29 / 117
ユルンの秘密
目が覚めた時は部屋の中が真っ暗だった。窓の外は暗い。確か食堂で皆で話をしていた時にギドに挑発されて……。
「ここは……」
「あなたの部屋だ」
思わぬ声に笑いが漏れた。人の気配はしていたが、てっきりマリーだと思っていた。
くすくすと笑っていると明かりがついた。眩しさに目を細め、こちらへ近付く足音を聞く。ベッドに腰掛けたまま見上げるとエーリッヒ様は「なぜ笑う」と私を見た。
「いつぞやを思い出しまして」
あの時はファルラニアだった。パーティー中に倒れた私を抱き止め、目が覚めるまでそこにいてくれた。
体はどこも痛くない。ということは誰かが抱き止めてくれたはず。
「今回もエーリッヒ様が?」
「ああ」
「ありがとうございます」
あ、寝衣を着てる。マリーが着替えさせてくれたのかしら。なんて考えているとエーリッヒ様がボソリと言った。
「……ここにいるのはマリーには内緒で頼む」
ええ、と頷く。私だってマリーに知られたら怒られるなんてものではないだろう。夜に殿方を部屋に入れるなんて。エーリッヒ様じゃなければ短剣を突き付けていたかもしれない。
「2人で話したいことがある」
「では念の為扉を閉めておきましょうね」
せっかく許可をもらったのだ。使わない手はない。
紙に魔法陣を描く。施錠の魔法陣だ。少し複雑にしておくと開けられる人はほとんどいないだろう。
「ついでに防音も重ねておきましょう」
私の手元を見てエーリッヒ様は「優秀なのだな」と呟いた。優秀だなんて烏滸がましいが。
「一応、第一王子の文官ですから」
描き上がった魔法陣を扉に貼る。魔石は明かり用のものを使おう。そう思って明かりの魔法陣を見た。そこには魔石がある。だが、それは本来あるべき場所にない。
「……どういうことですか?」
「あなたには分かるか」
この魔法陣はとても簡単な造りだ。作動させるためには魔法陣の上に魔石がないといけないはず。だが魔石は魔法陣の横にある。
エーリッヒ様は私の隣に立ち、扉に貼った魔法陣に触れた。すると、魔法陣が光った。間違いない。魔法陣は今作動した。魔石を使わずに。
「……すごいな。このレベルの魔法陣を描ける人間は今のユルンにはいない」
「ちょ、ちょっと待ってください……!今何をしたのですか?」
魔法陣のレベルなんてどうでもいい。そんなことよりも何故魔石を使わずに魔法陣を起動させられたのか、だ。
エーリッヒ様は言った。
「これがユルンの最大の秘密だ。ユルンの子は魔力を有している」
言葉が出なかった。人間が魔力を持つなど。魔石がなくとも魔法陣を使うことができるとは。
……信じられない。
「あなたも祝福を受けた。魔法陣に触れるだけで起動することができるはずだ」
「……冗談でしょう?」
そう言ったがエーリッヒ様は冗談を言うような人ではない。
ならば何故それが他国に伝わっていないのだろう。それが知られればきっとユルンの民は無事ではすまない。他国に連れ出され、魔石代わりに利用されることは容易に想像できる。
「……だから魔法陣は規制されている?ユルンの民すらそのことを知らない?」
たどり着いた答え。呟くとエーリッヒ様は「正解だ」と頷いた。
「ユルンの民も神の許可さえあれば他国へ出ることができる。過去のユルン王はユルンの民を守るため、その事実を秘匿し、魔法陣の使用を規制した」
納得がいった。
「城内の魔法陣は全て隠されている。見える魔法陣は魔石による起動しかできないような造りになっている」
「ああ、それで見たことのない要素が入っていたのですね」
魔法陣はいくつかの要素で成り立っている。その要素が入れば入るほど複雑な魔法を作り上げることができるが、要素同士にも相性の良し悪しがあるので、一から魔法陣を作るのは簡単なことではない。
そして私は魔法陣の要素をほとんど知っている。それなのにここへ来て知らない要素を見た。いつか研究したいと思っていたが、それがそうだったのだ。
