ミコのお役目

水木 森山

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第一章

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二人がきちんと話さない限り
解放されるのは難しいだろう

だけど、僕に出来る事は何もない

助けてもらったのに、お礼も言ってないや…

「カミュ、疲れたか?」

こぼれそうになったため息を飲み込んだのに
シリルには目ざとく気づかれた

「ううん、何でもないよ」

気が緩んでしまったのか
ごまかす言葉がみつからず
つい、ヘラリと笑ってしまう

「・・何か隠し事か?」

「隠してる訳じゃ…」

「なら、言えるな?」

言ってもいいんだろうか…
ても、言ったら負担をかけないだろうか…

二つの思いが、頭の中でグルグル回る

「・・カミュ、吐きなさい」

見かねたシリルに言われてしまった

「大した事じゃないんだけど
 お礼を、言えなかったなって…」

「お礼?」

「うん、サラを助けてくれたりとか
 僕をかばってくれた事とか」

「あの二人にか…」

顎に手を当て考え始めたシリルに慌ててしまう

「あのっ、別に会いたいとかじゃなくて
 ただ、言う暇がなかったなってだけで…」

「会えるなら直接伝えたいのか?」

「いいの⁉︎」

すぐにハッとして、口を押さえる
シリルはいいとも悪いとも言っていなかった

これじゃあ、会いたいみたいじゃないか…!

もっと考えてから言えばよかったと後悔しても
もう、言葉は引っ込められない

じわじわと赤くなっていく頬を隠したくて俯いた

「最初から素直に言ってもいいんだぞ?」

そんな僕をバカにする訳でもなく
シリルは諭すように話しかける

「迷惑…かけたら、嫌だったから…」

だから、迷いながらも素直に伝えた

「二人は、取り調べを受けているんでしょう?
 だから、会うのは難しいと思ったんだ」

こういう時、シリルは最後まできちんと
話を聞いてくれる

僕がうまく話せなくても
根気強く、付き合ってくれる

だから、これ以上迷惑なんてかけたくないのに
僕はいつも、うまくできない…

いけない、考えちゃダメだ

これ以上、暗い顔はできないから
考える事を止める

「会う事は可能だな…」

思わぬ言葉に、パッと顔を上げた
だが、シリルは少し難しい顔をしている

今度は期待しないように
そう自分に言い聞かせながら、次の言葉を待つ

「カミュは、あの二人に恩を感じているのだろう?」

「う、うん」

助けてもらったんだから感謝するのは
当たり前だと思うけど、違うんだろうか?

なんだか不安になる

「さっきも言ったが、二人は取り調べを受けている
 当然、私達は厳しい態度で接している
 だから、カミュが感謝を伝えたとしても
 不快な思いをするかもしれない…

 それでも会いたいか?」

シリルの指摘に、迷いが生まれる

どうして森に入った経緯を話さないのか
話せない事情があるんだろうか

二人は本当に、悪い人じゃないのか…

わからない…
何もわからないから、余計に迷う

それなのにふと、"会いたい"と思った

「会えるなら、会いたい
 会って、直接お礼が言いたい」

シリルがわずかに目を見張る

ただ、そうしたかったから
勢いで言ってしまったけど
こんな理由で、会っていいのかな…

「そうか…
 なら、支度が整い次第行くか」

「えっ⁉︎」

「ロウ、カミュの支度を頼む」

指示に頷いたロウは、笑顔で僕を促す

まだっ、心の準備ができてないのに、もう⁉︎

頬を引きつらせてシリルを見るが
涼しい顔で冷めた紅茶を飲んでいる

ポンポンと肩をたたかれ、振り向けば
どこか困ったような表情のロウがいる

その顔を見れば、待ってと言えず
しぶしぶ立ち上がる

隣の寝室に戻り、ロウが用意してくれた服に袖を通す

こういう時は、僕の意見を聞いてくれないよね…

少し不貞腐れながら、身支度を整えた



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