Non Piangere

針野えんじゅ

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第六章 始動

囁き

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 シュレアと帰城し、自室に戻ると、一人になった影響か、また沸々と胸の奥から黒い感情がこみ上げてきた。ジルティアに相談しようかと思ったが、どうやら体調が優れないらしく、面会できないそうだ。
 悲しみ、妬み、怒り、戸惑い、いろんな負の感情が胸の中でうずまき、涙が溢れ出る。感情をどこに持っていけばいいのか分からず、ただただ涙だけが床に吸い込まれていく。
 泣いているうちに、段々と睡魔が忍び寄り、ベッドに腰掛けるとそのままパタリと眠りに落ちた。

 「やあ、久しぶり」
 気がつけば、真っ白い空間。床も天井も壁もその境目がわからないような空間に目眩がする。リウの前に一つの人影。少年のような声、短い丈のスカート、顔半分を覆い隠した黄緑色の前髪。状況を理解出来ず目の前の人物をただただ凝視していると、その沈黙を破るように声が聞こえる。
 「あれ、もしかして覚えてないかな。それとも、はじめまして、だったかな?」
 はじめまして、と言い切るにはどこかで会ったような気もするし、しかし、久しぶり、と言うには会った確証が持てない。リウが黙っていると目の前の人物は続ける。
 「はじめましてなら自己紹介しなきゃね!僕はラヴィ、気軽にラヴィ様と呼んでよ」
 ラヴィは名乗るとリウを置いてペラペラと話し続ける。
 「失恋しちゃったんだって?」
 ラヴィのその言葉にリウはようやく話に意識が向いた。
 「ねえ、彼女が憎い?」
 その一言は呪詛のように心臓を突き刺した。ドクドクと鼓動が早まるのがわかる。
 「彼女がいなければ、きっと彼は君のもの」
 呼吸がだんだんと浅くなり、徐々に思考が纏まらなくなる。そうだ、彼女さえいなければ、ミヤは。
 「彼を取り戻したい?」
 その問に頭で考えるより先に口から答えは出ていた。
 「取り戻したい…ミヤを取り戻したい…!」
 「よく言った!」
 ラヴィがパンっと手を叩くとどこからか沢山の花が舞い降りてくる。そのうちの一輪をラヴィが掴むとそれをリウに手渡した。それは以前、ナナが毒薬に使うと言っていた黄色い花。
 「綺麗な花だよね、これ。これがヒントだ。後はどうすればいいか…わかるね?」
 視界が徐々に歪み始め、ラヴィの姿や舞い散る黄色い花がぼんやりと霞んでいく。意識が途切れる瞬間、
 「ああ、頼むなら、妹がいい。彼女は優しいから」
 そうラヴィの口が言葉を紡いで、意識は途切れた。

 目が覚めたリウの手には1輪の黄色い小さな花。リウはそれを大切に握るとシュレアを呼び出し、彼女をここへ呼ぶようにと、命令を下した。
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