「これはこの話のために持って来たものだ」
確かに元々置いてあったものとは違う。
エーリッヒ様が壁の一部に触れた。それは結構高いところで、私だったら手を伸ばさないと届かない場所。間違えて触れることはまずないであろう場所だ。
部屋の中が一層明るくなり、エーリッヒ様は明かりの魔法陣が描かれた紙をくるくると閉じた。
「この話は他の3人には内緒ですか?」
「あなたが信頼できる者なら話しても良い」
エーリッヒ様は表情を変えずに言った。少し考えて首を横に振る。
誰にも言うべきではない。この秘密にはユルンの人たちの命運がかかっている。エーリッヒ様は眉を寄せて私を見た。
「……それよりも、私はまだここへいてもいいのですか?」
どう言う意味だ、と問われ、言葉のままです、と答えた。エーリッヒ様は何か言いたそうだったけど、先に口を開いた。
「先ほどギドが言ったことは全て本当です。私がこの手で奪った命は十や二十ではありません」
殺そうとして殺した人も、殺す気はなかったけど殺してしまった人もいる。
「ギドへ投げた短剣も無意識でした。エーリッヒ様を殺すつもりはありません。だけどあの攻撃性がいつエーリッヒ様に向くとも分かりません」
そんな私がここへいていい理由などない。今この瞬間に追い出されたとしてもおかしくない。
「あなたは自分の手が汚れていると言いました。だけど私の手はもっと汚れています。ここにいる資格などありません」
沈黙が降りた。いたたまれなくてスカートをギュッと握って俯く。少ししてエーリッヒ様は静かな声で言った。
「……それでもあなたは身内を殺したことはないだろう」
思いがけない言葉に顔を上げると、エーリッヒ様は真っ直ぐに私を見ていた。目が合う。視線は逸らされることなく、衝撃的な言葉を聞いた。
「私は兄を殺した」
ユルン前王。彼は半年前に亡くなった。そしてその後に王座についたのがエーリッヒ様だ。その原因は火事だと聞いている。
「私がこの手で刺し、兄の離宮に火をつけた」
兄もその側近も皆火に巻かれた。
そう言ったエーリッヒ様の表情は変わらない。だけど目には深い悲しみが見える気がする。
「……誰も知らないことだ」
どうしてエーリッヒ様はそのことを私に話したのだろう。そんな大事なことを……。
何か言わないといけない。そう思ったが何と言ったらいいか分からない。ただエーリッヒ様を見つめる。エーリッヒ様も私を見つめていた。
少し経つとエーリッヒ様は目を逸らした。
「あなたの手が汚れていようとも私は気にしない」
私はまだ何も言葉が出ない。何と答えたらいいか分からない。
「……少し外に出よう」
考える前に「はい」と頷いていた。
「ここは……」
「あなたの部屋だ」
思わぬ声に笑いが漏れた。人の気配はしていたが、てっきりマリーだと思っていた。
くすくすと笑っていると明かりがついた。眩しさに目を細め、こちらへ近付く足音を聞く。ベッドに腰掛けたまま見上げるとエーリッヒ様は「なぜ笑う」と私を見た。
「いつぞやを思い出しまして」
あの時はファルラニアだった。パーティー中に倒れた私を抱き止め、目が覚めるまでそこにいてくれた。
体はどこも痛くない。ということは誰かが抱き止めてくれたはず。
「今回もエーリッヒ様が?」
「ああ」
「ありがとうございます」
あ、寝衣を着てる。マリーが着替えさせてくれたのかしら。なんて考えているとエーリッヒ様がボソリと言った。
「……ここにいるのはマリーには内緒で頼む」
ええ、と頷く。私だってマリーに知られたら怒られるなんてものではないだろう。夜に殿方を部屋に入れるなんて。エーリッヒ様じゃなければ短剣を突き付けていたかもしれない。
「2人で話したいことがある」
「では念の為扉を閉めておきましょうね」
せっかく許可をもらったのだ。使わない手はない。
