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ドレスアップ
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鏡に映る自分を思わず凝視する。そこに映っているのは確かに私のはずだ。それなのに見たことのない顔。
ゆっくりと振り向きそこに立つアリアを見ると、アリアは「とてもよくお似合いです」と。
私はもう一度鏡を見た。
「こ、これ、わたくしなの……?」
いつもとあまりにも違いすぎた。
朝からお風呂で全身を磨かれ、髪に色々つけられ梳られ、そして重いほどの髪飾り。それからメイク。見てた限り、そう厚化粧されたわけではない。それなのに私はすっかり別人になっていた。
「卒業パーティーの時でも驚いたけれど……」
あの時とは比べ物にならないくらいの別人さ。はっきりと言えばとてつもない美女がそこにいた。
「エレナ様はあまり目立つことがお好きではないようでしたので、以前は少し控えめに致しておりました」
それなら今回もそうしてくれたらよかったのに。というかアリアのメイクの腕がすごい……!そう思いながらも、原因は分かっている。
今身につけている真っ赤なドレスだ。確かにバッチリメイクじゃないとことドレスには合わない。
……いや、でもこれ、皆私って分かってくれのかな。
「アリア、わたくし、分かってもらえるかしら?」
皆に誰?って顔されたら流石に辛い。そう思って聞くとアリアはふっと笑った。
「少々気合を入れてメイクをしましたが、エレナ様はエレナ様です。とても変わったかのように思っておられるようですが、その美しさは元々のものですので、誰が見ても一目でエレナ様だと分かることでしょう」
……それは言い過ぎだ。本物のエレナには悪いけど、私はこんなに綺麗じゃない。ドレスとメイクのおかげだ。
アリアは私の使用人。「メイクのせいで誰か分かってもらえないでしょう」なんて口が裂けても言えるわけがない。
どちらにしてももうどうしようもない。扉の向こうの廊下にユリウス殿下の魔力を感じる。もう準備が終わって、頃合いを計っているところだろう。
「アリア、殿下に入ってもらってちょうだい」
アリアはすぐに扉を開けに行き、殿下が入ってきた。
なんだか照れ臭くて俯く。ユリウス殿下は部屋を入ったところで足を止めた。
あー、恥ずかしい。こういう時はどんな顔をしたらいいんだろうか。殿下の言葉を待つが、一向に何も言われない。
異変を感じて顔を上げると、殿下はほうけた顔で私を見つめていた。
え、え、何、何その顔。
「あ、あの……?」
「あ、ごめん」
私の声にハッとしたように殿下が反応した。
「あまりにも綺麗で、見惚れてしまったよ」
そう言って微笑む殿下も、ものすごくかっこいい。殿下のタキシード姿を見るのは2回目。前回は私たちの婚約発表のパーティーだった。
しかしその時と今ではその見え方が全く違う。本当に恋というものは恐ろしい。恋は盲目とはよく言ったものだ。……ん?ちょっと意味が違ったかな。
ユリウス殿下がゆっくりと近付いて来て、私の目の前で足を止めた。見上げて見えたその表情は真剣だった。
真顔も嫌いではない。だけど柔らかな笑みが一番好き。
そっと手を伸ばし頬に触れると、すぐに微笑みに変わった。それと同時に私も頬が緩む。
「どうぞ」と手が差し伸べられ、そこに手を重ねる。殿下はゆっくりと歩き出した。
会場へ向かう途中、殿下は小さな声で言った。
「パーティーはもう既に始まっている。僕たちは2階から入り、階段を降りて、まずはカイ達のところへ祝福をしに行く。ここは君がメインだ。魔力を込めて祝福をしてもらいたい」
パーティーの途中で、しかも2階から入るなんて注目の的でしかない。文句を言いたいところだけど、何か考えがあるのだろう。
「魔力を込めた祝福というのは、やはり目に見えるようにした方がよろしいのでしょうか?」
「ああ、そうだね。お願いするよ」
「分かりました」
とは言っても私に思いつくのはちょっとキラキラを降らせるくらいなんだけど。それでもまあ分かりやすいっちゃ分かりやすい。
「その後は適当にしてもらって構わないよ。状況によっては少し冷たい態度をとるかもしれないけど、気にしなくていいからね」
冷たい態度。その状況というのがどのような時なのかは分からない。だけどこのパーティーには何かがあると確信した。
途中から入場することも、真っ赤なドレスも、どうやら私に目立って欲しいのだろう。
まあいいけどね。何も言われてないということは何も知らなくていいということだ。私は殿下の言う通りにするだけ。
私たちの歩みに合わせて、突き当たりに見える大きな扉がゆっくりと開いた。賑やかな音が聞こえる。あの向こうはパーティー会場だ。
