少年館

華岡光

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その意思を受け継いで30

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 スイスに入国したジョセフ達はしかるべく手続きをした後に住居へと案内された。

 「こちらのアパートになります。少々狭いかもしれませんが我慢してください。スイス政府の予算も先行き不安の世界情勢で様々な政策に予算がかかっていますので移民の方々への予算は正直足りてないのです。」

    「いや、ここまでしてくれただけでも幸せです。ありがとう。」

 アドンは政府の役人に手を差し伸べ握手をした。

 「この国も正直安全ではないのですが、ドイツにいるより、あるいは支配されている国にいるよりはまだ幸せだと思います。あなた達の幸せを心から願っています。仕事探しは私に任せて下さい。いい仕事が見つかり次第書類を持ってきますね。それと、とりあえずの一週間分のお金を渡しておきます。食糧は1日昼ごろにその日必要な食糧を配達します。
今日のところはこのパンとベーコンで我慢してください。お水は自由に出ます。それでは。」

 役人はお金が入った封筒と紙袋に新聞で包まれたベーコンの塊、そして食パン一片を渡すと引き上げていった。
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