紙に魔法陣を描く。施錠の魔法陣だ。少し複雑にしておくと開けられる人はほとんどいないだろう。
「ついでに防音も重ねておきましょう」
私の手元を見てエーリッヒ様は「優秀なのだな」と呟いた。優秀だなんて烏滸がましいが。
「一応、第一王子の文官ですから」
描き上がった魔法陣を扉に貼る。魔石は明かり用のものを使おう。そう思って明かりの魔法陣を見た。そこには魔石がある。だが、それは本来あるべき場所にない。
「……どういうことですか?」
「あなたには分かるか」
この魔法陣はとても簡単な造りだ。作動させるためには魔法陣の上に魔石がないといけないはず。だが魔石は魔法陣の横にある。
エーリッヒ様は私の隣に立ち、扉に貼った魔法陣に触れた。すると、魔法陣が光った。間違いない。魔法陣は今作動した。魔石を使わずに。
「……すごいな。このレベルの魔法陣を描ける人間は今のユルンにはいない」
「ちょ、ちょっと待ってください……!今何をしたのですか?」
魔法陣のレベルなんてどうでもいい。そんなことよりも何故魔石を使わずに魔法陣を起動させられたのか、だ。
エーリッヒ様は言った。
「これがユルンの最大の秘密だ。ユルンの子は魔力を有している」
言葉が出なかった。人間が魔力を持つなど。魔石がなくとも魔法陣を使うことができるとは。
……信じられない。
「あなたも祝福を受けた。魔法陣に触れるだけで起動することができるはずだ」
「……冗談でしょう?」
そう言ったがエーリッヒ様は冗談を言うような人ではない。
ならば何故それが他国に伝わっていないのだろう。それが知られればきっとユルンの民は無事ではすまない。他国に連れ出され、魔石代わりに利用されることは容易に想像できる。
「……だから魔法陣は規制されている?ユルンの民すらそのことを知らない?」
たどり着いた答え。呟くとエーリッヒ様は「正解だ」と頷いた。
「ユルンの民も神の許可さえあれば他国へ出ることができる。過去のユルン王はユルンの民を守るため、その事実を秘匿し、魔法陣の使用を規制した」
納得がいった。
「城内の魔法陣は全て隠されている。見える魔法陣は魔石による起動しかできないような造りになっている」
「ああ、それで見たことのない要素が入っていたのですね」
魔法陣はいくつかの要素で成り立っている。その要素が入れば入るほど複雑な魔法を作り上げることができるが、要素同士にも相性の良し悪しがあるので、一から魔法陣を作るのは簡単なことではない。
そして私は魔法陣の要素をほとんど知っている。それなのにここへ来て知らない要素を見た。いつか研究したいと思っていたが、それがそうだったのだ。
「これはこの話のために持って来たものだ」
確かに元々置いてあったものとは違う。
エーリッヒ様が壁の一部に触れた。それは結構高いところで、私だったら手を伸ばさないと届かない場所。間違えて触れることはまずないであろう場所だ。
部屋の中が一層明るくなり、エーリッヒ様は明かりの魔法陣が描かれた紙をくるくると閉じた。
「この話は他の3人には内緒ですか?」
「あなたが信頼できる者なら話しても良い」
エーリッヒ様は表情を変えずに言った。少し考えて首を横に振る。
誰にも言うべきではない。この秘密にはユルンの人たちの命運がかかっている。エーリッヒ様は眉を寄せて私を見た。
「……それよりも、私はまだここへいてもいいのですか?」
どう言う意味だ、と問われ、言葉のままです、と答えた。エーリッヒ様は何か言いたそうだったけど、先に口を開いた。
「先ほどギドが言ったことは全て本当です。私がこの手で奪った命は十や二十ではありません」
殺そうとして殺した人も、殺す気はなかったけど殺してしまった人もいる。
「ギドへ投げた短剣も無意識でした。エーリッヒ様を殺すつもりはありません。だけどあの攻撃性がいつエーリッヒ様に向くとも分かりません」
