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勇者に出会ってしまった。

43話 勇者と出会ってしまった 2

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「……えっ??」
 
 目の前の勇者が困惑顔で消え去った球体の行方を必死に探す。
 
 
 まぁそんな反応になるよな……味方の俺だってリアが何したのかわからないし。
 
「お、俺の究極魔法は?? あれ?? 確かに放った筈なんだけどなぁ……間違えて消しちゃったのかな??」
 
「はんっ、お主程度の魔法なぞ我にとってはゴミと変わらん。 そこら辺に捨ててやったぞ」
 
「あぁ、きっと俺がこいつらを殺す覚悟が足りなかったんだな。 
 なるほど、どうやら無意識に手加減してたみたいだな。 良しっ!! 次は本気!! 本気で殺す!!」
 
 リアの言葉を無視して勇者は再び手を上げる。
 

 わかるよ。 認めたくないよな、折角異世界に来て勇者になったんだもん。 
 自分より数倍強い奴が居るなんて簡単には認めっ……ってかなんかさっきよりデカくない?? 
 これ大丈夫なの??
 
「リ、リアさん?? 流石にこれは不味いんじゃないか??」
 
「ん?? 何が不味いんじゃ?? あぁ、なるほど。 まどかは違う消し方を見せてほしいんじゃな?? うむ、任せるが良い」
 
 いや、誰もそんな事言ってないんだけど?? 
 俺が言ってるのはこのサイズはいくら何でも危険っ。
 
「今度こそ死ね!! 五神咆哮累波!!」

 俺の思考を遮り、勇者は怒りに身を任せる様に叫ぶ。

「同じ魔法とは芸がないのぅ。 まぁ良い、ほれっ」
 
 そう言うとリアは右手で指を鳴らした。
 
 そしてその瞬間勇者の究極魔法とやらはまたも一瞬で消え去っていた。
 
「……」
 
「……」
  
 き、気まずい。 あんな格好つけてたのに2回も失敗したんだもん、そりゃあ何も言えなくもなるわな。
 
「ま、ま、魔法でトドメを刺すのはやっぱりなんか違うかもな。 
 やっぱり勇者と言えば剣だし?? い、行くぞ、聖剣ミルバース!!」
 
 うわぁ、メンタル強っ。 流石勇者さんだわ、俺には出来ない事を平然と!! そこに痺れる、憧っ。
 
「憧れないわよ。 リア、後は私がやって良いのね??」
 
「あぁ別に良いぞ。 我はもう満足したしのぅ」
 
「そう、ありがとうね」
 
 リアにお礼を告げると青蜜は勇者に向かって走り出す。
 
「えっ?? リア!! 青蜜に行かせて良いのか?? さっきまで押されたんだろ??」
 
「安心せい、我がパワーアップしたと言う事は……青っ子もさっきまでとは別次元じゃ」
 
 別次元?? 何で?? リアがパワーアップしたからって別に青蜜が強くなるわけじゃないだろ??
 
 リアの言葉を不思議に思いながらも俺は青蜜の元へと視線を戻す。
 
 ほらっ、別に見た目も変わってないじゃん、本当に強くなってっ。
 
 
「このぉセクハラ勇者がっ!!」
 
「ぐはぁっ!!?」

 えぇ……何かクリンヒットしてない?? 完全にお腹に重い一撃決まった様に見えたんだけど??
 
 相変わらず俺には2人の動きを見きる事は出来なかったが、青蜜の怒号と勇者の悲鳴でどっちが押しているのかは直ぐにわかった。

「オラァ!!」
「ぐえぇっ……このクソ女がぁ!!」
「オラァオラァ!!」
「ガハッ……あ、アバズレがぁ!!」 
「オラァオラァオラァ!!」
「……ちょっと待って、一旦話をっ」
「オラァオラァオラオラオラオラ!!!!」
 
 ……押してるってか一方的に殴ってるだけなんじゃないかこれ?? 
 
 
「な?? だから言ったじゃろ?? 最早あの勇者如きには青っ子の相手は務まらん」
 
「いや、言ったじゃろって言われてもだな……何で青蜜まで強くなってんの??」
 
「そりゃ青っ子には我の魔力の一部が組み込まれておるからのぅ、本体の我の強さに応じてレベルは上がるじゃろ??」
 
 レベルって……そんな概念今までなかっただろ、急に設定を盛るんじゃねぇ!!
 なんだ、じゃあもしかして結衣ちゃんやルカも同様にレベルアップしてるのか?? 
 やめろやめろ、これ以上俺を置いていくっ……待てよ?? その理論なら俺もリアの魔力を貰えばあんな風に戦闘が出来るって事か??
 
 
 ……良い設定じゃん!!

 
「ねぇリアさん、お願いがあるんだけど聞いてくれないかしら??」
 
「何じゃ急にっ!! 気持ち悪いぞ??
 ま、まぁまどかのお願いなら聞いてやらぬ事も無いが」
 
 キタコレ!! なんか押せば行けそうな雰囲気じゃん!! 
 最近俺にとって良い展開が続いてる気がするし今が最大のチャンスだ!! 長くなったけど、ようやく俺にも異世界魔法ライフが訪れる気配!!
 
「あのさっ、青蜜にやった様に俺にもリアの魔力の一部を組み込めたり出来ないのかなぁーって」
 
 俺は出来る限りの甘えた声を捻り出してリアへ懇願した。
 
 プライドなんざ要らねぇ!! このチャンスを逃さない為ならっ。
 
「……無理じゃ」
 
「えっ??」
 
 き、聞き間違いかな?? 今無理って言った??

「えっーと……リアさん??」
 
「残念じゃがそれは無理なのじゃ」
 
 ……何故?? もしかして嫌がらせ?? いや、絶対そうに違いない!! だって可笑しいじゃん!! 
 青蜜や結衣ちゃんに出来て何で俺には出来ないの?? 
 勇者を圧倒する力を持ってるリアさんだよ?? 俺みたいな一般人をちょっと強くするくらい簡単な筈じゃん!! 
 
「よせ、そんな目で見るでない。 まどかの気持ちもわかるが我にだって無理な物はあるのじゃ」
 
「納得出来る答えを所望します!!」
 
「いや……それはっ」
 
「ほらっ!! 言えないんじゃねぇーか!! 嫌がらせか?? 嫌がらせなのか?? 俺がリアの蒙古斑を見た事をまだ怒ってるのか??」
 
「も、蒙古斑じゃないわい!! はぁー、わかった、わかったのじゃ。 理由を教えてやるのじゃ」
 
 リアはそう言うと何処か気まずそうに俺の方を向く。
 
「き、嫌われてるんじゃ」
 
「……え??」
 
「ほらっ……まどかは何故か魔素に嫌われてるじゃろ?? 
 だから我がどんなに魔力をお主の身体に注ぎ込んでも意味がないんじゃよ。 全部逃げ出して我の元に帰ってきてしまうんじゃよ」
 
「……」
 

 あー、そう言えばそんな設定あったよねぇ。 いっけね、てっきり忘れてたわ、俺としたことが何期待してんだか。 
 
 魔力適正ゼロって言われたじゃん……な、泣きそう。
 
「だ、大丈夫かまどかよ??」
 
「何がっ?? 別に気にしてないけど?? ただ何となく聞いてみただけだし!!」
 
「……すまんって」
 

 あ、謝るなよ……謝られると余計惨めになるだろうが。
 
 
 その後、俺はもう口を開く事はせず青蜜の怒りが収まるのをただただその場で待っていた。
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