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処分
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涙が止まるまではかなり時間を要した。殿下は何も言わずに私の背中を撫でてくれていた。
グシグシと袖で目を擦る。残った涙が全て拭き取られ、私は隠すように殿下から顔を背けた。
「すっきりした?」
「……ええ、すっきりしてしまいました」
話してしまって気持ちが随分軽くなった。だから話したくなかったのだけど。殿下には勝てない。
「君はさっきの僕の質問にまともに答えられなかったね」
さっきの質問とはどれのことだろうか。少し考えてラルフのことだと気が付いた。
「忘れないように記憶を閉じ込めるよりも先に、君は現実を受け止めるべきだったんだよ」
「……返す言葉もございません」
殿下の言う通りだ。私がしていたのはただの現実逃避で、一種の自己陶酔だった。
「王都へ戻ったら彼の想いを探し出そう。そして君がそれを実現する。それが君が彼のためにできることだよ」
ラルフの想い。ラルフの願い。見ていた未来。それを私が実現する。ラルフの代わりに。
それは悪夢にうなされるよりも、あの時を何度も思い出すことよりも、ラルフが喜んでくれそうな気がした。
「……はい」
頷いた私に、殿下はとても温かな目で微笑んだ。
「おはよう」
窓から差し込む光に目を細める。ユリウス殿下はすぐ隣で、私を覗き込んでいた。
「おはようございます」
寝ていた。いつ寝たかも覚えていないくらい、爆睡していた。
「よく寝れたみたいだね」
「……はい」
何日ぶりだろうか。悪夢も見ることなく、一度も目が覚めることもなかった。心の内を話したことがよかったのだろう。
「あまりに気持ちよさそうに寝ているから起こせなかったよ」
そう言われて窓を見る。なんだか朝の日差しではない気がする。
「今何時ですか?」
「9時くらいかな」
……まじか。寝過ぎた。
「ちなみに殿下は何時ごろ起きられたのです?」
「5時だよ」
5時から9時の4時間。ずっとベッドから出ずにいたのだろうか。殿下を見るとにこっと微笑んだ。
「君の寝顔を見てたら4時間なんて一瞬だよ」
……この人たまに怖い。
引いてしまったのが顔に出ていたのか、殿下は可笑そうに笑った。
「冗談だよ」
ほんとに?絶対本気だったでしょ。起き上がってベッドから降りる。着替えをしているとお腹が鳴った。
ちょっと待って、恥ずかしすぎるんだけど。そう思っても私のお腹は更に鳴る。顔が真っ赤になっているのが自分でも分かる。
「……すみません」
訳もなく謝る私に、殿下は言った。
「健康な証拠だよ」
まあ確かに。昨日までは食事もあまり欲しくなかったしお腹も空かなかった。
「食べることは生きることなんだよ。君の体が食べ物を欲しているのが僕は嬉しい」
「……いいことをおっしゃいますね」
そう言うと殿下はただ笑った。こういうところを見ると、やっぱり年上なんだなと思う。
「ありがとうございました」
着替え終わって改めて頭を下げると、殿下は「どういたしまして」と微笑む。私が健康になったのは間違いなく殿下のおかげだ。
「じゃあ外で何か食べて、用事を済ませて帰ろうか」
殿下の言葉に私は頷いた。
露天で買った食べ物を歩きながら食べ、私たちはフェルマー伯爵邸へ来た。出迎えてくれたのはやはりアメリア。
ああ、口に食べ物付いてないかな。どっかで洗って来ればよかった。
口の周りを気にして触っていると、ユリウス殿下がコソッと「大丈夫だよ」と囁いた。この人の察し能力はやはり高い。
アメリアに通されたのは応接室だった。向かい合って座り、昨日のことを話す。
「では、あの植物はもうないのですね」
「はい。そう断定してもよろしいかと」
私がそう言うと、アメリアは泣き始めてしまった。
え、何、私余計なことしたかな?やりすぎたかな?
