ミコのお役目

水木 森山

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第一章

再会

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支度が整い、シリルに続いて部屋を出る

扉の外には、いつもはいない兵士が二人立っていた

敬礼してくれるけど
どうしたらいいのかわからない…

シリルは軽く頷いて通り過ぎるけど
僕には無理で、ヘラリと笑って通り過ぎた

な、何でいるんだろう…

ドキドキする心臓を宥めながら廊下を進むと
別の部屋の前にも兵士が二人、立っていた

その扉の前でシリルが止まる

ここに居るのかな?

こんなに近くにいたんだと驚くと同時に
だから兵士達がいるのかと納得もする

敬礼する兵士達に見向きもせずに
シリルは扉をノックした

コンコンコン ガチャ

えっ⁉︎
開けちゃった!

「入るぞ」

もう入ってるし‼︎

「出て行け
 話す事、無い」

お、怒ってる…

シリルらしくない行動に戸惑い
つい、ロウと顔を見合わせてしまう

へにょりと下がった眉を見て
僕も同じ顔をしているんだろうなぁと
どうでもいい事を考えてしまう

「安心しろ
 今回、用があるのは私ではない
 こちらの方だ」

えっ、ここで僕が出るの⁉︎
この雰囲気の中で⁉︎

振り向いたシリルに促されれば
前に出ない訳にもいかない

顔が引きつるのを抑えきれないまま
シリルの隣に並ぶ

「カミュ様より貴方達に、お話がある」

シリルが話している間、恐々、彼を伺う

窓辺に寄り掛かる彼は、十代中頃だろうか
小柄な子を腕に抱えている
その子は、室内なのに外套を羽織り
フードも被っていて顔も見えない

こちらを警戒しているからかな?

彼の方は見慣れない形の黒い服を着ている
ダークブロンドの短い髪につり上がり気味の目が
余計に怒りを湛えているように見える

そして、榛色の瞳に視線が吸い寄せられた

あれ、金色じゃなかったっけ?

「カミュ様、どうされました?」

シリルの声にはっとする
彼もこちらをじっと見ていた

しまった、ジロジロ見ちゃった!

「あのっ、サラを助けてくれてありがとう」

「・・幼子助ける、当然だ
 礼、要らぬ」

表情も動かさず、淡々と返され言葉に詰まる

「・・話、終わったか?」

「あとっ、洞窟で僕のこと、かばってくれたのに
 掴みかかったりして、ごめん…」

会って、お礼を言えればいいだけだった

なのに言ってみたら、何かが違う

だけど、何が違うのかわからなくて
だんだんと声が小さくなってしまう

「・・忘れた
 気にしない」

「あっ、名前教えて!」

このままじゃあ、会話が終わる
それは嫌で、思いついたことを食い気味に聞く

彼はこちらを見たまま、沈黙する

あ、名前って言ってわかるのかな?

「僕の名前はカミュ
 えっと、二人の事はなんて呼べばいい?」

伝わっただろうか

眉間にシワをよせたまま、反応がない

その間がなんだか辛くて
心臓がバクバクと音を立てる

「我はハル、此方ディー」

相変わらず抑揚がなくて感情は読めないけど
返事が返ってきてホッとする

だけど、ディーと紹介された子は
ハルの腕の中でピクリとも動かない

「あの、ディーは具合悪いの?
 あっ、ひょっとして魔力酔い⁉︎」

「マリョクヨイとは何だ?」

「えっと、怠かったり気持ち悪かったり
 酷いと熱がでたり目眩がするかな」

「・・無い」

「そっか、今より悪くなるようなら言ってね
 お医者さんを…」

「要らぬ」

淡々とした声だったけど、ぎゅっとディーを
抱きしめる姿に警戒心を感じた

「そっか…
 ごめん」

良かれと思って言ったけど拒絶されてしまい
肩を落とす

彼らにとって僕らは信用できない人間なんだった
シリルも言っていたのに、調子に乗ってしまった

「・・其方、熱有るのか?」

「えっ?」

誰の事かと考えていたら首に手を当てられた

そちらを見れば、シリルがわずかに顔を顰める

「気づかずに、申し訳ありません
 ロウ」

次の瞬間、ひょいっと抱っこされた
突然、高くなった視界に驚いたけど
こんな事をするのは一人しかいなくて

「ロウっ歩けるっ
 自分で歩けるからっ」

腕を突っ張って降りようとするけど
ロウはにっこりと笑うだけ

あ、これ何を言ってもダメなやつ…

ロウは軽く一礼すると、部屋を出た

同じ階だから、歩けるのに…

恥ずかしいし、情けない

なるべく身を縮めて、兵士達の視線から逃れようと
足掻いてみる

居室に戻り、ベッドに降ろされてようやく肩の力を抜く
ロウが用意した寝間着に着替えると
すぐにベッドに押し込まれた

横になった途端、ズシリと体が重く感じる
思ってたより、熱が上がっていたらしい

それだけ、話しかける事に
必死だったんだなぁ

ヒヤリと冷たい布が置かれ、目を開けると
心配そうな顔のロウが、そこにいる

いつもの光景

見慣れる程、繰り返されている事に
自嘲してしまう

ロウが僕の頭を撫でる

ここにいるよ、と
僕を安心させるために…

その手の温かさを感じながら、目を閉じた

体が休息を求めている様で、次第にウトウトしてくる

こんなに尽くしてくれるのに
僕は、ロウに何か返せるだろうか

いつも、世話になるばかりで
何も出来ない自分が情けない

優しくされて嬉しいのに、僕にはそんな資格なんて
ないから罪悪感が湧き上がる

微睡みながら、ぼんやりと考えるのは
心に決めた未来

僕はいつかロウを傷つける

それを知った時、ロウは僕を恨むだろうか…



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