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もやもや
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「頭を上げてくださいませ」
少し経って出た言葉はそれだった。ラインハルトは頭を上げて言った。
「あなたのような方に捕えられて良かったです」
それはどういう意味で受け取ったらいいのだろうか。考えているとラインハルトは微笑んだ。
「絶対に僕を許さないでくださいね」
微笑みながら言う言葉ではなかった。呆気にとられると同時に、その覚悟が見えた。
その時だった。コンコン、とノックの音がした直後、扉が開いた。
「エレナ、やばい。殿下帰ってきたよ。早く出て」
「え、あ、そうね。ではラインハルト様、また後ほど」
すっかり忘れていたユリウス殿下の伝言。ラインハルトに関わらないこと。慌てて立ち上がって部屋を出ると、どこからかパタパタと足音がした。
「アメリア、先に行かないでもらえる?」
「申し訳ございません。気が急いてしまって……」
「はいはい、そこを曲がって突き当たりの部屋だよ」
そんな会話が聞こえ、すぐに足音の主はあらわれた。
え、誰?
まずどこかの貴族の令嬢だろう女の人が小走りで来た。その少し後にユリウス殿下。
やばい、普通にラインハルトの部屋の前なんだけど!クリスと顔を見合わせるが、もう遅い。
ユリウス殿下は慌てた私たち二人を見て、何か言いたそうなな顔をした。しかしその前に女の人が口を開いた。
「お初にお目にかかります。わたくし、アメリアと申します。ラインハルト様の婚約者でございますの」
……はい?婚約者?そんな話微塵も聞いてないんだけど。
ユリウス殿下を見ると、無言で頷いた。ということは本当なのだろう。そしてラインハルトの故郷へ行ったユリウス殿下がどうしてか連れてきたのだろう。
「一緒に馬に乗ってたのこの人だったんだ」
クリスがポツリと言った。
.……一緒に馬に?ユリウス殿下と?
心がもやっとした。何と言ったらいいか分からない気持ち。嫌な気持ち。
だけどその正体が分からず、私はアメリアへと向き直った。
「そうでしたか、ラインハルト様の婚約者様。それはさぞご心配なされたことでしょう」
「どうぞ」と扉を開けるとアメリアは勢いよく部屋へと飛び込んだ。
「ラインハルト様……!」
感動の再会か?外野は引っ込んでいよう。そう思い、一歩下がった時だった。
ラインハルトに抱きつくかのような勢いだったアメリアは、その直前で足を止め、そしてラインハルトの頬を打った。
乾いた音が響きわたり、私とクリスは目を見張った。こんなお嬢様は見たことがない。
ラインハルトは叩かれた頬をおさえ、アメリアを見て微笑んだ。
「ごめん」
たった一言。その一言でアメリアははらはらと涙を流した。そしてぎゅっとラインハルトを抱きしめる。
「一緒に、一緒に罪を償いましょう……」
……なんだろう、とても絵になる。少ない言葉と態度。お互いが通じ合っている姿がとてつもなく綺麗だと思った。
ラインハルトはアメリアに抱きしめられ、少しの間目を瞑った。開いたその目は心を決めたそれだった。私はそれを見ただけでなんとなく何を言うのか分かった。
そっとアメリアから離れ、口を開くラインハルト。
「ラインハルト様」
咄嗟に声が出ていた。多分その言葉はアメリアを傷つけると思ったから。
ラインハルトとアメリアが私を見た。なんて言うのかは考えていなかった。しかしここで取り繕う必要はないだろう。
「犯した罪は確かにラインハルト様のものですが、一緒にそれを持ちたいと思っているアメリア様のお気持ちも考えてあげてくださいませ」
アメリアは私よりも少し年上に見える。この世界で二十歳をすぎて結婚していない令嬢は一般的に行き遅れとされる。婚約しているのに結婚はしない。それだけの理由で令嬢の方から婚約を破棄することもできる。それなのに婚約破棄どころかこんなところまで迎えに来る。それがアメリアの気持ちだ。
はっとしたように私とアメリアを見るラインハルト。
「……アメリア、君を待たせることになると思う。それでもいいかな?」
「今日までも散々待たされてきましたもの。今更ですわ」
そう言って抱きしめ合う二人。
……いやー、ほんっと綺麗なものを見させてもらったわ。これが純愛ってやつね。もうここまできたら解決も同然。一件落着だ。
うんうん、と一人で頷いていると、どこからか視線を感じた。それを辿ると先にはユリウス殿下が。
確かに目があった。しかしユリウス殿下はすぐに目を逸らしてラインハルト達の方へ話を聞きに行った。
目があったら絶対に微笑んでくれる人だ。話どころかそれすらなかった。三日ぶりに会ったというのに。
アメリアと話すその姿がどことなく楽しそうに見える。先ほど感じたもやもやが広がる。胸の辺りが気持ち悪い。
「……後は殿下がどうにかなさるでしょう。わたくしは部屋に戻るわ」
「え、エレナ?」
何か言いたそうなクリスを無視して、私は自分の部屋へと戻った。
その後も気持ちは全く晴れず、どころか気分は落ち込む一方で、理由も分からないそれを消すことはできそうになかった。
少し経って出た言葉はそれだった。ラインハルトは頭を上げて言った。
「あなたのような方に捕えられて良かったです」
それはどういう意味で受け取ったらいいのだろうか。考えているとラインハルトは微笑んだ。
「絶対に僕を許さないでくださいね」
微笑みながら言う言葉ではなかった。呆気にとられると同時に、その覚悟が見えた。
その時だった。コンコン、とノックの音がした直後、扉が開いた。
「エレナ、やばい。殿下帰ってきたよ。早く出て」
「え、あ、そうね。ではラインハルト様、また後ほど」
すっかり忘れていたユリウス殿下の伝言。ラインハルトに関わらないこと。慌てて立ち上がって部屋を出ると、どこからかパタパタと足音がした。
「アメリア、先に行かないでもらえる?」
「申し訳ございません。気が急いてしまって……」
「はいはい、そこを曲がって突き当たりの部屋だよ」
そんな会話が聞こえ、すぐに足音の主はあらわれた。
え、誰?