不安に思っていると、アメリアは「ありがとうございます」と泣きながら言った。
ああ、嬉しいのか。よかった。
「これで、ラインハルト様はもう苦しめられることはないのですね……」
犯した罪は消えない。だけど新たな罪はもう生み出さないだろう。弱いけれど優しい人だ。弱さを知っているからこその強さがあると思う。きっと民のために大事を成してくれる。そんな予感がある。
「伯爵は?」
ユリウス殿下が横からそう聞くと、アメリアは涙を拭き、頷いた。そしてベルを鳴らす。
少しして入って来たのは小太りの男とキツそうな女。この二人がフェルマー伯爵と伯爵夫人か。
二人は私たちの方を見ることなく、だけど悪いことをしたとも思ってなさそうな様子だ。堂々とそこに立っている。
「おい、アメリア。わしが留守の間くらいしっかりしたらどうだ?わしだって暇じゃないんだ」
ネチネチとした言い方だった。普段からこんな調子で話しているのだろうか。アメリアは気にした様子もなく、にっこりと笑う。
「伯爵、御用があるのはわたくしではありませんよ」
伯爵は顔を真っ赤にした。言い返されたことに対する怒りか羞恥か。どちらもかもしれない。
「私は来る前に前触れを出したはずだが?」
ユリウス殿下の温度のない声にフェルマー夫妻は、今度は顔を真っ青にした。
「は、はいっ!申し訳ございません。大事な用事がございまして……!」
頭を下げる伯爵を冷ややかな目で見る殿下。怒ってはいないけど気に入らない様子だ。
「私は屋敷で待て、と言ったな。私の命令よりも大事な用事があるのか?」
「も、申し訳ございません……」
「聞いているのだ、答えろ。私の命令よりも大事な用があるのか?」
意地悪だな。ユリウス殿下の命令を上回るのは陛下の命令くらいしかないだろう。
「ご、ございません……!」
「ではなぜいなかった」
わあ、しつこい。伯爵が「殿下が来るから逃げました」なんて言える訳ないのに。というか、麻薬についてはまだ罪を問えるほどのことが分かってないんだから、フェルマー伯爵は逃げる必要なかったんじゃないの?むしろ逃げたことの方が罪というか……かわいそうに。
その愚かさがあまりに哀れで、私は殿下を見上げた。
「殿下、そのくらいでよろしいのでは?」
フェルマー夫妻が明らかにホッとした表情を浮かべた。しかし別に私は味方ではないし、許してもいない。
「さっさと処分して王都へ戻りましょう」
さっと顔色が変わる二人。殿下は「処分はエレナに任せるよ」と微笑んだ。
あ、私が決めていいんだ。では遠慮なく。
「それでは、フェルマー伯爵及び伯爵夫人は、第一皇子であるユリウス殿下の命令に背き、勝手な行いをしました。よってフェルマー家の伯爵位を奪還し、男爵位とします。当主はラインハルト・フェルマーとし、フェルマー元伯爵と元伯爵夫人、その他親族につきましては、今後一切、フェルマー家と関わりを持つこと、またフェルマーを名乗ることを禁じます」
フェルマー元伯爵と元伯爵夫人は崩れ落ちた。これでこの二人は地位も権力もお金もなくなった。この先は生きていくだけで精一杯だろう。いや、生きていくのすら難しいかもしれない。まあそこはラインハルトやアメリアに任せるとして。
「ラインハルトならびにアメリア。あなたたちはこの地を守り、民を導きなさい。二度とあのような物をこの国に入れることはないように」
この街は王都でも結構問題視されている。隣国と接している上にこれといった特産もなければ強みもない。そして今回の騒動だ。ぶっちゃけ誰もがここを治めたくないと思っている。ラインハルトへの処罰としては十分だろう。
アメリアは私たちへ膝をついた。
「謹んでお受けいたします」
そして私たちのこの街での仕事は終わった。
グシグシと袖で目を擦る。残った涙が全て拭き取られ、私は隠すように殿下から顔を背けた。
「すっきりした?」
「……ええ、すっきりしてしまいました」
話してしまって気持ちが随分軽くなった。だから話したくなかったのだけど。殿下には勝てない。
「君はさっきの僕の質問にまともに答えられなかったね」
さっきの質問とはどれのことだろうか。少し考えてラルフのことだと気が付いた。
「忘れないように記憶を閉じ込めるよりも先に、君は現実を受け止めるべきだったんだよ」
「……返す言葉もございません」
殿下の言う通りだ。私がしていたのはただの現実逃避で、一種の自己陶酔だった。
「王都へ戻ったら彼の想いを探し出そう。そして君がそれを実現する。それが君が彼のためにできることだよ」
ラルフの想い。ラルフの願い。見ていた未来。それを私が実現する。ラルフの代わりに。
それは悪夢にうなされるよりも、あの時を何度も思い出すことよりも、ラルフが喜んでくれそうな気がした。
「……はい」
頷いた私に、殿下はとても温かな目で微笑んだ。
「おはよう」
窓から差し込む光に目を細める。ユリウス殿下はすぐ隣で、私を覗き込んでいた。
「おはようございます」
寝ていた。いつ寝たかも覚えていないくらい、爆睡していた。
「よく寝れたみたいだね」
「……はい」
何日ぶりだろうか。悪夢も見ることなく、一度も目が覚めることもなかった。心の内を話したことがよかったのだろう。
「あまりに気持ちよさそうに寝ているから起こせなかったよ」
そう言われて窓を見る。なんだか朝の日差しではない気がする。
「今何時ですか?」
「9時くらいかな」
……まじか。寝過ぎた。
「ちなみに殿下は何時ごろ起きられたのです?」
「5時だよ」
5時から9時の4時間。ずっとベッドから出ずにいたのだろうか。殿下を見るとにこっと微笑んだ。
「君の寝顔を見てたら4時間なんて一瞬だよ」
……この人たまに怖い。
引いてしまったのが顔に出ていたのか、殿下は可笑そうに笑った。
「冗談だよ」
ほんとに?絶対本気だったでしょ。起き上がってベッドから降りる。着替えをしているとお腹が鳴った。
ちょっと待って、恥ずかしすぎるんだけど。そう思っても私のお腹は更に鳴る。顔が真っ赤になっているのが自分でも分かる。
「……すみません」
訳もなく謝る私に、殿下は言った。
「健康な証拠だよ」
まあ確かに。昨日までは食事もあまり欲しくなかったしお腹も空かなかった。
「食べることは生きることなんだよ。君の体が食べ物を欲しているのが僕は嬉しい」
「……いいことをおっしゃいますね」
そう言うと殿下はただ笑った。こういうところを見ると、やっぱり年上なんだなと思う。
「ありがとうございました」
着替え終わって改めて頭を下げると、殿下は「どういたしまして」と微笑む。私が健康になったのは間違いなく殿下のおかげだ。
「じゃあ外で何か食べて、用事を済ませて帰ろうか」
殿下の言葉に私は頷いた。
露天で買った食べ物を歩きながら食べ、私たちはフェルマー伯爵邸へ来た。出迎えてくれたのはやはりアメリア。
ああ、口に食べ物付いてないかな。どっかで洗って来ればよかった。
口の周りを気にして触っていると、ユリウス殿下がコソッと「大丈夫だよ」と囁いた。この人の察し能力はやはり高い。
アメリアに通されたのは応接室だった。向かい合って座り、昨日のことを話す。
「では、あの植物はもうないのですね」
「はい。そう断定してもよろしいかと」
私がそう言うと、アメリアは泣き始めてしまった。
え、何、私余計なことしたかな?やりすぎたかな?
