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求婚
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アリアはすぐに来た。ヨハンを見て、一瞬戸惑いの表情を浮かべたが、すぐにいつものアリアに戻った。
「突然呼んでごめんなさい。一緒にお話を聞きたいと思って」
それだけでアリアはなんの話か察したようだ。私の隣に座るようにすすめると、アリアは「いいえ」と頑なに断った。
「いいから、座ってちょうだい。大事な話なの」
手を引っ張って無理やり座らせる。どうせ身内しかいない室内だ。アリアを使用人だからって馬鹿にする人もいない。
「ヨハン様に求婚されたこと、どうして教えてくれなかったの?」
アリアは俯いた。
……別に責めているわけではないんだけど。
「申し訳ありません。ただ、エレナ様に報告する必要はないと判断いたしました」
「……確かにそうね。別にプライベートのことまでわたくしに報告する必要はないわね」
言われてみると当たり前のことだった。いけない、いけない。
「アリア、エレナちゃんはアリアの判断に任せる、と言ってくれたよ」
ヨハンが言う。アリアは俯いたまま。
「もう一度言わせてもらいたい。私と結婚してくれ」
おおお、人のプロポーズなんて初めて見た。いいじゃん、かっこいいじゃん。さすがヨハン!
しかしアリアは何も言わない。
「……兄様嫌われてるんじゃないの?」
クリスがサラッと言った。あまりにも鋭すぎるその言葉はヨハンの胸を抉ったようだ。明らかに傷付いた表情を浮かべている。
確かにアリアはとても喜んでいるようには見えない。なんと言って慰めようかと思っていると、口を開いたのはアリアだった。
「嫌いだなんて、まさか……」
いつものきびきびしたアリアからは考えられないほど、消え入りそうな声。
「ですが、結婚はお受けすることができません」
部屋の中に沈黙が降りた。ヨハンはというと微笑んでいるだけ。次の言葉を考えているのだろうか。
「……えっと、アリア?理由を聞いてもいいかしら?」
いや、もちろん好きでもない人と結婚はしたくないだろう。でもそんなにはっきりと断ることもないのに、と少し思った。
「あまり大きな声では言えないけれど、ヨハン様はわたくしの知っている殿方の中でもかなり、その、まともな方かと思いますの」
向こうから「どういう意味だ」と冷たい声が聞こえてきたが、無視。言葉通りだ。
「お優しいし、聡明な方よ」
「少し腹黒いけどね」
隣からクリスが付け加えた。今そういうことは言わないで欲しい。
「決めるのはそう急がなくてもいいと思わない?」
アリアは私の言葉に首を振った。
「違います、エレナ様。お相手がどんな方であろうと、私は結婚をするつもりはありません」
それは知ってるけど、アリアの気持ちが一番だけど……
「だけど、アリア。わたくしは今後もお城を留守にすることがあると思うの。その時に、アリアにはあまり寂しい想いをさせたくない。できれば、ここ以外にも居場所を見つけてもらいたいと思っているわ」
私がいない間、アリアがどんな生活を送っているかは知らない。だけど、ヨハンと結婚して家を持てば、少しは気を抜くこともできるのではないかと思っている。
アリアは首を傾げる。
「アリア、勘違いするな。それはお前が結婚しても手放す気など一切ない」
ヘンドリックお兄様が口を挟んだ。
「ほ、本当ですか?結婚してもエレナ様のお側においてくださるのですか?」
え?そりゃそうだけど……
「え!?待ってください、結婚したら退職ですか!?だとしたらわたくしは全力で反対したいのですけれど……!」
バッとヨハンを見ると、ヨハンは「はは」と笑った。
「先日は碌に話も聞いてもらえなかったから、今言うけれど、結婚しても無理に家に入らなくていいし、子供も産む必要はない。うちの両親との付き合いも考えなくていい。もちろん、エレナちゃんと一緒に王都を出たいのならそれも止めないよ」
ほう、つまりは名前だけ、みたいな感じか?クリスとヘンドリックお兄様みたいな。
「だけどお世継ぎはどうされるのですか?」
クレヴィング家は今のところ後継はヨハンとクリスのみ。クリスに子供が生まれることはほぼないだろうから、ヨハンの子供がその後を継ぐことになると思っていた。
「考えなくてもいいよ。父上も義母上も好きにしなさい、としか言われないし」
「親戚から誰か呼ぶか、爵位を返上するかじゃない?」
クリスもあっけらかんと言った。
そ、そんな感じなんだ……クレヴィング家って色々とすごい。
アリアはポカンとしている。
私を手を上げた。
「もう一つお聞かせください。どうしてアリアなのですか?」
貴族とはいっても身分のないアリア。ヨハンはどこの令嬢でもよりどりみどりだろう。
「ご実家がないこと。エレナちゃんに属する人間なこと。諸々も考えると都合がいい。そして何よりも、落ち着いた女性って魅力的だよね」
ここで急に「前から好きでした」なんて言われるとは?って思うけど、都合がよくて、性格的にも悪くないからってことならまあ信頼はできる。
「もう一度言うよ。アリア、私と結婚してくれないか?」
アリアは今度は首をふらなかった。
「……少々、考える時間をいただけますか?」
ふむふむ、可能性はありそう。あとはアリアの気持ちだけ。しかし、ヨハンはいつ誰と結婚するのかとずっと気になっていたけど、アリアはだったら文句なしだ。
まだ決まったわけでもないのに嬉しくて、顔がにやけた。
「突然呼んでごめんなさい。一緒にお話を聞きたいと思って」
それだけでアリアはなんの話か察したようだ。私の隣に座るようにすすめると、アリアは「いいえ」と頑なに断った。
「いいから、座ってちょうだい。大事な話なの」
手を引っ張って無理やり座らせる。どうせ身内しかいない室内だ。アリアを使用人だからって馬鹿にする人もいない。
「ヨハン様に求婚されたこと、どうして教えてくれなかったの?」
アリアは俯いた。
……別に責めているわけではないんだけど。
「申し訳ありません。ただ、エレナ様に報告する必要はないと判断いたしました」
「……確かにそうね。別にプライベートのことまでわたくしに報告する必要はないわね」
言われてみると当たり前のことだった。いけない、いけない。
「アリア、エレナちゃんはアリアの判断に任せる、と言ってくれたよ」
ヨハンが言う。アリアは俯いたまま。
「もう一度言わせてもらいたい。私と結婚してくれ」
おおお、人のプロポーズなんて初めて見た。いいじゃん、かっこいいじゃん。さすがヨハン!