まずどこかの貴族の令嬢だろう女の人が小走りで来た。その少し後にユリウス殿下。
やばい、普通にラインハルトの部屋の前なんだけど!クリスと顔を見合わせるが、もう遅い。
ユリウス殿下は慌てた私たち二人を見て、何か言いたそうなな顔をした。しかしその前に女の人が口を開いた。
「お初にお目にかかります。わたくし、アメリアと申します。ラインハルト様の婚約者でございますの」
……はい?婚約者?そんな話微塵も聞いてないんだけど。
ユリウス殿下を見ると、無言で頷いた。ということは本当なのだろう。そしてラインハルトの故郷へ行ったユリウス殿下がどうしてか連れてきたのだろう。
「一緒に馬に乗ってたのこの人だったんだ」
クリスがポツリと言った。
.……一緒に馬に?ユリウス殿下と?
心がもやっとした。何と言ったらいいか分からない気持ち。嫌な気持ち。
だけどその正体が分からず、私はアメリアへと向き直った。
「そうでしたか、ラインハルト様の婚約者様。それはさぞご心配なされたことでしょう」
「どうぞ」と扉を開けるとアメリアは勢いよく部屋へと飛び込んだ。
「ラインハルト様……!」
感動の再会か?外野は引っ込んでいよう。そう思い、一歩下がった時だった。
ラインハルトに抱きつくかのような勢いだったアメリアは、その直前で足を止め、そしてラインハルトの頬を打った。
乾いた音が響きわたり、私とクリスは目を見張った。こんなお嬢様は見たことがない。
ラインハルトは叩かれた頬をおさえ、アメリアを見て微笑んだ。
「ごめん」
たった一言。その一言でアメリアははらはらと涙を流した。そしてぎゅっとラインハルトを抱きしめる。
「一緒に、一緒に罪を償いましょう……」
……なんだろう、とても絵になる。少ない言葉と態度。お互いが通じ合っている姿がとてつもなく綺麗だと思った。
ラインハルトはアメリアに抱きしめられ、少しの間目を瞑った。開いたその目は心を決めたそれだった。私はそれを見ただけでなんとなく何を言うのか分かった。
そっとアメリアから離れ、口を開くラインハルト。
「ラインハルト様」
咄嗟に声が出ていた。多分その言葉はアメリアを傷つけると思ったから。
ラインハルトとアメリアが私を見た。なんて言うのかは考えていなかった。しかしここで取り繕う必要はないだろう。
「犯した罪は確かにラインハルト様のものですが、一緒にそれを持ちたいと思っているアメリア様のお気持ちも考えてあげてくださいませ」
アメリアは私よりも少し年上に見える。この世界で二十歳をすぎて結婚していない令嬢は一般的に行き遅れとされる。婚約しているのに結婚はしない。それだけの理由で令嬢の方から婚約を破棄することもできる。それなのに婚約破棄どころかこんなところまで迎えに来る。それがアメリアの気持ちだ。
はっとしたように私とアメリアを見るラインハルト。
「……アメリア、君を待たせることになると思う。それでもいいかな?」
「今日までも散々待たされてきましたもの。今更ですわ」
そう言って抱きしめ合う二人。
……いやー、ほんっと綺麗なものを見させてもらったわ。これが純愛ってやつね。もうここまできたら解決も同然。一件落着だ。
うんうん、と一人で頷いていると、どこからか視線を感じた。それを辿ると先にはユリウス殿下が。
確かに目があった。しかしユリウス殿下はすぐに目を逸らしてラインハルト達の方へ話を聞きに行った。
目があったら絶対に微笑んでくれる人だ。話どころかそれすらなかった。三日ぶりに会ったというのに。
アメリアと話すその姿がどことなく楽しそうに見える。先ほど感じたもやもやが広がる。胸の辺りが気持ち悪い。
「……後は殿下がどうにかなさるでしょう。わたくしは部屋に戻るわ」
「え、エレナ?」
何か言いたそうなクリスを無視して、私は自分の部屋へと戻った。
その後も気持ちは全く晴れず、どころか気分は落ち込む一方で、理由も分からないそれを消すことはできそうになかった。
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