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第七章 散りゆく
小鳥の意思
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ドアをノックして入ってきたハナを、リウは笑顔で迎え入れた。
「初めまして、ハナと申します。お会いできて光栄です」
ハナはお辞儀した際顔に掛かった綺麗な髪を耳に掛けながら微笑む。それを見て、リウは1歩1歩とハナに近づいていく。
「初めまして、本当に綺麗な髪だね。青い、カナリヤだっけ?」
「……よくご存知で」
「ふふ、ミヤに聞いたの。さ、少し場所を移そうか。庭に綺麗な花が咲いたの。丁度朝方に見るのが一番綺麗なの」
ハナにそう告げて、自分はさっさと歩き出す。不思議とあの時感じたモヤモヤはない。けれど、心の芯に根付く殺意が、庭に向かうリウの足を早くさせる。心臓はうるさいくらいに高鳴る。
庭につくと、見せたかった花が丁度開いた所だった。
「綺麗でしょう、でもね、一度花開くと、その次の日には枯れちゃうの」
「そうなのですか…。それは、美しいだけに、名残惜しいですね」
「ね、朝食は済ませた?まだなら、ここで一緒にどう?」
そういいながら、近くの広場にテーブルを用意させる。シュレアがやって来て、温かい紅茶を入れてくれた。
シュレアを下がらせ、ハナが庭を見て回ってるうちに、ハチに調合させた毒薬を入れようと取り出す。すると、後ろから、怒った風でも、悲しそうな風でもない、いたって普通の声で、
「私を殺すつもりでしょう?」
そう問いかけられた。
「え?」
戸惑って、慌てて、手をすべらせた。
チャポンという音と共に、錠剤が紅茶の中に沈んでいくのが見えた。じわじわと溶けだし、それは一瞬にして消えてしまった。あとは、この紅茶を飲ませれば終わり。そのはずなのに。彼女は、ハナは今、なんて言った?
「ですから、私を殺すつもりでしょう?ハチさんに作らせた、その、毒で」
バレている。ハチが喋ってしまったのか。彼女は決して周りを巻き込もうとしたくないはずだからと、口外はしないと踏んでいたのに。
どこか、意識の遠くで、
「まずいな」
そうつぶやく声が聞こえた。その瞬間、近くでパンッと小さな破裂音が聞こえて、リウは今、自分が何をしようとしていたかを認識した。
「私は、わたし、が…」
"ハナさんを、殺す"?
目の前の生きた人間を、殺めてしまおう。そう考えていたことに全身の血の気が引く。思考がまとまらない。
リウの異変を感じて、ハナはすっと目を細め、言葉を紡ぎ出す。
「毒を入れたのがどれかは分かりませんが…あとは私がそれを口にすれば、晴れて彼はあなたのもの、そういう算段でしょう?」
ミヤが、私の…それは確かに願ってもいないこと。けれど、そのために人を殺めるだなんて。
「そ、んなわけないでしょ」
思考はまとまらないが、この朝食会は今すぐ中止しなければ。リウはそのために途切れ途切れに会話を続ける。
「ごめんね、ちょっと、その、気分が優れないから、今日は帰って」
シュレアを呼ぼうと、近くにあったベルに手を伸ばす。しかし、その手がベルを握ることはなく、手首をハナの手が掴んでいた。
「どういうつもりか知らないけど…」
ハナはそう言って、空いている方の手で毒が入ってしまった方のティーカップを手に取った。
「私はここで死なないといけないの」
そう告げて、ティーカップの中身を一気に飲み込んだ。その瞬間、体に力が入らなくなったのか、ハナは倒れ込んだ。リウの手は解放され、ティーカップは地面に吸い込まれるように落ちる。
ティーカップの割れる音が、早朝の静かな城の庭に響き、ハナは息を引き取った。倒れ込んだ彼女のカーディガンのポケットからは、ハチが渡した解毒剤が滑り落ちた。
「初めまして、ハナと申します。お会いできて光栄です」
ハナはお辞儀した際顔に掛かった綺麗な髪を耳に掛けながら微笑む。それを見て、リウは1歩1歩とハナに近づいていく。
「初めまして、本当に綺麗な髪だね。青い、カナリヤだっけ?」
「……よくご存知で」
「ふふ、ミヤに聞いたの。さ、少し場所を移そうか。庭に綺麗な花が咲いたの。丁度朝方に見るのが一番綺麗なの」
ハナにそう告げて、自分はさっさと歩き出す。不思議とあの時感じたモヤモヤはない。けれど、心の芯に根付く殺意が、庭に向かうリウの足を早くさせる。心臓はうるさいくらいに高鳴る。
庭につくと、見せたかった花が丁度開いた所だった。
「綺麗でしょう、でもね、一度花開くと、その次の日には枯れちゃうの」
「そうなのですか…。それは、美しいだけに、名残惜しいですね」
「ね、朝食は済ませた?まだなら、ここで一緒にどう?」
そういいながら、近くの広場にテーブルを用意させる。シュレアがやって来て、温かい紅茶を入れてくれた。
シュレアを下がらせ、ハナが庭を見て回ってるうちに、ハチに調合させた毒薬を入れようと取り出す。すると、後ろから、怒った風でも、悲しそうな風でもない、いたって普通の声で、
「私を殺すつもりでしょう?」
そう問いかけられた。
「え?」
戸惑って、慌てて、手をすべらせた。
チャポンという音と共に、錠剤が紅茶の中に沈んでいくのが見えた。じわじわと溶けだし、それは一瞬にして消えてしまった。あとは、この紅茶を飲ませれば終わり。そのはずなのに。彼女は、ハナは今、なんて言った?
「ですから、私を殺すつもりでしょう?ハチさんに作らせた、その、毒で」
バレている。ハチが喋ってしまったのか。彼女は決して周りを巻き込もうとしたくないはずだからと、口外はしないと踏んでいたのに。
どこか、意識の遠くで、
「まずいな」
そうつぶやく声が聞こえた。その瞬間、近くでパンッと小さな破裂音が聞こえて、リウは今、自分が何をしようとしていたかを認識した。
「私は、わたし、が…」
"ハナさんを、殺す"?
目の前の生きた人間を、殺めてしまおう。そう考えていたことに全身の血の気が引く。思考がまとまらない。
リウの異変を感じて、ハナはすっと目を細め、言葉を紡ぎ出す。
「毒を入れたのがどれかは分かりませんが…あとは私がそれを口にすれば、晴れて彼はあなたのもの、そういう算段でしょう?」
ミヤが、私の…それは確かに願ってもいないこと。けれど、そのために人を殺めるだなんて。
「そ、んなわけないでしょ」
思考はまとまらないが、この朝食会は今すぐ中止しなければ。リウはそのために途切れ途切れに会話を続ける。
「ごめんね、ちょっと、その、気分が優れないから、今日は帰って」
シュレアを呼ぼうと、近くにあったベルに手を伸ばす。しかし、その手がベルを握ることはなく、手首をハナの手が掴んでいた。
「どういうつもりか知らないけど…」
ハナはそう言って、空いている方の手で毒が入ってしまった方のティーカップを手に取った。
「私はここで死なないといけないの」
そう告げて、ティーカップの中身を一気に飲み込んだ。その瞬間、体に力が入らなくなったのか、ハナは倒れ込んだ。リウの手は解放され、ティーカップは地面に吸い込まれるように落ちる。
ティーカップの割れる音が、早朝の静かな城の庭に響き、ハナは息を引き取った。倒れ込んだ彼女のカーディガンのポケットからは、ハチが渡した解毒剤が滑り落ちた。
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