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第一章
探し物Ⅴ
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「見つかって本当に良かったです。どうぞ」
女の子に本を差し出されて戸惑う。
これ、この子が借りようと思って持っていたんじゃないか。
探すのは手伝ってもらったけど、今ここでこれを受け取るほど僕は図々しくない。
「これは君が、」
断ろうと口を開くと、女の子が僕の言いたいことを察したかのように言った。
「いいんです。私もこの本大好きで、もう何回も読んでいるので。今日はなんとなく借りようかと思っただけで別に今日じゃなくてもいいですし。どうぞ、あなたに読んでみて欲しいです」
それなら、と再び差し出された本を受け取ると、思っていたよりも軽かった。
これが、紗苗さんが大好きだった本。
何回も読んでいた本。
なんとなく表紙を撫でてみる。
紗苗さんもここの図書館で借りたのかもしれない。
そう思うと、胸が熱くなってきた。
自分が思っていた以上に見つかったことが嬉しかった。
「ありがとう。一緒に探してくれたうえに譲ってもらって、申し訳ないな」
「いいえ、たまたま持っていただけで何もしていませんよ。一瞬で見つかりましたし。だけどまさかその本を探していたなんてびっくりしました」
何もしていないと言っても、この子が声をかけてくれなかったら僕は何日ここでうろうろしていたか分からない。
感謝の気持ちでいっぱいだが、あまりお礼を言いすぎてうざいと思われるのも嫌だ。
言葉を探していると女の子が先に言った。
「じゃあ、私もう行きます」
その言葉に僕は女の子がもう片方の手に持っていた楽器ケースに気が付いた。
「楽器?」
「はい。サックスです」
そう言って笑った顔がすごく眩しくて、この子は本当にサックスが好きなんだなと思った。
「また会えたら声を掛けますね」
では、と頭を下げて歩いていこうとする女の子の背中に、僕は思わず声をかけた。
「待って」
振り返った女の子は驚いていたが、僕はそれ以上に驚いた。
なんで引き止めたのか分からない。何か言わないとと思って言葉を探した。
「この本、多分今週中には返せるから」
女の子は「分かりました」と笑って、今度こそ図書館から出て行った。
その後、僕は図書館の利用カードを作り、無事に紗苗さんの好きだった本を借りることができた。
図書館を出た頃には十三時を過ぎていた。
家を出たときには子供であふれていたアパート近くの公園も、今は閑散としている。
皆お昼ご飯を食べに家に帰っているのだろう。
休日だというのに全く人の姿が見えない住宅街を歩いていると、この世界には僕一人しかいなくなってしまったんじゃないかと思う。
もしくは僕が一人で違う世界に迷い込んだのか。
後者だといいなと思った。きっとそこには紗苗さんがいるだろうから。
なんて、意味が分からない。
久しぶりに浴びる日の光に頭がやられているのかもしれないと思い、家までの道のりを少し急いで歩いた。
女の子に本を差し出されて戸惑う。
これ、この子が借りようと思って持っていたんじゃないか。
探すのは手伝ってもらったけど、今ここでこれを受け取るほど僕は図々しくない。
「これは君が、」
断ろうと口を開くと、女の子が僕の言いたいことを察したかのように言った。
「いいんです。私もこの本大好きで、もう何回も読んでいるので。今日はなんとなく借りようかと思っただけで別に今日じゃなくてもいいですし。どうぞ、あなたに読んでみて欲しいです」
それなら、と再び差し出された本を受け取ると、思っていたよりも軽かった。
これが、紗苗さんが大好きだった本。
何回も読んでいた本。
なんとなく表紙を撫でてみる。
紗苗さんもここの図書館で借りたのかもしれない。
そう思うと、胸が熱くなってきた。
自分が思っていた以上に見つかったことが嬉しかった。
「ありがとう。一緒に探してくれたうえに譲ってもらって、申し訳ないな」
「いいえ、たまたま持っていただけで何もしていませんよ。一瞬で見つかりましたし。だけどまさかその本を探していたなんてびっくりしました」
何もしていないと言っても、この子が声をかけてくれなかったら僕は何日ここでうろうろしていたか分からない。
感謝の気持ちでいっぱいだが、あまりお礼を言いすぎてうざいと思われるのも嫌だ。
言葉を探していると女の子が先に言った。
「じゃあ、私もう行きます」
その言葉に僕は女の子がもう片方の手に持っていた楽器ケースに気が付いた。
「楽器?」
「はい。サックスです」
そう言って笑った顔がすごく眩しくて、この子は本当にサックスが好きなんだなと思った。
「また会えたら声を掛けますね」
では、と頭を下げて歩いていこうとする女の子の背中に、僕は思わず声をかけた。
「待って」
振り返った女の子は驚いていたが、僕はそれ以上に驚いた。
なんで引き止めたのか分からない。何か言わないとと思って言葉を探した。
「この本、多分今週中には返せるから」
女の子は「分かりました」と笑って、今度こそ図書館から出て行った。
その後、僕は図書館の利用カードを作り、無事に紗苗さんの好きだった本を借りることができた。
図書館を出た頃には十三時を過ぎていた。
家を出たときには子供であふれていたアパート近くの公園も、今は閑散としている。
皆お昼ご飯を食べに家に帰っているのだろう。
休日だというのに全く人の姿が見えない住宅街を歩いていると、この世界には僕一人しかいなくなってしまったんじゃないかと思う。
もしくは僕が一人で違う世界に迷い込んだのか。
後者だといいなと思った。きっとそこには紗苗さんがいるだろうから。
なんて、意味が分からない。
久しぶりに浴びる日の光に頭がやられているのかもしれないと思い、家までの道のりを少し急いで歩いた。
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