ゲームは終わっても人生は続く〜入れ替わり令嬢のその後〜

紅蘭

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祝福

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「ユリウス・アルベルト殿下、エレナ・アルベルト殿下、ご入場です!」


その声と共に扉をくぐる。緊張はしているが、ユリウス殿下の隣にいたら大丈夫だと確信がある。何かやらかしてもフォローしてくれるだろう。

私たちが階段を降り始めた途端、会場がだんだんと静かになっていった。そしてシン、と静まり返る。

微笑みを浮かべて前を向いて歩き続けるが、心の中ではおろおろ。

……なに?なんでこんな静かになったの?何かおかしいの!?

会場中の皆がこちらを見ているんじゃないかと思うほど、視線を感じる。いや、実際そうなのだろう。

殿下は先程言っていた通り、カイやリリーの方へと足を進める。私も一緒に歩く。人垣がさっと分かれ、道ができた。

いや、ほんとに何この状況。そんなに見なくていいよ。普通にお話ししてていいよ。こっちを見てないでパーティーを楽しんでてよ。

注目されることには慣れている。だけどその理由が分からないと狼狽えてしまう。

カイとリリーの前で止まる。そして私は殿下から離れ、一歩前に出た。


「殿下、リリー様、この度は本当におめでとうございます。わたくしには大したことはできませんが……レイラ様の歩む道にたくさんの光がありますよう、祝福を」


魔力を込めて祝福をする。魔力が僅かに減り、リリーの腕の中のレイラ様へキラキラと光が降り注いだ。もちろん、このキラキラはおまけのエフェクトだ。

おお、とあちこちから感嘆の声が。

カイとリリーが微笑む。


「ありがとう、エレナ。エレナに祝福をもらい、レイラも喜んでいる」


その言葉にレイラ様を見ると、確かに少し笑っているように見えた。……偶然だろう。


「何かお力になれることがございましたら、いつでもおっしゃってくださいませ。わたくしにできることでしたら、なんでも致しますわ」

「ああ、ありがとう」


これでいいんだよね?私がカイ達の味方だって分かればいいって話だったよね?

微笑んだまま頭を下げ一歩下がると、横から手が差し伸べられた。ホッと息を吐く。

殿下が何も言わないと言うことは、これで十分なのだろう。その手を取り、カイ達から離れる。殿下の歩みに合わせて進むと、その先にはクリスとヘンドリックお兄様がいた。

少しずつ会場に賑やかさが戻ってくるが、やはりあちこちからの視線は感じる。どうしてこんなに見られているのだろう。


「お疲れ様でした、エレナ様」


クリスが笑顔を浮かべた。

久しぶりに令嬢モードのクリスを見た。久しぶりすぎて違和感がすごい。


「ドレス、とてもお似合いですね。あまりの美しさに驚きましたわ」

「ありがとう」


私も驚いたよ、って言いたいけど、この会話が誰に聞かれているか分からない。余計なことを口走らないようにするには、最低限の言葉のみを口に出すことだ。


「本当、とても綺麗ですわね」


後ろから聞こえた声に振り向くと、ベアトリクスとレオンが。そう言うベアトリクスも超綺麗。迫力美人って感じ。


「わたくしは驚きませんでしたよ。お姉さまのお美しさは最初からわかっておりましたもの」


今度はカミラとマクシミリアンだ。

……なんで皆そんな続々と集まってくるのよ。


「ありがとう。皆様もとてもお綺麗ですわ」


すっとユリウス殿下が離れる。えっ、と思った時にはもう既に背中を向けてどこかへ向かって行ってしまった。

何も言わず、視線も合わせずに。これがさっき言っていた「状況によっては」ということだろうか。

だけどその状況というのが全然分からない。何も不自然なことは見られないのだ。

クリスがお兄様から離れて私の隣に立った。ベアトリクスも反対の隣に、カミラはクリスの隣に。

……ちょっと待ちなよ。皆そんな簡単にパートナーから離れるのは良くないでしょ。しかし男性陣は誰も何も言わず、少し隣だったり、後ろだったりに立っている。

コソコソ、ヒソヒソとこちらを見ながら何かを言っている人が多数。変な噂をされていないか不安になる。


「今日はヨハン様は?」

「招待はされたみたいだけど来ているかは分かんない」


周りに聞こえないよう、小さな声でクリスが言った。


「兄様はエスコートする相手もいないし、来てないかもね」


ああ、そうか。ヨハンにはまだ婚約者がいないのだ。いくらでも立候補する令嬢はいるだろうが、選ばないのはヨハンの意思だろう。


「じゃあフロレンツもかしら?」


確かフロレンツもまだ独り身だったはず。


「うん、そうかも」


そんな会話をしていると、すっとマクシミリアンが私たちの前に出て、誰かと話し始めた。お城の中で見たことはあるけど誰かは分からない。


「エレナ、腹減っただろ何か取って来るか?」

「いえ、レオン様。そのようなことをわざわざ……」


レオンに食事を取りに行かせるなんて申し訳なさすぎる。そのくらい自分で行く。

しかしレオンはにかっと笑い、言った。


「気にしなくていい。適当にとって来るな!」

「飲み物ももらってきてちょうだい」


ベアトリクスがレオンに言い、レオンは頷いて離れていった。二人の雰囲気はとてもいい。さすが、夫婦歴六年。


後ろからヘンドリックお兄様の声が聞こえる。誰かと話をしているようだ。

……ああ、なんか退屈。

こういう場で話しかけていいのは自分よりも身分の低い人だ。つまり、どれだけ話したそうにチラチラ見られても、私に話しかけて来る人は誰もいない。かと言って話しかける気もない。

ユリウス殿下はどっか行っちゃうし、知ってる顔もあんまりいないし、いつもみたいに気軽に皆と話ができないし。パーティーってあんまり好きじゃない。
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