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第二章 ベルリン ベル スロット
ベルリン ベルスロット 3
しおりを挟む「勿論です。 ベル様」
シャルは私の目を真っ直ぐに見据えて、大きく頷いて答えた。
「私の能力のもう一つは召喚。 この世界に生きていた者であれば強制的に今、この場所へと召喚する事が可能なのです」
一回整理したの事で、その突拍子もない話にも私は落ち着いたまま聞く事ができ、そのままシャルに幾つかの疑問をぶつけた。
「それがシャルのもう一つの能力なのね?? 確かに今の私達にとってはまさに希望が出来る一手ではあるわねぇ。 だけど……そんな凄い能力なのだから勿論デメリットもあるのでしょう??」
まず何より聞きたかったのはこれだ。
能力が万能なものじゃない事くらいは私と知っている。
シャルの能力がもし本物なら、他者を巻き込む程の強力な物だ。 ともすれば条件は厳しいものなり、使用するシャルにも大きな負担がある筈なのだから。
「……シャルの負担は特に問題ありませんよ。 召喚するには自身の寿命を支払わなければなりませんが、シャルは同時に不老能力を持っていますからね」
シャルは笑顔で答えた。 だけどその笑顔は私には少し痛々しく見える。
「ですが……それとは別の問題はあります」
「別の問題??」
「はい。 問題はその方がベル様にとって重要な人物になるかどうかがわからないという事です。 そしてもう一つこちらの方が大きな問題点なのですが、歴史に刻まれる様な特別な者達、言わばベル様の先祖に当たるソフィア様やそれを手助けしていた者達を蘇らせる事は不可能なのです。
同時に千年前の大戦の英雄達や私の兄であるアステル様と言った者達は世界に影響を与え過ぎていますのであの方々を現代にお呼びするのもシャルの力では不可能ですね」
シャルは申し訳なさそうに耳を垂れ下げた。
「まぁそう言った条件はあるとは思っていたけど……。
シャル、出来るかどうかを度外視して考えてみたけど、その条件はかなり厳しいんじゃないかしら??」
「ど、どうしてでしょうか??」
落ち込むシャルに私は自分の考えを伝える。
「ちる様が生まれてからもうすぐ二千年になる。 だけどちる様が私達、いえこの世界に存在を知らしめその姿を初めて公の場に晒したのは千年前の大戦の時だわ。
それから今まで様々な能力者がこの世界を少しずつ変えてきたけど、そういった者達には協力は求められないって事でしょ?」
「……そうなりますね」
「シャルの提案は魅力的だけど、相手はあのユーノよ?? あれの強さは尋常じゃ無いわ、貴方のお兄さん並みよ。 そんなユーノに対抗できる者なんて限られているし、その限られた者達は大抵世界に多大なる影響を与えてきたんじゃ無いかしら??」
「た、確かにそうかも知れません」
がっくりと項垂れるシャルを見て、少し言い方がキツかったかもと反省し、まう一度深呼吸をして、ゆっくりとシャルに尋ねた。
「……もう一つの問題点の私にとって重要な人物になるかどうかわからないと言うのはどういう意味なの?」
「そ、それは……私が召喚した者が私達の味方になってくれる保証は一つもないと言う事です」
「どういう事??」
「私の能力では召喚は出来てもその後の行動を縛る事が出来ないです。
誰かを指定して呼べるわけでも無く、ただちる様に関心が強い者を召喚する事しか出来ません。 ですから最悪の場合ちる様に悪意や恨みを持った者を呼んでしまう可能性もあると言う事です」
シャルは言葉を区切り苦笑いを浮かべて続ける。
「はは、すいません。 いざ言葉にして言ってみたら全然良い案じゃないですね。 まるで運試し。
条件が厳しいですよね……ちる様に好意を持っていて、ベル様に協力してくれて尚且つユーノに負けないくらいに強い。
最初の条件は当てはまる事はあっても、当の本人は自分の世界からこの世界まで無理矢理召喚されるんです。 きっとシャルに良い感情を持つ事は無いでしょうから、ベル様に協力してくれる可能性も低くなるでしょう。
そして何より最後のが絶望的ですね。 ベル様の仰る通り相手はあのユーノですもんね。 ユーノに負けない程の強さ、これはまず有り得ないでしょう。
先程ベル様は私の兄、アステル兄様とユーノは互角くらいだと言ってくださいましたが恐らく兄様でも敵わないでしょう。
ユーノ一人ならまだしも、他にもあのの軍には強者がいっぱいいますからね。
