1×1

=6

　ライアとヴィルは15歳になりました。ライアは美しい少女に、ヴィルは力ある少年に成長し、老夫婦と助け合いながら暮らしておりました。
　｢誕生日おめでとう、ライア、ヴィル｣
　｢おじいさん、おばあさん、ありがとう｣
　女神様がふたりを授けてくださった日をふたりの誕生日だと祝うことにしてもう15回め。老夫婦はその度にささやかなお祝いをしてくれました。
　突然家の戸がドンドンドン！と強く叩かれました。何事かと、おじいさんが戸を開けるとそこには大きな家に住む男の姿がありました。
　｢俺がお前達にやった赤ん坊を返せ！｣
　そう言って、無遠慮に家の中に入ってくるとライアとヴィルを交互に眺めて舌なめずり。
　そして、ライアの腕をつかむと
　｢さあ、帰るぞ｣
　そう言い、引っ張って連れていこうとしましたが、その男の腕にヴィルが噛みつき、男はぎゃあと短い悲鳴をあげ、ライアの手を離しました。
　｢ええい、鬱陶しい！俺は預けていた自分のものを返してもらいに来ただけだ！｣
　｢そ、それはあまりにも身勝手な話ではありませんか…！｣
　おじいさんが言うと、おばあさんはライアを抱きしめます。ヴィルがもう1度男に噛み付いてやろうと構えると、男は忌々しげに睨みつけました。
　｢ライアは絶対に渡さない！｣
　｢このガキ…ならお前を連れて帰り、ボロボロになるまで働かせてやる！｣
　男は顔を真っ赤にして怒り、ヴィルの頬を一発殴るとよろけるのを、前髪を引っ張って止めたかと思うとそのまま髪を引っ張り半ば引き摺るように連れ去ろうとします。
　「ヴィル！」
　ライアが手を伸ばすもその手は空を切り、おじいさんが止めようと腕を掴むと、その腕をぶんと振り回し、おじいさんは吹き飛ばされてしまいました。吹き飛ばされたおじいさんはライアにぶつかり、ライアを抱きしめていたおばあさん共々倒れ込んでましまいます。倒れた際に頭を打ったおじいさんは意識を失い、その下敷きになった2人は動けません。
　そうしている間にも、ヴィルはおじいさんたちのもとを離れていきました。
　「おじいさん！おばあさん！ライア！」
　「ヴィル、まって、連れて行かないで！！ヴィルーーーーーっ」

　おじいさんの意識が戻ったのは、ヴィルが連れ去られ、騒ぎに気づいた村の人間がやって来てからでした。