ミコのお役目

水木 森山

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第一章

企み…?

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何か言わなくちゃいけないのかもしれないけど
言葉が浮かんでは消えていく

ロウにかける言葉が、わからない

ロウも何も言わないから、言いたい事は
言えたのかな

ちょっと前までは、ロウの声が出なかったから
沈黙なんて当たり前だった

だけど、今はそれじゃいけない気がした

隣に座ってほしくて、ポンポンとベッドを叩く

戸惑った表情をしたけれど、ロウは腰を上げた

「・・失礼します」

少し距離をあけて座ったロウに近づき
抱きつくようによりかかった

「ハルに泣いてる姿を見られたら
 また、干からびるって言われちゃうね」

「では、果実水をお持ちしますね」

「うん、今日は甘いのがいい
 でも、もう少しこのままでいて」

「仰せのままに」

背に回された手がぽん、ぽんと僕をあやす

傷ついてるのは、ロウの方なのに
僕が泣いてるせいで、気を遣わせてしまっている

どうしたら、この優しい人の憂いを
取り除けるのだろうか



気がつけば、ベッドで横になっていた

あの後、どうやら寝てしまったらしい

泣いて、寝て、泣いて、寝て…

最近、それしかしてない気がしてきた

何やってんだろう、僕…

いたたまれなくなって、頭からふとんをかぶる

「カミュ様?
 お目覚めですか?
 どうしました?」

「・・自分の寝汚なさに、落ち込んでるだけ…」

「ハルも言っていたではありませんか
 今はお体を休める時なんですよ、きっと…
 お約束の果実水をお持ちしますね」

「うん」

さすがに顔を出して返事をすると、ロウは微笑み
僕の頭を一撫でしてから部屋を出た

ふと、窓の外を見る
日が傾いていて、暗くなり始めていた

ちょっと前まで、時間をどう潰すか悩んでいたのに
今日は、いや、昨日からか
一日があっという間に過ぎていく

ハル達が来てから、いろんな事が起きた

明日は、いつもの一日に戻るのだろうか

徐々に暗くなっていく空をぼんやりと眺める

いつもより寂しく感じるのは
気のせい、だよね…

つい、ため息がこぼれる

これから、どうしよう

ディーの事、ロウの事、僕自身の事

どれから考えればいいのかわからず、途方に暮れる

僕が出ていけば丸く収まると思ってたのに
ディーも出ていくつもりかもしれない

止められるだろうか
どうやって?
本当に出て行くつもりなの?

何もわからない

けど、一つだけわかっている事は ある

ふとんから両腕を出す

袖から覗く腕は枯れ枝の様に細い

次に魔力暴走を起こしたら、きっとこの体は
耐えられない

そうなる前に、ここを出て行かないといけない

それだけは わかる

ー タスケテ ー

誰も巻き込まない様に、うまくやらなきゃ

そう、自分に言い聞かせる

ー ダレカ タスケテ ー


「お待たせしました」

そう言って持ってきてくれた果実水は乾いた喉に
とてもおいしくて、鬱々としていた気持ちが
少し浮上する

「夕食の前ですから、一杯だけですよ」

「はぁい」

もう一杯と言おうと思ったのに…

しょぼくれる僕の頭を撫でるロウは
いつもと変わらない笑みで

だけど、その笑顔の下にどんな想いを
抱えているのだろうか

「ロウは…」

僕がいなくなった後、どうするの?

そんな事聞ける訳ないのに
なぜ呼んでしまったんだろう

「・・ディーと話すの、辛くない?」

咄嗟に話題を変える

「申し訳ありません…
 先程の話で、お気を遣わせてしまいましたね」

へにょりと下がってしまった眉に、余計な事を
言ってしまったと申し訳なくなる

「ううん、聞けてよかったよ
 ロウの事知れたし、ディー達とももっと…」

仲良くなりたくなったと言えば
また気を遣わせてしまう

「たくさん話したくなったかな」

うまく、誤魔化されてくれるだろうか

「・・私も、カミュ様を見習って話をしようと
 思います」

どこか寂しそうに笑うロウは、何を思っている
のだろうか

でも、僕にできるのは言葉をかける事だけ

「無理、しないでね」

「辛くなったら、カミュ様を見て癒されます」

ふふっと笑ったロウに目を瞬かせてしまう

「僕に、そんな効果ないと思うけど…」

むしろ、ロウの方が僕を癒してくれていると思う

「効果抜群ですよ?」

持ち上げすぎじゃないかな…

「ロウの方が癒されると思う
 なんか、紅茶の葉っぱ?みたいな
 いい匂いがする」

「いつも淹れてるからでしょうか?」

自分の袖を嗅ぎながら、ロウは首を傾げている

「ふふっ」

なんかおかしい

ロウと目が合うと、今度は二人でくすくすと
笑い始めた

こんなふうに穏やかな時間を過ごして欲しい

そのためにも、ロウの側にはやっぱりあの二人に
いて欲しいな


寝室で軽く夕食を食べ、ロウに下がってもらう

一人になった部屋で考える

明日、ディー達と何を話せばいいんだろう

今後どうするつもりなのか聞きたいけど
聞くのはちょっと怖い

ロウと再開した後は考えてなかったって言ってた
から決まるまでロウと暮らすのはどうだろう

あ、これなら何とかなる?

でも、なんて切り出せばいいんだろう…

どうすれば、不自然じゃないかな

「まだ寝てなかったのか」

扉から現れたシリルを見て思い出した

今日から一緒の部屋だった…












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