……やらかさないようにしないと。
私は大きく息をついて背筋を伸ばし、前だけを見据えた。
ゆっくりと振り向きそこに立つアリアを見ると、アリアは「とてもよくお似合いです」と。
私はもう一度鏡を見た。
「こ、これ、わたくしなの……?」
いつもとあまりにも違いすぎた。
朝からお風呂で全身を磨かれ、髪に色々つけられ梳られ、そして重いほどの髪飾り。それからメイク。見てた限り、そう厚化粧されたわけではない。それなのに私はすっかり別人になっていた。
「卒業パーティーの時でも驚いたけれど……」
あの時とは比べ物にならないくらいの別人さ。はっきりと言えばとてつもない美女がそこにいた。
「エレナ様はあまり目立つことがお好きではないようでしたので、以前は少し控えめに致しておりました」
それなら今回もそうしてくれたらよかったのに。というかアリアのメイクの腕がすごい……!そう思いながらも、原因は分かっている。
今身につけている真っ赤なドレスだ。確かにバッチリメイクじゃないとことドレスには合わない。
……いや、でもこれ、皆私って分かってくれのかな。
「アリア、わたくし、分かってもらえるかしら?」
皆に誰?って顔されたら流石に辛い。そう思って聞くとアリアはふっと笑った。
「少々気合を入れてメイクをしましたが、エレナ様はエレナ様です。とても変わったかのように思っておられるようですが、その美しさは元々のものですので、誰が見ても一目でエレナ様だと分かることでしょう」
……それは言い過ぎだ。本物のエレナには悪いけど、私はこんなに綺麗じゃない。ドレスとメイクのおかげだ。
アリアは私の使用人。「メイクのせいで誰か分かってもらえないでしょう」なんて口が裂けても言えるわけがない。
どちらにしてももうどうしようもない。扉の向こうの廊下にユリウス殿下の魔力を感じる。もう準備が終わって、頃合いを計っているところだろう。
「アリア、殿下に入ってもらってちょうだい」
アリアはすぐに扉を開けに行き、殿下が入ってきた。
なんだか照れ臭くて俯く。ユリウス殿下は部屋を入ったところで足を止めた。
あー、恥ずかしい。こういう時はどんな顔をしたらいいんだろうか。殿下の言葉を待つが、一向に何も言われない。
異変を感じて顔を上げると、殿下はほうけた顔で私を見つめていた。
え、え、何、何その顔。
「あ、あの……?」
「あ、ごめん」
私の声にハッとしたように殿下が反応した。
「あまりにも綺麗で、見惚れてしまったよ」
そう言って微笑む殿下も、ものすごくかっこいい。殿下のタキシード姿を見るのは2回目。前回は私たちの婚約発表のパーティーだった。
しかしその時と今ではその見え方が全く違う。本当に恋というものは恐ろしい。恋は盲目とはよく言ったものだ。……ん?ちょっと意味が違ったかな。
ユリウス殿下がゆっくりと近付いて来て、私の目の前で足を止めた。見上げて見えたその表情は真剣だった。
真顔も嫌いではない。だけど柔らかな笑みが一番好き。
そっと手を伸ばし頬に触れると、すぐに微笑みに変わった。それと同時に私も頬が緩む。
「どうぞ」と手が差し伸べられ、そこに手を重ねる。殿下はゆっくりと歩き出した。
会場へ向かう途中、殿下は小さな声で言った。
「パーティーはもう既に始まっている。僕たちは2階から入り、階段を降りて、まずはカイ達のところへ祝福をしに行く。ここは君がメインだ。魔力を込めて祝福をしてもらいたい」
パーティーの途中で、しかも2階から入るなんて注目の的でしかない。文句を言いたいところだけど、何か考えがあるのだろう。
「魔力を込めた祝福というのは、やはり目に見えるようにした方がよろしいのでしょうか?」
「ああ、そうだね。お願いするよ」
「分かりました」
とは言っても私に思いつくのはちょっとキラキラを降らせるくらいなんだけど。それでもまあ分かりやすいっちゃ分かりやすい。
「その後は適当にしてもらって構わないよ。状況によっては少し冷たい態度をとるかもしれないけど、気にしなくていいからね」
冷たい態度。その状況というのがどのような時なのかは分からない。だけどこのパーティーには何かがあると確信した。
途中から入場することも、真っ赤なドレスも、どうやら私に目立って欲しいのだろう。
まあいいけどね。何も言われてないということは何も知らなくていいということだ。私は殿下の言う通りにするだけ。
私たちの歩みに合わせて、突き当たりに見える大きな扉がゆっくりと開いた。賑やかな音が聞こえる。あの向こうはパーティー会場だ。
……やらかさないようにしないと。
私は大きく息をついて背筋を伸ばし、前だけを見据えた。
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