不安に思っていると、アメリアは「ありがとうございます」と泣きながら言った。
ああ、嬉しいのか。よかった。
「これで、ラインハルト様はもう苦しめられることはないのですね……」
犯した罪は消えない。だけど新たな罪はもう生み出さないだろう。弱いけれど優しい人だ。弱さを知っているからこその強さがあると思う。きっと民のために大事を成してくれる。そんな予感がある。
「伯爵は?」
ユリウス殿下が横からそう聞くと、アメリアは涙を拭き、頷いた。そしてベルを鳴らす。
少しして入って来たのは小太りの男とキツそうな女。この二人がフェルマー伯爵と伯爵夫人か。
二人は私たちの方を見ることなく、だけど悪いことをしたとも思ってなさそうな様子だ。堂々とそこに立っている。
「おい、アメリア。わしが留守の間くらいしっかりしたらどうだ?わしだって暇じゃないんだ」
ネチネチとした言い方だった。普段からこんな調子で話しているのだろうか。アメリアは気にした様子もなく、にっこりと笑う。
「伯爵、御用があるのはわたくしではありませんよ」
伯爵は顔を真っ赤にした。言い返されたことに対する怒りか羞恥か。どちらもかもしれない。
「私は来る前に前触れを出したはずだが?」
ユリウス殿下の温度のない声にフェルマー夫妻は、今度は顔を真っ青にした。
「は、はいっ!申し訳ございません。大事な用事がございまして……!」
頭を下げる伯爵を冷ややかな目で見る殿下。怒ってはいないけど気に入らない様子だ。
「私は屋敷で待て、と言ったな。私の命令よりも大事な用事があるのか?」
「も、申し訳ございません……」
「聞いているのだ、答えろ。私の命令よりも大事な用があるのか?」
意地悪だな。ユリウス殿下の命令を上回るのは陛下の命令くらいしかないだろう。
「ご、ございません……!」
「ではなぜいなかった」
わあ、しつこい。伯爵が「殿下が来るから逃げました」なんて言える訳ないのに。というか、麻薬についてはまだ罪を問えるほどのことが分かってないんだから、フェルマー伯爵は逃げる必要なかったんじゃないの?むしろ逃げたことの方が罪というか……かわいそうに。
その愚かさがあまりに哀れで、私は殿下を見上げた。
「殿下、そのくらいでよろしいのでは?」
フェルマー夫妻が明らかにホッとした表情を浮かべた。しかし別に私は味方ではないし、許してもいない。
「さっさと処分して王都へ戻りましょう」
さっと顔色が変わる二人。殿下は「処分はエレナに任せるよ」と微笑んだ。
あ、私が決めていいんだ。では遠慮なく。
「それでは、フェルマー伯爵及び伯爵夫人は、第一皇子であるユリウス殿下の命令に背き、勝手な行いをしました。よってフェルマー家の伯爵位を奪還し、男爵位とします。当主はラインハルト・フェルマーとし、フェルマー元伯爵と元伯爵夫人、その他親族につきましては、今後一切、フェルマー家と関わりを持つこと、またフェルマーを名乗ることを禁じます」
フェルマー元伯爵と元伯爵夫人は崩れ落ちた。これでこの二人は地位も権力もお金もなくなった。この先は生きていくだけで精一杯だろう。いや、生きていくのすら難しいかもしれない。まあそこはラインハルトやアメリアに任せるとして。
「ラインハルトならびにアメリア。あなたたちはこの地を守り、民を導きなさい。二度とあのような物をこの国に入れることはないように」
この街は王都でも結構問題視されている。隣国と接している上にこれといった特産もなければ強みもない。そして今回の騒動だ。ぶっちゃけ誰もがここを治めたくないと思っている。ラインハルトへの処罰としては十分だろう。
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