30 / 47
第一章
企み
しおりを挟む一人になった部屋で、やっと考えられる
シリルの部屋で過ごすから、一人になるスキが
あまりなさそう
今晩は様子をみて、シリルとロウの行動を
覚えなきゃ
あとは、突発的な騒ぎが起きたら
うまく一人になれるように、何とかする
不確定要素ばかりで、いつ実行できるか
わからないのが辛いなぁ…
いざその時がきたら、迷わずに動けるだろうか
どうしても迷いが生まれる
ダメだ
これ以上、みんなの負担になりたくないなら
動くしかない
チクリ
手に痛みが走り、握る力を緩めた
守り石を強く握り過ぎて、手に痕が残ってしまった
今から力んでも、疲れるだけなのに…
自嘲の笑みがこぼれた
うまく隠さないと
シリルもロウも、長い付き合いだから
ちょっとした変化で気づかれてしまう
他の事を考えて誤魔化せるようにしなきゃ
心残りは、一つある
ロウとハル達が心置きなく、一緒にいられるように
なって欲しい
ディーがロウと距離を置こうとするのは
なぜだろう?
すぐに思いつくのは、ロウの父親を傷つけ
死なせてしまった事
この重たい事実がディーの心にしこりとなって
残っているのかもしれない
小さい時の話とはいえ、罪悪感があるだろう
だから、ロウに怒られると思っていた
だけど、ロウは怒らなかった
これで丸く収まるはずだったのに
全て自分達のせいだと言ってたのは
ロウの怒りを買おうとした…?
なんで?
ロウを怒らせたっていい事ないよね…
ない、はずだけど
ひょっとして、ディーは最初からロウの側に
いるつもりはなかった⁉︎
その可能性に気づいて愕然とする
「カミュ様?」
突然、声をかけられてビクッとなる
「申し訳ありません
難しい顔をしてらっしゃったものですから
どうしたのかと…」
そんな顔してたんだ…
ロウが近くに来てたのに気づかないくらい
考え込んでしまっていたらしい
動揺を悟られないように、不自然にもならないよう
言葉を選ぶ
「ちょっと、ディーの態度が気になってて…」
少し驚いた顔をした後、ロウは口元に
笑みを浮かべた
「ディー達は、山を下りて良かったの
かもしれませんね
カミュ様に、出会えましたから」
「僕に?」
そう言われる理由がわからず、首を傾げた
そんな僕を見て、ロウがふふっと笑う
その笑いがふっと陰を帯びた
「私の話を聞いていただけますか?」
「・・うん」
ベッドの脇のイスに座ると、ロウは静かに
話し始めた
「私は、父と母の三人で暮らしていました
生真面目でしたが愛情深い父と
明るくてしっかり者の母との穏やかな
日々でした」
昔を懐かしむロウの穏やかな表情を眺めながら
黙って耳を傾ける
「私が四歳の時でした
生まれたばかりのディーが我が家に来たのは
叔母が体調を崩し、面倒を見れないと
預けられたんです
一族の中で一番年下だった私は、赤ん坊が
来たのが嬉しくて、母にくっついて
眺めてました」
それからは、賑やかになったと言う
ディーが笑ったとか、寝返りを打ったとか
小さな変化に大騒ぎしたと
「その二年後には、ハルも来たんです」
ん?
ちょっと引っかかったけど、口を挟まず
続きを待つ
「ハルが来てからは、さらに賑やかになりました
泣く度に、物が壊れましたから」
「え…」
「一族では、時折り生まれるそうです
強い力を持った子が
ですから、母は困った子だと言いながらも
笑って面倒を見ていました
そういう子は、溜め込ませない方が良いと
父は率先して、泣いて暴走するハルの面倒を
見ていました
発散させつつ、怪我をしないように
つきっきりであやしたりしていたんです」
仲のいい、家族なんだろうな
穏やかで優しいロウの両親だから
そう、思える
「ディーとくっついているとハルの機嫌が良いので
母は重宝していましたね」
「その時から、ハルはハルだったんだね…」
つい、しみじみと口を挟んでしまった
「ふふふ、そうですね
ですが、幼な子が赤子を抱っこ出来るはずもなく
ディーがハルに潰されていたので、ディーを
私が支えるという事がしょっちゅうありました
それを見た両親が、また笑って…」
また、ロウの顔に陰が帯びる
「一族の集まりにハル達も一緒に参加していました
誰もハル達を恐る事なく受け入れていたんです
宴で力が暴走しても、将来有望だと皆んな笑って
赤子のハルを抱っこしたがりました
例え、生みの親の愛情を受けられなくても
一族で幸せに暮らしていけるはずだったんです
あの日の事が起きなければ…」
ロウの表情が、苦しそうに歪む
「父が何故、叔母を刺したのか
理由はわかりません…
ですが、一度だけ聞かれた事があるんです
ハルが怖くないか、と」
耐えきれない、とばかりにロウは両手で顔を覆った
「私の所為かもしれませんっ
ハルの力は日に日に強くなっていました
いつか、私が傷つけられると恐れたせいで
父は、ハルをっ狙ったのかもしれません
叔母はそんな父を止めようとしてっ」
ロウは、高ぶった気持ちを抑えるように
深く息を吐き出す
「ディーは自分の所為だと言っていましたが
ハルが狙われた事を隠したいのかもしれません
私にも、ハルにも…」
想像でしかないけれど、筋は通っている
ディーが二人に自分を責めてほしくなくて
悪者になっているんだとしたら、なんて優しくて
悲しい想いなんだろう
胸がじくじくと痛む
「カミュ様を悲しませてしまい
申し訳ありません…」
ただ、首を振る
そのせいで、溜まっていた涙が
ポロポロとこぼれてしまった
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
青天の霹靂ってこれじゃない?
浦 かすみ
恋愛
贅沢三昧でとんでもない王妃だった私、国王陛下の(旦那)から三行半を突き付けられた!
その言葉で私は過去を思い出した。
第二王妃からざまぁを受ける羽目になった私だが、おや待てよ?
それって第一王妃の仕事もうやらなくていいの?
自分磨きに独り立ちの為に有効使わせてもらいましょう!
★不定期更新です
中盤以降恋愛方面の話を入れていく予定です。
誤字脱字等、お見苦しくてすみません。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
【完結】一番腹黒いのはだあれ?
やまぐちこはる
恋愛
■□■
貧しいコイント子爵家のソンドールは、貴族学院には進学せず、騎士学校に通って若くして正騎士となった有望株である。
三歳でコイント家に養子に来たソンドールの生家はパートルム公爵家。
しかし、関わりを持たずに生きてきたため、自分が公爵家生まれだったことなどすっかり忘れていた。
ある日、実の父がソンドールに会いに来て、自分の出自を改めて知り、勝手なことを言う実父に憤りながらも、生家の騒動に巻き込まれていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる