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お誘い
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カイの執務室をノックする。旅の途中、何度か報告は送っているが、詳しい話をするために。
「失礼いたします」
「ああ、エレナ、ちょうどいいところに」
カイがそれまで見ていた紙から目を上げて私を見た。どうやら私が送った報告書のようだ。
「学校の場所なんだけど、この街と、ここの町、それから、ここにしようかと思うんだけど、どうかな?」
地図を指しながらそう聞いて来るカイはとても真剣な表情だ。
私の最終目標。それは平民の識字率を上げ、学力を上げ、仕事を増やすこと。貧富の差を少しでも縮めること。
それの下調べが旅の目的の一つだ。あとは人助け等。
「いえ、この町よりもこちらの方がよろしいかと。実際に行ってみると分かるのですが、この町は……」
旅先で見たもの、聞いたもの。その全てをカイに伝え、一緒に考えるのが私の役目。次期皇帝のカイだが、私は一切遠慮しない。
色々と意見を交わし、話がまとまったころ、カイが言った。
「来月、パーティーを開くそうだ。出立はまだまだ先だろう?よかったらエレナと兄上にも出席して欲しい」
このタイミングでパーティーと言うと、レイラ様の誕生のお祝いだろうか。しかしそれはあまりにも危険すぎないだろうか。
「レイラ様の誕生のお祝いでしょうか?公表するのです?」
「うん、隠しておく必要がないからね。実際、リリーの妊娠中から貴族や間では噂になっていたし」
「お命が狙われる懸念はございませんの?」
皇族に子供が生まれたら、その子供は狙われたりするんじゃないの?よく知らないけど。だって、今の時点で次の皇帝はカイ一択だ。もう大人になったカイを狙うのは難しいにしても、生まれたばかりの赤ちゃんなんて簡単に死んでしまうのだ。
カイに子供がいなかったら次の皇位を十分狙うことができる。
「そうだね、十分あるよ」
「でしたら今そのようなことは控えられた方が……」
「今だからするんだよ」
今だから?
「エレナが私やリリーと懇意にしていることは誰でも知っていることだ。だからこそ、レイラの生まれた今、エレナがパーティーに出席し、大々的に祝ってくれることで、レイラの立場は安全になる。皆、エレナが怖いからね」
ああ、なるほど。敵対する人たちにとって、私の魔法の力は怖いものなのだ。
いまのところメインの派閥はカイを推している第二皇子派とユリウス殿下を推す第一皇子派だ。ユリウス殿下は継承権を放棄しているので、その人たちはユリウス殿下の子供、つまりユリウス殿下と私の子供を、と声を上げている。
そんな私たちが公衆の面前でお祝いすることは確かに抑止力にはなるのかもしれない。
「しかし、わたくし達はまたもう少ししたら旅に出ます。その間は大丈夫なのでしょうか?」
私はいつだって守ってあげられるわけではない。その点が心配だ。しかしカイは速攻頷いた。
「エレナがどこにいても関係ないよ。彼らが恐れているのは、エレナの機嫌を損ねることだから。エレナの機嫌一つに国の存亡がかかっていると思っているんだよ」
カイは笑った。私も笑う。
皆勘違いをしている。私は大して怖くないのだ。
「本当に怖いのはわたくしではなく、ユリウス殿下ですのにね」
「兄上がエレナを溺愛していることは意外と皆知らないからね」
あまり皆に知られても困るけど。
「パーティーはぜひ出席させていただきますわ。ドレスの用意と、それからダンスの練習をしないといけませんね」
長らく貴族の世界から離れていた私。パーティーなんて不安すぎる。マナーの勉強もやり直さないといけないかもしれない。
ああ、旅の間にすっかりみっともない体になってしまったし。体を引き締めないと。
カイが笑う。
「エレナだったら少しの時間で完璧にしあげるんだから。心配ないよ」
どうもカイは私を過大評価している。完璧なんて土台無理な話だ。
「殿下が思っておられるほど、わたくしはなんでもできるわけではございませんよ」
かつてはカイが幼すぎただけ。すっかり大人になった今では、私の成長のしてなさが目立つだろう。
失望されるのも嫌なので、保険として言っておくが、カイは「エレナに不可能はないでしょ」と謎の過大評価。
