る恐る黒板の前に貼ってある座席表を確認する。
すると彼女はようやくこちらに気づいたようだ。
教室に2人だけなのに何も声をかけないのも変か。
いや馴れ馴れしく話しかける方が気味悪がられるかもな。
まぁ挨拶するぐらいならどうってことはないだろう。
「おはよう。」
変に緊張してかすれ声になってしまった。
彼女は軽く会釈をしてまた外を見始めた。
友達でも待っているのだろうか。
いや待てよ。なんで俺は彼女に興味津々なんだ。
これ以上彼女をじろじろ見ていたらストーカーと勘違いされるかもしれない。
そんなことになったら俺の高校生活が1日目にして終わりを迎える。
早く座席を確認して席に着こう。
座席表は出席番号だけが書かれているだけの簡易的なものだった。
25番をすぐに見つけ、着席する。
たしか1時間目はクラスで説明があって、9時30分から入学式だっけ。
「8時30分には着席しておくように」って案内に書いてあったな。
今の時間は8時丁度か。
特にやることもないし、提出するプリントでも読んでおくか。
カバンからファイルを取り出し今日提出するプリントを広げた。一枚一枚確認しながら読み進めていく。
彼女の名前はなんだろう。
左の前の方に座っているから、「あ行」か、はたまた「か行」か。
安藤さん?いや加藤さん?そんな名前は下の名簿にあったけ。
おいおいなんでまた彼女のことを考えてるんだ。
なんか変だ。今までもこんなことは何度もあった。塾の合宿とか、何かのセミナーとか見知らぬ女子と一緒になることは別に珍しいことじゃない。
別に変な意識をする必要なんてないんだ。
なのになんでこんなに彼女のことが。

「おはよう!」
隣から急に声が聞こえて我に帰った。
隣には誰が見てもイケメンだと思う、爽やかな男子生徒がいた。
「俺は飛澤安光。よろしくな!」
その男は、俺に初対面の挨拶をしてくれた。
挨拶してくれたんだから、返さないのは流石にまずい。
こんなところで人見知りをしているようじゃ一生友達なんてできない。
「則本蓮です。よろしく。」
堅い挨拶になってしまったが、彼は特に気にすることなく話し始めた。
「俺のことはヤスって呼んで!中学の時はみんなそう呼んでたから、そっちの方がしっくりくるし。則本くんはなんて呼んだらええ?」
「俺は下の名前で蓮って呼ばれたかな。だから蓮でいいよ。」
「OK!これから一年よろしく!蓮!」
良いやつってこういう人のことを言うのだろうな。
でもこういうやつは大体周りに人が集まる特性がある。
高校生活でまともに話せるのはこの一回だけになるかもな。
そんなことを考えていると、隣に座る飛澤はおもむろに立ち上がり例の彼女の方へ向かって行った。
おいおいまさか話しかけるつもりか。
しっかり2人のことを見るのは少し後ろめたさを感じるのでプリントを読むふりをして聞き耳を立てる。
「俺は飛澤安光。よろしく!」
彼女はさっきの俺のかすれ挨拶と同じで軽く会釈しただけだった。
これは彼女極度の人見知りだな。自分との共通点が見つかり少し嬉しくなっている。
「名前はなんて言うの?」
飛澤は諦めることなく彼女に話しかける。
「・・・・・・・」
彼女が何か言ったみたいだがここからだと聞き取れなかった。
「えんどうふみなさん?」
飛澤が聞き直した。すると彼女は小さく頷いた。
「遠藤さん。これからよろしくね~。」
そう言うと飛澤はまた席に戻ってきた。
彼女の名前は遠藤さんか。
ただ名前を知っただけなのに謎の高揚感に包まれた。
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