そんな私がここへいていい理由などない。今この瞬間に追い出されたとしてもおかしくない。
「あなたは自分の手が汚れていると言いました。だけど私の手はもっと汚れています。ここにいる資格などありません」
沈黙が降りた。いたたまれなくてスカートをギュッと握って俯く。少ししてエーリッヒ様は静かな声で言った。
「……それでもあなたは身内を殺したことはないだろう」
思いがけない言葉に顔を上げると、エーリッヒ様は真っ直ぐに私を見ていた。目が合う。視線は逸らされることなく、衝撃的な言葉を聞いた。
「私は兄を殺した」
ユルン前王。彼は半年前に亡くなった。そしてその後に王座についたのがエーリッヒ様だ。その原因は火事だと聞いている。
「私がこの手で刺し、兄の離宮に火をつけた」
兄もその側近も皆火に巻かれた。
そう言ったエーリッヒ様の表情は変わらない。だけど目には深い悲しみが見える気がする。
「……誰も知らないことだ」
どうしてエーリッヒ様はそのことを私に話したのだろう。そんな大事なことを……。
何か言わないといけない。そう思ったが何と言ったらいいか分からない。ただエーリッヒ様を見つめる。エーリッヒ様も私を見つめていた。
少し経つとエーリッヒ様は目を逸らした。
「あなたの手が汚れていようとも私は気にしない」
私はまだ何も言葉が出ない。何と答えたらいいか分からない。
「……少し外に出よう」
考える前に「はい」と頷いていた。
あなたにおすすめの小説
視えるので、公爵家へ嫁ぎます 〜弱小貴族の私に選択肢などありえません〜
ちより
恋愛
貴族と名乗るにはあまりにもお粗末な生活を送る弱小男爵家長女、ミラは生まれつき視える体質だった。
人ではないソレには、見ない、聞かない、関わらないを通してきたミラだったが、絶対的な権力を持つヴァロアナ公爵家当主にその能力を気づかれてしまう。年の離れた弟のため、ひいては実家の生活のため、公爵家が出した破格の縁談金を前にミラは視ることを条件とした婚約を受け入れる。
ーーその能力でヴァロアナ家に害のある人間を排除するようにーー
だが実際は、おぞましいソレを視ないよう気をつかう次期当主、ルーシスからの徐々に強くなる愛情に戸惑うばかりで……
毒状態の悪役令嬢は内緒の王太子に優しく治療(キス)されてます
娯遊戯空現
恋愛
ハイタッド公爵家の令嬢・セラフィン=ハイタッドは悪人だった……。
第二王子・アエルバートの婚約者の座を手に入れたセラフィンはゆくゆくは王妃となり国を牛耳るつもりでいた。しかし伯爵令嬢・ブレアナ=シュレイムの登場により、事態は一変する。
アエルバートがブレアナを気に入ってしまい、それに焦ったセラフィンが二人の仲を妨害した。
そんな折、セラフィンは自分が転生者であることとここが乙女ゲーム『治癒能力者(ヒーラー)の選ぶ未来』の世界であることを思い出す。
自分の行く末が破滅であることに気付くもすで事態は動き出した後で、婚約破棄&処刑を言い渡される。
処刑時に逃げようとしたセラフィンは命は助かったものの毒に冒されてしまった。
そこに謎の美形男性が現れ、いきなり唇を奪われて……。
緑の指を持つ娘
Moonshine
恋愛
べスは、田舎で粉ひきをして暮らしている地味な女の子、唯一の趣味は魔法使いの活躍する冒険の本を読むことくらいで、魔力もなければ学もない。ただ、ものすごく、植物を育てるのが得意な特技があった。
ある日幼馴染がべスの畑から勝手に薬草をもっていった事で、べスの静かな生活は大きくかわる・・
俺様魔術師と、純朴な田舎の娘の異世界恋愛物語。
第1章は完結いたしました!第2章の温泉湯けむり編スタートです。
ちょっと投稿は不定期になりますが、頑張りますね。
疲れた人、癒されたい人、みんなべスの温室に遊びにきてください。温室で癒されたら、今度はベスの温泉に遊びにきてくださいね!作者と一緒に、みんなでいい温泉に入って癒されませんか?
