走馬灯を見る君へ

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第五章 ベルリン ベル スロット

ベルリン ベルスロット 2

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「ベル、そろそろ行くぞ?」

「え?」

 その声に驚いて私は目を覚ました。 

 ノアは目の前に立っていた、どうやら私の体を少し揺らして起こしてくれたみたいだ。

 やってしまった、まさか今日に限って寝過ごすなんて。 隣を見るとシャルはまだ寝息を立てている。 
 起こしてしまうのも悪気もしたし、昨日の事もあったので私はゆっくりとシャルから離れてベットから出た。

「ごめんなさい、ノア」

「いいよ、準備出来たら来てくれ。 外で待ってる」

 ノアもシャルを起こさない様に気を使ってくれたのか、小声でそう言った後静かに部屋から出ていった。

 私は出来るだけ音を立てずに急いで準備を始めた、着替えを済ませノアに頼まれていた物をベットの下から出した。 

「シャル行って来るわ」

 静かに扉を閉めて部屋を後にする。

「いってらっしゃいませ、ベル様」

 部屋の中からシャルの声が聞こえた気がした。 もう一度部屋に戻ろうかとも思ったけどノアをこれ以上待たせる訳にもいかない。 
 私はノアの元へと急いで向かった。
 
「準備出来たのか?」

「ええ、本当にごめんなさい!」

「いや、むしろその方が良かったかも知れない。 俺も気持ちを落ち着かせる事が出来たから」 

「本当に? 気を使っている訳じゃなくて?」

「あぁ、本当だよ」

 ノアは私に微笑んでくれた、その笑顔を見ると疑いを持っていた自分が少し恥かしくもなる。

「ベル、頼んでいた物は手に入ったか?」

「え? ええ! そんな難しい物じゃ無かったから、でも本当にこんな物を使うの? 私達戦いにいく訳じゃないのよね?」

「あぁ、だけど不測の事態にも備えとかなきゃな。 勿論使わない事に越した事は無いけどな。 早速もらって良いか?」

「わかったわ、少し重いから気をつけてね」
 
 私はノアに頼まれていた品物を渡した。 

 タガーナイフに小型爆弾が二つ、ナイフの方はまだしも爆弾を頼まれた時は冷や汗が出た。 
 これが誰かに使われない事を私は祈った。

 あとの二つは本当に使い所がわからなかった、詳しくは私も知らないけど獣人アイドルである女の子のサインに少しでは無いけどある程度のまとまったお金。 

 これもノアの作戦の一部なのだろか? それとも個人的に欲しかっただけとか? お金はまだしもノアが誰かのサインを欲しがるとは思えない、

 宛名もノアじゃない知らない誰かだし。
 
「流石ベルだな、俺が思っていた以上に良い物だ。 ありがとう」

「喜んで貰えたなら良かったわ。 じゃあ早速向かいましょうか?」

「あぁ、そうだな。 ここからだと少し遠いけど今なら約束の時間には余裕があるしゆっくり行こうか」

 約束の時間? ノアは誰かと約束をしているんだろうか? 一体誰と? ノアの言葉に私の心が大きく波を打つ。

 昨日シャルと話をしたし、今更考えても仕方ない事だけどそれでもやっぱり少し怖かった。

「前と同じ道で良いよな? 行こうか」

 そう言ってノアは歩き出した。 ノアが向かっている場所は、この国に来てノアと一番初めに行った所であり私が最も近づきたく無い場所、ユーノと話をしたあの場所だ。

 正確にはその近くではあるけど、それでも一歩を踏み出すのには躊躇ってしまう。

「ベル、俺達はここに必ず帰ってくる。 その事はちるに誓って約束するよ」

 ノアは振り返らずに私に言った、ちる様に誓う。 ノアのその言葉は私の不安と恐怖を軽くしてくれた、私は大きく深呼吸をしてノアの後ろを追って歩く。
 
 私達はそのまま三時間程歩いた、ユーノの居場所は獣人便に頼ればそんなに遠い所では無かったけど、今日の移動手段は主に歩きだ。 