しかしアリアは何も言わない。
「……兄様嫌われてるんじゃないの?」
クリスがサラッと言った。あまりにも鋭すぎるその言葉はヨハンの胸を抉ったようだ。明らかに傷付いた表情を浮かべている。
確かにアリアはとても喜んでいるようには見えない。なんと言って慰めようかと思っていると、口を開いたのはアリアだった。
「嫌いだなんて、まさか……」
いつものきびきびしたアリアからは考えられないほど、消え入りそうな声。
「ですが、結婚はお受けすることができません」
部屋の中に沈黙が降りた。ヨハンはというと微笑んでいるだけ。次の言葉を考えているのだろうか。
「……えっと、アリア?理由を聞いてもいいかしら?」
いや、もちろん好きでもない人と結婚はしたくないだろう。でもそんなにはっきりと断ることもないのに、と少し思った。
「あまり大きな声では言えないけれど、ヨハン様はわたくしの知っている殿方の中でもかなり、その、まともな方かと思いますの」
向こうから「どういう意味だ」と冷たい声が聞こえてきたが、無視。言葉通りだ。
「お優しいし、聡明な方よ」
「少し腹黒いけどね」
隣からクリスが付け加えた。今そういうことは言わないで欲しい。
「決めるのはそう急がなくてもいいと思わない?」
アリアは私の言葉に首を振った。
「違います、エレナ様。お相手がどんな方であろうと、私は結婚をするつもりはありません」
それは知ってるけど、アリアの気持ちが一番だけど……
「だけど、アリア。わたくしは今後もお城を留守にすることがあると思うの。その時に、アリアにはあまり寂しい想いをさせたくない。できれば、ここ以外にも居場所を見つけてもらいたいと思っているわ」
私がいない間、アリアがどんな生活を送っているかは知らない。だけど、ヨハンと結婚して家を持てば、少しは気を抜くこともできるのではないかと思っている。
アリアは首を傾げる。
「アリア、勘違いするな。それはお前が結婚しても手放す気など一切ない」
ヘンドリックお兄様が口を挟んだ。
「ほ、本当ですか?結婚してもエレナ様のお側においてくださるのですか?」
え?そりゃそうだけど……
「え!?待ってください、結婚したら退職ですか!?だとしたらわたくしは全力で反対したいのですけれど……!」
バッとヨハンを見ると、ヨハンは「はは」と笑った。
「先日は碌に話も聞いてもらえなかったから、今言うけれど、結婚しても無理に家に入らなくていいし、子供も産む必要はない。うちの両親との付き合いも考えなくていい。もちろん、エレナちゃんと一緒に王都を出たいのならそれも止めないよ」
ほう、つまりは名前だけ、みたいな感じか?クリスとヘンドリックお兄様みたいな。
「だけどお世継ぎはどうされるのですか?」
クレヴィング家は今のところ後継はヨハンとクリスのみ。クリスに子供が生まれることはほぼないだろうから、ヨハンの子供がその後を継ぐことになると思っていた。
「考えなくてもいいよ。父上も義母上も好きにしなさい、としか言われないし」
「親戚から誰か呼ぶか、爵位を返上するかじゃない?」
クリスもあっけらかんと言った。
そ、そんな感じなんだ……クレヴィング家って色々とすごい。
アリアはポカンとしている。
私を手を上げた。
「もう一つお聞かせください。どうしてアリアなのですか?」
貴族とはいっても身分のないアリア。ヨハンはどこの令嬢でもよりどりみどりだろう。
「ご実家がないこと。エレナちゃんに属する人間なこと。諸々も考えると都合がいい。そして何よりも、落ち着いた女性って魅力的だよね」
ここで急に「前から好きでした」なんて言われるとは?って思うけど、都合がよくて、性格的にも悪くないからってことならまあ信頼はできる。
「もう一度言うよ。アリア、私と結婚してくれないか?」
アリアは今度は首をふらなかった。
「……少々、考える時間をいただけますか?」
ふむふむ、可能性はありそう。あとはアリアの気持ちだけ。しかし、ヨハンはいつ誰と結婚するのかとずっと気になっていたけど、アリアはだったら文句なしだ。
まだ決まったわけでもないのに嬉しくて、顔がにやけた。
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