追放された香りの令嬢は、氷の宰相に溺愛されています ~契約結婚のはずが、心まで奪われました~
夢喰るか
恋愛
いわれのない汚名を着せられ、王都を追われた香水師の令嬢リシェル。
だが、彼女には「香りで人の内面を感じ取る魔法」が宿っていた。
冷徹で有能な宰相バートラムは、政略のため彼女を妻として迎えるが――彼女の香りが、彼の過去の傷を溶かしていく。
やがて二人は、王国を揺るがす陰謀の中心へと巻き込まれ……。
「君の香りが、私を生かしている」――冷たい政略結婚が、やがて運命の恋へ変わる。
成功条件は、まさかの婚約破棄!?
たぬきち25番
恋愛
「アリエッタ、あなたとの婚約を破棄する……」
王太子のアルベルト殿下は、そう告げた。
王妃教育に懸命に取り組んでいたアリエッタだったが、
それを聞いた彼女は……?
※他サイト様にも公開始めました!
追放聖女35歳、拾われ王妃になりました
真曽木トウル
恋愛
王女ルイーズは、両親と王太子だった兄を亡くした20歳から15年間、祖国を“聖女”として統治した。
自分は結婚も即位もすることなく、愛する兄の娘が女王として即位するまで国を守るために……。
ところが兄の娘メアリーと宰相たちの裏切りに遭い、自分が追放されることになってしまう。
とりあえず亡き母の母国に身を寄せようと考えたルイーズだったが、なぜか大学の学友だった他国の王ウィルフレッドが「うちに来い」と迎えに来る。
彼はルイーズが15年前に求婚を断った相手。
聖職者が必要なのかと思いきや、なぜかもう一回求婚されて??
大人なようで素直じゃない2人の両片想い婚。
●他作品とは特に世界観のつながりはありません。
●『小説家になろう』に先行して掲載しております。
聖女様と間違って召喚された腐女子ですが、申し訳ないので仕事します!
碧桜
恋愛
私は花園美月。20歳。派遣期間が終わり無職となった日、馴染の古書店で顔面偏差値高スペックなイケメンに出会う。さらに、そこで美少女が穴に吸い込まれそうになっていたのを助けようとして、私は古書店のイケメンと共に穴に落ちてしまい、異世界へ―。実は、聖女様として召喚されようとしてた美少女の代わりに、地味でオタクな私が間違って来てしまった!
落ちたその先の世界で出会ったのは、私の推しキャラと見た目だけそっくりな王(仮)や美貌の側近、そして古書店から一緒に穴に落ちたイケメンの彼は、騎士様だった。3人ともすごい美形なのに、みな癖強すぎ難ありなイケメンばかり。
オタクで人見知りしてしまう私だけど、元の世界へ戻れるまで2週間、タダでお世話になるのは申し訳ないから、お城でメイドさんをすることにした。平和にお給料分の仕事をして、異世界観光して、2週間後自分の家へ帰るつもりだったのに、ドラゴンや悪い魔法使いとか出てきて、異能を使うイケメンの彼らとともに戦うはめに。聖女様の召喚の邪魔をしてしまったので、美少女ではありませんが、地味で腐女子ですが出来る限り、精一杯頑張ります。
ついでに無愛想で苦手と思っていた彼は、なかなかいい奴だったみたい。これは、恋など始まってしまう予感でしょうか!?
*カクヨムにて先に連載しているものを加筆・修正をおこなって掲載しております
悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています
かきんとう
恋愛
王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。
磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。
その中心に、私は立っていた。
――今日、この瞬間のために。
「エレノア・フォン・リーベルト嬢」
高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。