ああ、だめだ。こんな風に言われたら完璧にするしかないじゃないか。一体何時間かかるのだろうか。
これから先の忙しさを思うと、涙が出そうだった。
「失礼いたします」
「ああ、エレナ、ちょうどいいところに」
カイがそれまで見ていた紙から目を上げて私を見た。どうやら私が送った報告書のようだ。
「学校の場所なんだけど、この街と、ここの町、それから、ここにしようかと思うんだけど、どうかな?」
地図を指しながらそう聞いて来るカイはとても真剣な表情だ。
私の最終目標。それは平民の識字率を上げ、学力を上げ、仕事を増やすこと。貧富の差を少しでも縮めること。
それの下調べが旅の目的の一つだ。あとは人助け等。
「いえ、この町よりもこちらの方がよろしいかと。実際に行ってみると分かるのですが、この町は……」
旅先で見たもの、聞いたもの。その全てをカイに伝え、一緒に考えるのが私の役目。次期皇帝のカイだが、私は一切遠慮しない。
色々と意見を交わし、話がまとまったころ、カイが言った。
「来月、パーティーを開くそうだ。出立はまだまだ先だろう?よかったらエレナと兄上にも出席して欲しい」
このタイミングでパーティーと言うと、レイラ様の誕生のお祝いだろうか。しかしそれはあまりにも危険すぎないだろうか。
「レイラ様の誕生のお祝いでしょうか?公表するのです?」
「うん、隠しておく必要がないからね。実際、リリーの妊娠中から貴族や間では噂になっていたし」
「お命が狙われる懸念はございませんの?」
皇族に子供が生まれたら、その子供は狙われたりするんじゃないの?よく知らないけど。だって、今の時点で次の皇帝はカイ一択だ。もう大人になったカイを狙うのは難しいにしても、生まれたばかりの赤ちゃんなんて簡単に死んでしまうのだ。
カイに子供がいなかったら次の皇位を十分狙うことができる。
「そうだね、十分あるよ」
「でしたら今そのようなことは控えられた方が……」
「今だからするんだよ」
今だから?
「エレナが私やリリーと懇意にしていることは誰でも知っていることだ。だからこそ、レイラの生まれた今、エレナがパーティーに出席し、大々的に祝ってくれることで、レイラの立場は安全になる。皆、エレナが怖いからね」
ああ、なるほど。敵対する人たちにとって、私の魔法の力は怖いものなのだ。
いまのところメインの派閥はカイを推している第二皇子派とユリウス殿下を推す第一皇子派だ。ユリウス殿下は継承権を放棄しているので、その人たちはユリウス殿下の子供、つまりユリウス殿下と私の子供を、と声を上げている。
そんな私たちが公衆の面前でお祝いすることは確かに抑止力にはなるのかもしれない。
「しかし、わたくし達はまたもう少ししたら旅に出ます。その間は大丈夫なのでしょうか?」
私はいつだって守ってあげられるわけではない。その点が心配だ。しかしカイは速攻頷いた。
「エレナがどこにいても関係ないよ。彼らが恐れているのは、エレナの機嫌を損ねることだから。エレナの機嫌一つに国の存亡がかかっていると思っているんだよ」
カイは笑った。私も笑う。
皆勘違いをしている。私は大して怖くないのだ。
「本当に怖いのはわたくしではなく、ユリウス殿下ですのにね」
「兄上がエレナを溺愛していることは意外と皆知らないからね」
あまり皆に知られても困るけど。
「パーティーはぜひ出席させていただきますわ。ドレスの用意と、それからダンスの練習をしないといけませんね」
長らく貴族の世界から離れていた私。パーティーなんて不安すぎる。マナーの勉強もやり直さないといけないかもしれない。
ああ、旅の間にすっかりみっともない体になってしまったし。体を引き締めないと。
カイが笑う。
「エレナだったら少しの時間で完璧にしあげるんだから。心配ないよ」
どうもカイは私を過大評価している。完璧なんて土台無理な話だ。
「殿下が思っておられるほど、わたくしはなんでもできるわけではございませんよ」
かつてはカイが幼すぎただけ。すっかり大人になった今では、私の成長のしてなさが目立つだろう。
失望されるのも嫌なので、保険として言っておくが、カイは「エレナに不可能はないでしょ」と謎の過大評価。
ああ、だめだ。こんな風に言われたら完璧にするしかないじゃないか。一体何時間かかるのだろうか。
これから先の忙しさを思うと、涙が出そうだった。
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