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1章◆王都スタルクリア
来訪者-3
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◆
「そう他人行儀な呼び方をしないでくれよ。我が一番弟子のイリス」
「ではクロウ。その子に何をしたのか教えてください」
「えっ? 分からないのかい? 実験の一発目ときたら、決まってるだろう」
「……『楽園行き』ですか」
「その通り。この被験体はいいね。なかなかいい線までいきそうだ」
「……、いい線って……、」
落ち着き払っていたイリスの声が、そこで初めて震えた。
「クロウ、あなたのその、……くだらない実験のために、一体何人ソマリ人を殺せば気が済むんです。魔人の書なんて……魔人の復活なんて、ただの御伽噺でしょう! いい加減にしてください!」
「御伽噺なんかじゃないさ。イリス、君も見ただろ? 『竜の右腕』を」
「……それらしきものは、確認しましたが……、一度だけです。あんなものはたまたま何かの副反応が――」
「『たまたま』かどうかを見極めるために、何度でも実験と検証を重ねるのが我々の務めだ。君は魔法使いの本質を否定するのか、イリス?」
「……限度があります。あなたはただ死体の山を築いているだけだ。貴族院でさえあなたのことを頭のおかしな老人だと陰口を叩いていますよ」
「言わせておけばいい。何事も最初の一人は気狂いのように言われるものだ。とにかく、これはもう決めたこと。ちょうど彼は君の奴隷のようだから、今回の件は君に一任しよう。絶対に逃がすなよ。奴隷契約の解除など以ての外だ。方法を探ることも禁じる」
「……」
「それと今回も……被験体が望むことは、できる範囲ですべて叶えてやりなさい。ご褒美がなければ生きる活力というのが沸いてこないからね。彼には期待しているんだ。簡単に死なせてくれるなよ」
「……」
「必要なものはこちらから順次送る。報告書を欠かさないように。さてイリス、返事は?」
「……承知しました。……」
吐き捨てるようなイリスの声に、男は勝ち誇ったような吐息で返す。そしてタビトの視界から黒い革靴が消えると同時に、足音が遠ざかっていく。がちゃん、と玄関のドアが閉まる音がしてから、キッチンの入り口でイリスが呻いた。
「ああもう、……結局私が、……君を死なせるのか……」
涙の混じったイリスの声を最後に、タビトの視界は暗くなった。
「そう他人行儀な呼び方をしないでくれよ。我が一番弟子のイリス」
「ではクロウ。その子に何をしたのか教えてください」
「えっ? 分からないのかい? 実験の一発目ときたら、決まってるだろう」
「……『楽園行き』ですか」
「その通り。この被験体はいいね。なかなかいい線までいきそうだ」
「……、いい線って……、」
落ち着き払っていたイリスの声が、そこで初めて震えた。
「クロウ、あなたのその、……くだらない実験のために、一体何人ソマリ人を殺せば気が済むんです。魔人の書なんて……魔人の復活なんて、ただの御伽噺でしょう! いい加減にしてください!」
「御伽噺なんかじゃないさ。イリス、君も見ただろ? 『竜の右腕』を」
「……それらしきものは、確認しましたが……、一度だけです。あんなものはたまたま何かの副反応が――」
「『たまたま』かどうかを見極めるために、何度でも実験と検証を重ねるのが我々の務めだ。君は魔法使いの本質を否定するのか、イリス?」
「……限度があります。あなたはただ死体の山を築いているだけだ。貴族院でさえあなたのことを頭のおかしな老人だと陰口を叩いていますよ」
「言わせておけばいい。何事も最初の一人は気狂いのように言われるものだ。とにかく、これはもう決めたこと。ちょうど彼は君の奴隷のようだから、今回の件は君に一任しよう。絶対に逃がすなよ。奴隷契約の解除など以ての外だ。方法を探ることも禁じる」
「……」
「それと今回も……被験体が望むことは、できる範囲ですべて叶えてやりなさい。ご褒美がなければ生きる活力というのが沸いてこないからね。彼には期待しているんだ。簡単に死なせてくれるなよ」
「……」
「必要なものはこちらから順次送る。報告書を欠かさないように。さてイリス、返事は?」
「……承知しました。……」
吐き捨てるようなイリスの声に、男は勝ち誇ったような吐息で返す。そしてタビトの視界から黒い革靴が消えると同時に、足音が遠ざかっていく。がちゃん、と玄関のドアが閉まる音がしてから、キッチンの入り口でイリスが呻いた。
「ああもう、……結局私が、……君を死なせるのか……」
涙の混じったイリスの声を最後に、タビトの視界は暗くなった。
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