Non Piangere

針野えんじゅ

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第八章 交錯

城下の意思

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 ハナが死んだ翌日、彼女の死は、瞬く間に城下に広まっていた。青いカナリヤが死んでしまったと城下の人々は嘆き悲しみ、そしてそれは、1人の薬売りの青年の一声で、怒りへと変わり、その矛先は姫、リウへと向いた。

 「彼女は、姫に殺された!」

 一方城では、この事態をどう処理するべきか大騒ぎとなり、使用人や兵たちはバタバタと忙しなく動き回っていた。
 今回の中心人物であるリウを除いて。
 リウは自室に1人、ドアには外から鍵が掛けられ、閉じ込められていた。地下牢にいれられないのは、庭師の目撃証言があったからである。
 ハナが死んだ日、庭師レリィは、庭に入ってはいけないと言われていたことを知らず、その場におり、"ハナがリウから紅茶を奪い自ら飲んだ後、崩れ落ちるように倒れた"と証言したのだ。
 姫であること、その庭師の証言があることにより、リウは自室にて一時謹慎という形で、部屋にいることになった。
 ただし、シュレアをはじめ、誰とも面会することは許されず、ただひとり、目の前で人間が死んだという事実、それを引き起こした発端が自分にあるという後悔に悩まされていた。

 その頃、王の間も例に漏れることなく、慌ただしく人が動き回っていた。そこにまた、一人の兵士がバタバタと走って入室してきた。そして、王、ネーテの前に跪くと報告を始める。
 「王よ、姫に面会を希望する者がおります!なんでも、自分は城下の人間の代表であると!」
 「リウは面会できない。追い返して…」
 「それは無いんじゃないの、王様」
 王が支持をだそうとした時、王の間の入口に髪の長い青年が立っていた。ナナだ。
 「お久しぶりです、王様。少し痩せましたか」
 「ナナくんか…そういえば、君は毒を作るのが上手だったはず…君が毒を作って彼女の飲むカップに入れたんじゃないのか」
 ネーテはナナに詰め寄り、ああ、それとも、と付け足して
 「本当は彼女じゃなく、リウを殺すつもりだったかな」
 怒気が混じったその声は、普段の温厚な性格で有名なネーテのものだとは思えないほど、とげとげしく、ナナを声だけで刺殺してしまいそうなくらいであった。
 しかしナナはそれに怯まず、むしろ、真っ直ぐにネーテを見て、口を開いた。
 「確かにあの毒は、俺の技術で作られたものだ。ただし、俺ではなく、作ったのはハチだ」
 「ならば、ハチくんが」
 「話は最後まで聞けよおっさん」
 ナナの声は静かな、しかし、確かな攻撃性を帯びていた。ネーテを抑えると、また口を開く。
 「ハチは、一昨日、姫さんに呼び出されていた。帰ってきてからは自分の部屋に閉じこもって何かを熱心に作って、昨日の朝早く、日が登る前にそれをどこかへ持っていこうとしていた」
 ネーテはナナの口から紡がれる言葉を信じられないという風な表情で聞く。
 「何を作っていたのか気になって、あいつの部屋で調合したままになってた薬研に残った成分を調べた。恐らく、解毒剤だ。ハナが飲んだ毒の」
 そこまで言って、ナナは一瞬、口を閉じた。その隙にまたネーテが話し出す。
 「リウに呼び出されていた?それが何か関係があるとでも言うのかい?城に来てたのなら、毒を仕込むチャンスもあった訳だけれど」
 「それは無い。そもそも毒を仕込んで殺すつもりだったなら、なんで解毒剤を作る必要があるんだよ」
 「そう思わせておく作戦だったとしたら?」
 ハチが犯人であると思い込みたいネーテはナナに質問をぶつけ続ける。しかし、ナナはそれを一つ一つ答え論破していく。
 「それも、無い。あの毒は錠剤だ。仕込むには紅茶に溶かすことが必要だった。それをどうして前日に仕込むことができる?しかもそれはハナが死んだ日、そこに用意された机の上から残りの錠剤が発見された。つまり、」
 ナナは一呼吸置いて、ネーテに伝える。
 「毒をカップに入れたのは、姫さんだ。城下の者は、姫さんの処刑を望んでいる」
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