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第四章 ノア デ ステファーノ
ノア デ ステファーノ 3
しおりを挟む「殺す事などしません。 ユーノの事は拘束する事ぐらいしか出来ないと私は考えます」
「だと思ったよ。 正直言ってユーノを拘束したからと言ってどうにもならないだろう。 ユーノの能力の発動条件ははっきりとは分からないけど、生きている以上はその能力が使えなくなるとは思えないからな」
「何が言いたいのですか? つまりユーノを殺せと言う事でしょうか??」
ベルの言葉に少し怒りが滲んでいる。
ベルとユーノの関係は知らないが、ベルはユーノを殺す事は全く考えていない。
少し甘い気もするがユーノを殺さないと言う考えは俺にとっても都合が良かった。
「悪かったよ、ちょっと言い方が悪かったな。 ユーノを殺そうとは考えてないよ。
俺が言いたかった事はユーノならきっと自身の計画に失敗が無い様に幾つもの策を用意しているはずなんじゃないかって事さ」
「策?」
「そう、万が一にも戦いに敗北して自分がベル達に捕まってしまった場合の事も考えているかも知れないって事さ」
「……私達に捕まってしまった場合?」
シャルが静かに声を出す。
「あぁ、そしてそうなった場合を想定して動いていた筈だ、あいつらとな」
「確かにユーノの事だからそう言った事態にも備えている可能性はあるけど……でも仮にそうだったとしても実際には私達は負けたのよ? そんな策があったとしてもそれはもう終わった事になるんじゃないかしら??」
「いや、まだユーノの策は生きている。 そしてその策こそが俺達にとってはこの状況を覆す大きなチャンスになるんだ」
俺の言葉にベルもシャルも怪訝な表情を浮かべている。
でもその反応は当然だろう、俺の言葉にはまだ何の根拠もないし、そもそも唐突すぎる。 こんな言葉を鵜呑み出来る訳がないのは最初から承知だった。
だけど今はその根拠をベルとシャルに伝える事は出来ない、俺の策が成功するまでは。
「今ここでベルとシャルにはっきりとした根拠を示す事は出来ない。 だからこの話は信じてくれなくても良い、ただそう言った可能性があるって事だけ頭に入れておいて欲しい」
ベルは口に手を当てながら俺の話を聞いてくれていた、そして何かを考え終わった様に小さく息を吐いた。
「ノア、貴方がこう言った言い方をするって事はまだ私達にも言えない事があるのだと勝手に思う事にするわ。 だから私からは質問はしない、だからノアが話せる範囲でこれから先、貴方がやろうとしている事を教えて貰えるかしら?」
ベルの言葉に俺は安心した、今色々と詮索されても俺は答えるつもりはなかったし、最悪お互いに不信感を募らせる事になるかも知れなかった事を回避してくれたのだ。
「俺が思うユーノの策。 それはユーノが捕まった時に残りの四人で出来る事、そしてそれが戦いに負けた時だとしたら考えられるのは一つ。
誰かがちるの力をユーノに繋げる役割を果たす事だ、ちるが捕まっている場所からな。
つまりユーノの策は四人全員にちるの力を起動させる鍵を持たせる事、そうすれば万が一戦いに敗れても誰か一人でも逃げ切ればちるの力を解放する事が出来るからな。 だけどっ」
「それは逆にリスクが高くなるんでは無いんですか? わざわざユーノがそんな事するとは思えませんが??」
シャルはまだ納得していないのだろう、俺の言葉を遮り語気を強めてそう尋ねてきた。
「リスクは確かに高くなる、まぁだけど正直あんまり関係無いんだ。
何故ならユーノは万が一にもベル達に負けるなんて有り得ないと考えてたと思うからな」
「……ノア様、仰っている意味が分かりません。 そもそもユーノ自身が負けると思っていないならこの話自体が成り立たないのでは??」
ユーノの策は万が一の可能性を考えてのものじゃない。 言ってしまえば只の余興、油断に近い物だと俺は思っていた。
