ゲームは終わっても人生は続く〜入れ替わり令嬢のその後〜

紅蘭

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謝罪

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その後、私とクリスは騎士団員に混ざり、同じ訓練を受けてきた。ヴェルナー様の時間をあまり取るのも申し訳ないし、基礎体力自体がかなり落ちているから。

そのメニューをこなし、強くなる騎士団員達だ。私だって強くなるに決まっている。

訓練後、部屋へと続く廊下を歩くクリスが言った。


「私、多分もうここにいられないだろうなぁ……」

「え?」


何、急に。どういうこと?

クリスは笑う。


「ほら、殿下に喧嘩売っちゃったし。処分も軽くないだろうなって」


なんとなく分かっていた。だけど考えないようにしていた。


「わたくしがそんなことさせないわ」

「うん、でも見てた人いっぱいいるしね。そもそも殿下はずっと私をエレナのそばに置きたくなかったんだし。クビにするにはいい機会でしょ」

「そ、れはそうかも……」


そんなことない、と言いたかったが言えなかった。確かに否定できない。


「皇族の、しかもエレナの筆頭側仕えって実は結構偉い立場なんだって。だからさ、そんな私が殿下にあんな態度とって、ぬけぬけとここにいられないよね」


あれから殿下はどこに行ったのだろう。その準備をしているのだろうか。

いやいやいや、無理だって。私クリスだからストレスなく生活できてるけど、他の人になったら常に令嬢の仮面被らないとでしょ?ストレスで胃に穴があくよ!?

クリスがクビになるのはものすっごい困る。なんとしてでも阻止する必要がある。


「……クリス、悪いけど、クリスには一生側にいてもらうつもりなの。これだけはクリスが嫌って言ったって絶対に譲れないわ。わたくし、殿下を説得するから任せてちょうだい!」


クリスはポカンとして、そして笑った。


「うん、ありがとう」

「いいえ、こちらこそ、わたくしのために殿下に喧嘩を売ってくれてありがとう」


原因は私だもんね。殿下くらい説得してみせる。


「それにわたくし、念の為、ヴェルナー様に口外禁止を命じてきたのよ。もちろん、騎士団員皆に言うように言ってあるわ」


本当に初めて皇族でよかったと思った。騎士団長であるヴェルナー様が言ったら団員は絶対にそれを守る。いや、守らないといけない。

私にしてもナイス判断だったと思う。クリスが笑った。


「抜け目がないね」

「でしょう?じゃあまずは殿下を探さなくちゃね」



半日。お昼まで探した。探したが見つからなかった。お昼ご飯を食べるために部屋に戻った私たちは、無言で席に座っていた。


「……もう遅いってことはないよね?」


なんとなくコソコソと話をする。今ここにはアリアしかいないので大丈夫ではあるんだけど。


「陛下に呼び出されていないから大丈夫だと思うのだけど」


沈黙。

『大丈夫だと思う』としか言えないこの状況はかなりまずいのではないだろうか。

その時、扉が開いてユリウス殿下が入ってきた。私とクリスは無言で、殿下を見つめる。殿下も無言で椅子に座る。

……びっくりした。お昼ご飯一緒に食べるんだ。てっきりこないかと思ってた。

探していたはずなのに、いざこうして会ってみるとなんと切り出したらいいか分からない。

アリアが目の前に皿を置いてくれる。そうして無言の食事の時間が始まった。

カチャ、とたまに食器の音が鳴るくらい。いつもとは打って変わった様子にアリアは何事かと驚いたことだろう。

かくいう私も気まずくて冷や汗ダラダラだ。


「……殿下、申し訳」

「頭を冷やしてきた」


食事が終わり、とうとう言い出した私の言葉を殿下は遮った。

……遮るくらいならさっさと話してくれたらいいのに。

心の中で文句を言う。顔には出ないように気をつけたが、出ていたかもしれない。


「謝るのはこちらだよ。ごめんね」


驚きを隠すことはできない。クリスもポカンとしている。どうやら私たちの考えは杞憂だったようだ。


「で、では、クリスの処分は……」

「ないよ」


はあぁぁ、と安心のあまり長いため息が出た。クリスも安心しているかと思いきや、ものすごい顔をして殿下を見ていた。

おかしなものでも食べたのか、とでも言いたそうだ。一体クリスはユリウス殿下をなんだと思っているのだろうか。


「クビにしてほしかったのなら、そう言ったらいいよ。喜んでクビにするから」

「あ、いえ、そういうわけではありませんが。絶好の機会では?」


何もないって言っているんだから、大人しく受け取っていればいいものを、こうしてズケズケとものが言えるところがクリスの長所でも短所でもあるんだろうな、と思う。


「クビにしたいのは山々だけど、エレナを泣かせたいわけではない」


ユリウス殿下が私を見る。別にな気はしないよ。猛反対してなんとしでも阻止するだけ。


「……それに、今回のことは僕に非がある。クリスは当たり前のことを言っただけだ」


そんなことを言うが、すごく怒っていたことを私は知っている。いつも冷静な殿下が珍しいくらいに。

そんな私の考えが分かったのか、殿下は笑った。


「言ったのがクリスじゃなかったら殺していたかもしれないけど」


……ですよね。でも大丈夫。クリスしか言えないから、あんなこと。

意外と2人の絆レベルは高いんだろうなと思う。何せもう六年も一緒に旅をしてきたのだ。

なんて思っていると、クリスは「嘘ですよね」と殿下を睨む。


「殺すつもりで吹っ飛ばしたでしょう?クルト様が受け止めてくれなかったら怪我なんかじゃすみませんでしたよ、あれは」

「はは、ばれていたか」


ユリウス殿下は笑った。クリスは「信じられない」とため息をつく。

しかしそうは言ってもユリウス殿下のことだ。クルトお兄様がいることを知っていてしたことだろう。そしてクリスもそれを分かって言っている。

もちろんクルトお兄様も展開が読めていたからクリスが吹っ飛ばされる前に、受け止めに走ったわけだろうし。

結構通じ合っている三人だ。もしかすると私がいない方がトラブルが減っていいんじゃないかと思う。

…………いやいやいや、そんなことはない!と、信じたい……!
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