 今でようやく半分ほど来たって所だろう、このペースで行くと目的地には着くのは夜過ぎになる、ノアの足取りは一定で後ろ姿に不安の色は見え無かった。 
 
 一体なんでこんなに余裕があるのだろう、ノアの心の内が私にはとても気になった。
 
「そろそろだな、ベル大丈夫か?」

 先程から更に時間が過ぎた頃、ノアは振り返って私に訪ねてきた。

 正直言って、私はかなり疲れていた。 こんなに歩いたのは、昔あの森で迷子になった時以来だ。 
 でもここからが私達にとってのスタートになる、弱音を吐く訳にはいかない。

「ええ、私は大丈夫よ。 それにしても大分暗くなってきたわね、その……約束の時間には間に合いそうかしら?」

「ああ、このまま行けば時間ぴったりに着くはずだ、準備は良いか?」

 遂にここまで来た、ノアの約束している人物が誰でこれからどうするのか、その答え合わせをする時が。 
 私はノアの言葉にゆっくりと頷いた、いや頷く事で精一杯だった。

 私の頷きを確認した後再びノアは歩き出した。
 その後は只ノアの後ろに必死について行った、どんどん辺りは暗くなりノアの姿を捉えている事しか私には出来なかった。

 三十分程歩いた後、それは私の前に唐突に現れた。

「な、なにこれ?」

 思わず声が出てしまう程にそれはこの場所には似つかない物だった。 

 ユーノの居場所はこの近くの都市にある縦に大きな建物、私も入った事があるからそこからの景色を見た事がある。 
 
 この都市で一番大きな建物は間違えなくそこだった。 今迄私達が歩いていた場所もそこからも見えていた森の奥地、バレない様に歩いてきたのもユーノに見つからない為だ。 

 なのにどうしてここにこんな物が??

 私の目の前にはユーノの基地の何倍もあると思われる程に大きな建物があった。

「ついさっきまでこんなのどこにも見当たらなかった。 いえ、以前この近くに来た時だってこんな物は無かったわ、一体どうなっているの?」

 脳をフル回転してもその答えは出て来ない、私はノアに視線を向けた。

「ここが俺達の目的地、約束の相手もここにいる。 そして何よりここにちるもいる筈だ」

「……ここにちる様が?」 

「あぁ、俺が話したちるの力をユーノに繋げる役目をする場所、それがここだ」

「ここにちる様が……なら早く助け出さなきゃ!」

「それは出来ない!」

 ノアが私の手を掴んで言う、気付けば私はノアより前に足を出していた。 

「どうして! それが私達の目的でしょ?」

「違う、今回の目的はあくまでちるの力を解放する鍵を書き換える事だ。 俺の作戦はその為のものであって今ちるを救い出す為の物じゃ無い!」

 声を上げてノアは言った、その声に悔しさが滲んでいる事に私は気付いた。 

「ベルの気持ちもわかる、だけど今は我慢して欲しい」

「……ごめんなさい、またノアに迷惑を」

 頭で考えずに感情で動こうとしてしまった事を私は後悔した。 
 きっとノアだって直ぐにでもちる様を助けたいと考えている筈なのに。

「いや、謝るのは俺の方だ。 ベルに伝えていなかったんだから、すまなかった。 ここに来るのも二回目なんだ、おそらくここはユーノの部下の力で近くまで来ないと存在を認識出来ない様になっている。 だから説明するのを省いたんだ」

 ノアが申し訳なさそうに私に頭を下げる。 ノアが私に話さなかった事も今なら理解できる。 ちる様の居場所が分かっていたらきっと私はもっとしつこくノアを問いただしただろう、それをノアは嫌がったのだ。 

 きっとこれも話したく無い事の一つだったと思う。

「ノアが謝る事は無いわ、私が未熟だった。 もう大丈夫、今はノアの作戦を成功させる事だけを考えるわ」

「ありがとう、ベル。 じゃあ行こうか」

 そのままノアは私の手を引っ張ってその建物に進む。 
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