「さっきの話は只の入口に過ぎないんだ。 ユーノがしたかった事は簡単な事に見えて最も難しい事、ユーノを除く4人の心を一つにするって所だろう。 ユーノは戦いに負ける事より4人の誰かに裏切られる可能性や仲間割れをする可能性の方がまだ大きいと思ったんだろう。
だからユーノは自身にとっても大事な鍵を4人に託した。 もしもの時に重要な鍵を渡されると言う事実は信頼の証にもなり、絆にもなるからな、恐らくその4人にも俺がさっき言った様な言葉を言ったんだと思う。
その為なら多少のリスクなんて関係ない、それがユーノがわざわざ4人に鍵を渡した時に言った理由だろう」
「それもあまり考えられません。 あの4人がユーノを裏切ると思えませんし、私はユーノの事はノア様より理解していると思っています。
ユーノは確かに頭のキレる男です、色々な策を用意している事は有り得るでしょう、ですがその策に自分以外の誰かを入れる事は無い。
全て自分の手で成し遂げる、それがユーノと言う男です」
「その通り」
「え??」
シャルが目を見開いて声を出した、シャルの言葉を肯定した俺に少し驚いている様だ。
だけどシャルはユーノの事を俺より知っているのは事実だし、何より俺もシャルと同じ事を考えていた。
「シャルの言う通り普段のユーノならそんな事はしないんだろう。
言ってしまえば4人に鍵を持たせたのも只のパフォーマンスに過ぎない、俺が言ったのはユーノが4人に鍵を渡す時の大義名分であってユーノの本心じゃない。
このユーノの策に意味なんてなのさ、戦争に負けるかも知れない、誰かが裏切るかも知れない、色々取り繕って実行された策だけど、本来ならそんな事する意味は無いんだ、ユーノは負けるつもりも裏切られるつもりも全く無いんだから。
じゃあ、何故こんな事をしたのか??
それは本当にただの気紛れであり目的を達成できると本気で思ったからこその油断。 そしてその油断を、その隙を俺達は突く」
「……そんな全く意味のない事をユーノがするでしょうか??」
「ユーノにとっては意味無い事でも他の4人にとっては多少の効果はあるからな」
「で、ですが!!」
「シャルもういいわ、ありがとう。 ノア、貴方が考えるユーノの策は分かったわ。 それでこれからどうするの??
」
シャルと俺の話に今度はベルが割り込む、その言葉にシャルは申し訳なさそうに頭を下げた。
「俺はその鍵を書き変える。 それが出来ればユーノはちるの力を使えなくなる、ちるの力が使えないならユーノの計画は成功しない、それがこれから俺がしようとしている事だ」
「鍵を書き換える? そんな事が出来るの? 一体どうやって? ……いえ、それは聞かない事にするわ」
「ありがとうベル。 五日後に俺はその場所に向かう、来てくれるか??」
「ま、まさかもうその場所ってのも突き止めているとはね。
……勿論よ、私の気持ちは変わらない、ノアに協力する。 その言葉を今更曲げるつもりはないわ。 残り五日、その間に私が出来る事はあるかしら??」
「ベ、ベル様! 本気ですか?? 危険です!!」
シャルの言葉にベルは反応を返す事はしなかった。
「そうだな、準備してほしい物がいくつかあるから、それを頼んでも良いかな?」
「わかったわ。 シャル、貴方はまだここに残って貰っても良いかしら?? 何かあった時に貴方にはここにいて欲しいの」
「わ、わかりましたベル様」
シャルは少し不安そうだった、いや、きっとベルの事を心配しているのだと思う。
俺はベルに欲しいものをいくつか伝えた。
もし、この作戦が成功すればちるにもう一度会えるかもしれない。
そう思うと俺の心臓はまるで他人の物なんじゃないかと思える程に高鳴っていた。
最後の方はその高鳴りをベルとシャルに悟られない様にする事で精一杯だった。
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