特にあの三馬鹿、いえ三幹部も厄介ですしね。 戦力差は絶望的です、こんな戦いを自分に全く関係ないこの世界で、しかも死ぬ覚悟で行う者なんて居ないですよね、やっぱりやめましょう……」
シャルは早口で捲し立てた。 尻尾を垂れ下げるその姿はかなり落ち込んでいる様だった。
「シャル、その能力に使用限度はあるの?? 例えば何回でも召喚できるとか、それに一度召喚した者を元に世界に戻すといった事は可能なのかしら??」
私はシャルにの能力をもう少し詳しく聞こうと思った。
シャルの能力は今の私達にとっては最後の希望になり得るものだ。 結論を出すのはまだ早いと思ったから。
「それは……残念ですがシャルの力は一度きりしか使えないのです。 本来は自身の寿命の全てを捧げて初めて成功するものだからです。 シャル自身一度も使用した事が無い能力なのでおそらくでは有りますが、まず間違えないでしょう。 誰からも説明などされなくても当然のように何故か知っている。
それが能力の不思議な所でもありますからね。
ですが、もう一つの元の世界に戻すと言うのは可能です。 呼んでくる事が出来れば元に戻す事も出来ます。 それを含めての一回ですからね」
「その元に戻すって言うのはシャルが勝手に決められる事なのかしら??」
「いえ、呼び出す場合はシャルの自由ですが、元の世界に戻す場合は相手の意思が重要になります。 元の世界に戻りたくないと本人が思っている場合に私が勝手に戻す事は不可能です。 逆に戻りたいと強く思っている場合はシャルの了承など必要ありません。 全て決めるのは相手側と言う事になります。 特に時間制限もありませんのでいつでも戻る事は可能です」
なるほど、想像し得る最悪の状況にはならなくて良いわけだ。 元の世界に帰る手段が無い場合、その方に大変な迷惑がかかる。 私達の都合で勝手に呼び出すのだ、誰だって良い気はしないだろう。
でも帰りたくなったらいつでも自分の世界に戻れるのならばその不満も多少は軽減されるだろう。
シャルの話を聞く分には確かに運試し、それもほとんど勝機のない賭け。
でも例え負けたとしてもシャルに負担は無い。 その時はまた一から次の手を探すだけ。
……だったら試してみる価値はあるかもしれない。 藁にも縋る思いの現状でこの提案を無しにするのは愚作に思える。
私は少しの間考えを纏めていた。 その間シャルは何も喋らずただ私の決断をじっと動かず待っていてくれた。
私は試してみる価値はあると思いながらも、シャルにどうしても確認しておきたい事があったためシャルの目を真っ直ぐ見つめて尋ねる。
「シャル。 絶対に嘘をつく事なく答えて貰えるかしら?? 本当に、本当にその能力は貴方に負担は無いのね??」
「勿論です!! シャルはベル様に嘘をつく事はありません!! シャルに負担はありません!!」
シャルは即座に返事をする。
負担が無い。 未だに信じられないけどシャルは私が見た事も聞いた事もない二つの能力を有している者なのだ、それに今までシャルが私に嘘をついた事なんてない。
シャルになんの負担もなく行えるのであればもう迷う事はないだろう。
「わかったわ、シャル。 そのたった一度の能力、今この瞬間に使いましょう!! 私達の希望の一手になると願いを込めて」
私の言葉にシャルはぱっと表情を明るくさせたが、その表情をすぐさま曇らせ不安そうに呟いた。
「ベル様、もしかしたらちる様をよく思って居ない者が召喚させる可能性もあるですよ?? シャルから言っておいてなんですが、大丈夫でしょうか??」
「それはまず問題無いわ!! シャルは召喚する者は選べないけどちる様への思いの強い者という条件を設定する事は出来るって言っていたわよね??」
「え?? はい!! その通りです!! だからこそ恨みを持っている者が召喚される場合もあると思ったのです!」
「だからこそよ。 だからこそ有り得ないの。 ちる様への感謝や愛情と言った思いがそんな物に負けるわけないじゃない?? きっとシャルの能力で召喚される者は良い人よ。 ちる様への思いがそれだけ強いんだもん。 私達の助けになってくれるかは正直厳しいと思うけど、その時は昔のちる様の話でも一緒に聞きましょう?? それが何かの役に立つ可能性もあるしね!!」
私の言葉に根気はない。 だけど自信はあった。
ちる様への好意が悪意に負ける筈が無い、そんな自信が。
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