少年館

ジョセフとアドン少佐の2人の生活48

　「ここまで来れば大丈夫。あとはそこの非常扉を開けた裏口から逃げてくれ。」

 取り調べ官はアドンの手錠を外した。

　「ありがとう。この恩は決して忘れない。良かったら君の名前を教えてくれないか？」

    「私の名前はドナと言います。またいつの日か会いましょう。それと、あなたのあの"屋敷"でのお話は私とアドン少佐の2人だけの秘密にしておきますよ。ただ忘れないで下さい、いつの日か出頭する事を。」

     「ああ、全て終わったら必ず！！」

 そう言うとアドンは非常扉を開けた。

　「待って！！これを持っていくといいでしょう。」

 ドナ取り調べ官は財布を取り出すとアドンに手渡した。

　「良いのか？」

 アドンはドナに尋ねた。

　「気にしないでください。何かの役に立つでしょう。私はあなたを護送中に隙を突かれ逃げられたという事にします。」
　
 アドンはドナに感謝をすると手を差し出して硬い握手を交わした。
被疑者と取り調べ官のなんとも奇妙な友情が芽生えた瞬間でもあった。しかし、ドナ取り調べ官の胸の中では全く被疑者を逃がした事による罪悪感なんてものは無かったのである。また、アドンもいつか必ず出頭する事を胸に誓っていた。