1×1

針野えんじゅ

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 家を出た2人は森の奥深くにある小屋に住んでおりました。そこは昔、魔女が住んでいたとされる小屋で、人は近付こうとしない為隠れて過ごすには丁度いい場所でした。
 「おはよう、ヴィル」
 「ライア、おはよう」
 2人だけの生活は静かで、穏やかでした。平和な毎日を過ごしていましたが、ふたりの心の奥には、村に残してきたおじいさん、おばあさんのことがずっと引っかかっていました。
 誰が男を殺したかなど、すぐに分かってしまうことです。あの男の権力はどれほどの威力を持つものかは、2人には分かりませんでしたが、それでも、繋がりがあったという大きな街から何かしらの罰が下っていたとしたら。
 2人は最悪の結末を想像しては、その結末を目の当たりにする勇気もなく、毎日、一日の始まりと終わりにお祈りをすることしか出来ませんでした。
 そんなある日のことです。それはちょうど家を出て3年の月日が流れ、2人が20歳になった日のことでした。
 「おじいさんたちに会いに行こう」
 ヴィルがそう提案したのです。
 ですが、今までにだって、こんな提案はありました。しかし、その度に最悪の結果に震え、行けずじまいになるのです。
 「でも…怖い…」
 ライアは泣きそうな顔でヴィルを見ました。いつもならここでヴィルも心が折れてしまうのですが、今回は違いました。
 「それでいつまで逃げててどうするんだ!」
 ヴィルはライアの両肩を掴み言いました。ライアはいつもと違うヴィルに戸惑いを隠せませんでした。
 「おじいさんたちに何かあったら、それは僕達のせいだ。僕達が逃げたから、今まで見ないふりをしたからだ」
 ライアは自分の肩を掴むヴィルの手が震えていることに気がつきました。
 「僕達は行かなきゃいけない。それに、あの頃みたいな子どもでもない。大丈夫、きっとどうにかなる。僕達は女神の子だよ」
 「…できるかな」
 「大丈夫」
 「もし、おじいさんたちが」
 「最悪の結果は考えちゃダメだよ」
 いつの間にか、ヴィルの震えは止まり、ライアの目も力強く輝いておりました。
 「道は」
 「大丈夫、覚えてる。それより、道中必要な食料は」
 「大丈夫だよ、蓄えなら沢山ある」
 そうと決まれば2人で早々と支度を始め、夜が空ける頃、2人はしばらく住んだ家にお別れを告げて、元来た道を辿り始めました。
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