少年館

その意思を受け継いで58

　「お先に！！」

    「おや！今日は珍しく着替えるのが早いじゃないか？」

    「今日は特別な日なんですよ！」

慣れてきた新しい職場の同僚に軽く挨拶を終えたアドンは自転車に跨り、アドンのためにアドンの好きな肉団子シチューを買い大きな水筒に入れてもらうと、口笛を吹きながらアドンが待つ家まで向かった。

　「奴だ！間違いない。あいつがアドン元フランス陸軍少佐だ。やっと見つけたぞ。あの野郎呑気に口笛なんか吹きやがって・・」

 ジョセフが待ってる家まであと少しの場所で、待ち受けていたのはマリオット率いるナチス武装親衛隊だった。

　「マリオット少佐？くれぐれもまだ手を出さないでくださいよ。肝心のガキの住んでる家を突き止めないとならないので。」

 呑気に口笛を吹いているアドンの姿を見たマリオットは自分がアドンに殺されかけた事を思いだした。

　「あの野郎・・ぶっ殺してやる！！」

 怒りの衝動を抑えきれないマリオットはついに動きだしてしまった。

　「マリオット少佐！！やめてください。ちょっと！！」

 アンゲラ大尉の言葉を無視したマリオットは腰元のホルスターからピストルを取り出すと、一目散にアドンのほうへ走りだした。