1×1

針野えんじゅ

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 ライアは何度も目を擦りました。ヴィルが目の前にいるのです。最後に見た姿は15歳。背丈もあまり変わらなかったのに、今、目の前にいるヴィルは身長が伸び、体格も以前より男の人らしくなっており、一瞬、見間違えるほどでしたが、けれど、あの青い髪は、間違いなくヴィルのものでした。驚いてこちらを振り返るヴィルの顔は当時の面影を残し、髪とおなじ綺麗な青色の瞳が揺らいでおりました。
 二人の間に会話はありませんでした。ただ、引き合わされるように自然と歩み寄り、指を絡めあいます。
 長いような短い時間、2人は抱き合いながら、お互いの鼓動を聞きました。トク、トク、と脈打つ鼓動は次第に混ざりあって、どちらのものか分からなくなりました。
 2人は目を合わせると手を繋いだまま、男の屋敷へと向かいました。

 屋敷につくと、川へ向かったっきり、なかぬか戻ってこないヴィルを待ち構えた男が玄関に立ち塞がって言います。
 「遅かったな!待ちくたびれたぞ!どこで道草食ってたんだ!…と、おや?お前は…」
 男が視界にライアを捉えます。ライアは男を睨みつけながら、ヴィルの手をぎゅっと握り直しました。すると、男はそれが気に入らなかったのか、ヴィルを無理やりライアから引き剥がし、自分の後ろへと追いやり、ライアを頭から足先までじっとりと舐めるように見ました。
 「お前は、ライアと言ったか。俺のモノになりに来たか?それなら存分に可愛がってやる」
 そう言って、男がライアに手を伸ばした瞬間、男の脇腹にちくりとした痛みが走りました。なんだなんだと男が痛む場所を見ると、ヴィルが男の脇腹に小さなナイフを突き立てておりました。
 「ふん、この程度で俺に勝ったつもりか」
 男はそう言って、ヴィルを軽くつまみ上げるとぶん、と放り投げました。
 その時です。ヴィルが壁にぶつかるのが早いか、男が膝をつくのが早いか、男は糸が切れたように崩れ落ちました。
 「こんなナイフでお前に勝とうとは思わない」
 そう言ってヴィルはフラフラと立ち上がります。ライアはヴィルを支えながら、2人で、倒れ込む男の元へ。
 「これは…あの花か」
 「そうよ、よく覚えていたわね」
 男は力の入らない体で立ち上がることは諦め、床に突っ伏したまま話しました。
 「お前と、おじいさんたちの家に咲いた2輪だけの花。あの花の名前は知ってるか?」
 「名前…そういえば…調べもしなかった…」
 「あれはね、ヤソミリの花って言うの」
 「ヤソミリ…」
  男は繰り返しましたが、名前に覚えはありません。
 「ヤソミリの花はね、毒になるの。すり潰して、水で伸ばして、このナイフの先に塗った。あとは…」
 「俺に刺せば、終わり」
 「大正解」
 ライアは男に弾き飛ばされたナイフを拾い、ヴィルはそれに自分の手を重ねました。
 「さあ、トドメを」
 2人は男の喉元にナイフを突き立て、引き裂きました。
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