11 / 89
第一章
偶然の出会いⅥ
しおりを挟む
僕はそれ以上何も言いたくなくてギターを鳴らした。
僕が最初に弾けるようになった曲。
日本人なら皆知っているような有名な曲。
弾きながら歌うと、麗奈ちゃんも歌ってくれたので僕はギターを弾くのに集中した。
昨日久しぶりに弾いただけなのでまだあの頃のように弾くことはできない。
何度も手が滑り音が外れたが麗奈ちゃんは気にせずに歌ってくれる。
思い出せないコードは適当にそれっぽく弾く。
きっと耳のいい麗奈ちゃんにはおかしく聞こえているだろうけど。
曲が終わると麗奈ちゃんは小さく拍手をしてくれた。
おせじにもうまいとは言えない出来だったのに。
お返しに僕も麗奈ちゃんの歌へ拍手を送る。
二人で拍手をしている僕らは、きっと周りの人からは変に見えているだろう。
横を見るふりをして後ろの道を見てみると、思った通り、歩いている人がこちらを見ていた。
すると途端に恥ずかしくなった。
ギター下手だななんて思われていたらどうしよう。
そんな僕の様子を全く気にせずに麗奈ちゃんが言った。
「ギターが弾けるなんてすごいです。すごく上手だし」
その言葉に僕は返す言葉が見つからなかった。
すごいなんて言われる程弾けていなかったから。
またしても気を使わせてしまった。
きっと僕は今なんともいえない顔をしているだろう。
「あ、おせじじゃありませんよ」
麗奈ちゃんが慌てたように言う。
それを聞いて僕は更に変な顔になったんだと思う。
「何ですか、その顔」
麗奈ちゃんが可笑しそうに笑った。
「あ、いや、耳おかしくなったの? 大丈夫?」
さっきの演奏を聴いて上手だと思うなんて耳がおかしくなったとしか思えない。
せっかくチューニングをしたのに音は外しまくるわ、リズムはあわないわ、おまけにぼんやりとした音しか出ていなかった。
上手いどころか下手だ。
「失礼ですね。これでも耳は良い方なんですよ」
それは知っている。
おかげでこのギターもまともな音が出るようになった。
とはいっても僕の技量が足りないせいでまともな演奏にはならなかったけど。
「さっきのはまあ、置いておいて、昨日聞いたのはすごく上手だと思いました」
ああ、やっぱり麗奈ちゃんもさっきの演奏は下手だと思ったようだ。
僕が一番分かっていることではあるけど、はは、と乾いた笑いがこぼれた。
僕が最初に弾けるようになった曲。
日本人なら皆知っているような有名な曲。
弾きながら歌うと、麗奈ちゃんも歌ってくれたので僕はギターを弾くのに集中した。
昨日久しぶりに弾いただけなのでまだあの頃のように弾くことはできない。
何度も手が滑り音が外れたが麗奈ちゃんは気にせずに歌ってくれる。
思い出せないコードは適当にそれっぽく弾く。
きっと耳のいい麗奈ちゃんにはおかしく聞こえているだろうけど。
曲が終わると麗奈ちゃんは小さく拍手をしてくれた。
おせじにもうまいとは言えない出来だったのに。
お返しに僕も麗奈ちゃんの歌へ拍手を送る。
二人で拍手をしている僕らは、きっと周りの人からは変に見えているだろう。
横を見るふりをして後ろの道を見てみると、思った通り、歩いている人がこちらを見ていた。
すると途端に恥ずかしくなった。
ギター下手だななんて思われていたらどうしよう。
そんな僕の様子を全く気にせずに麗奈ちゃんが言った。
「ギターが弾けるなんてすごいです。すごく上手だし」
その言葉に僕は返す言葉が見つからなかった。
すごいなんて言われる程弾けていなかったから。
またしても気を使わせてしまった。
きっと僕は今なんともいえない顔をしているだろう。
「あ、おせじじゃありませんよ」
麗奈ちゃんが慌てたように言う。
それを聞いて僕は更に変な顔になったんだと思う。
「何ですか、その顔」
麗奈ちゃんが可笑しそうに笑った。
「あ、いや、耳おかしくなったの? 大丈夫?」
さっきの演奏を聴いて上手だと思うなんて耳がおかしくなったとしか思えない。
せっかくチューニングをしたのに音は外しまくるわ、リズムはあわないわ、おまけにぼんやりとした音しか出ていなかった。
上手いどころか下手だ。
「失礼ですね。これでも耳は良い方なんですよ」
それは知っている。
おかげでこのギターもまともな音が出るようになった。
とはいっても僕の技量が足りないせいでまともな演奏にはならなかったけど。
「さっきのはまあ、置いておいて、昨日聞いたのはすごく上手だと思いました」
ああ、やっぱり麗奈ちゃんもさっきの演奏は下手だと思ったようだ。
僕が一番分かっていることではあるけど、はは、と乾いた笑いがこぼれた。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
そんなに義妹が大事なら、番は解消してあげます。さようなら。
雪葉
恋愛
貧しい子爵家の娘であるセルマは、ある日突然王国の使者から「あなたは我が国の竜人の番だ」と宣言され、竜人族の住まう国、ズーグへと連れて行かれることになる。しかし、連れて行かれた先でのセルマの扱いは散々なものだった。番であるはずのウィルフレッドには既に好きな相手がおり、終始冷たい態度を取られるのだ。セルマはそれでも頑張って彼と仲良くなろうとしたが、何もかもを否定されて終わってしまった。
その内、セルマはウィルフレッドとの番解消を考えるようになる。しかし、「竜人族からしか番関係は解消できない」と言われ、また絶望の中に叩き落とされそうになったその時──、セルマの前に、一人の手が差し伸べられるのであった。
*相手を大事にしなければ、そりゃあ見捨てられてもしょうがないよね。っていう当然の話。
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
【完結】ご期待に、お応えいたします
楽歩
恋愛
王太子妃教育を予定より早く修了した公爵令嬢フェリシアは、残りの学園生活を友人のオリヴィア、ライラと穏やかに過ごせると喜んでいた。ところが、その友人から思いもよらぬ噂を耳にする。
ーー私たちは、学院内で“悪役令嬢”と呼ばれているらしいーー
ヒロインをいじめる高慢で意地悪な令嬢。オリヴィアは婚約者に近づく男爵令嬢を、ライラは突然侯爵家に迎えられた庶子の妹を、そしてフェリシアは平民出身の“精霊姫”をそれぞれ思い浮かべる。
小説の筋書きのような、婚約破棄や破滅の結末を思い浮かべながらも、三人は皮肉を交えて笑い合う。
そんな役どころに仕立て上げられていたなんて。しかも、当の“ヒロイン”たちはそれを承知のうえで、あくまで“純真”に振る舞っているというのだから、たちが悪い。
けれど、そう望むのなら――さあ、ご期待にお応えして、見事に演じきって見せますわ。
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる