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第一章
彼と彼女Ⅳ
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この五年間、弾いていなかったギターを手に取ったのは麗奈ちゃんがきっかけだ。
音楽が好きだという気持ちで溢れた笑顔を見て、もう一度あの頃のようにギターを弾きたいと思ったから。
だけど、きっとどんなに上手く弾けても僕はもうあの頃と同じようには弾けない。
この数日で分かった。紗苗さんがいないと、僕はギターを楽しめない。
「……そうだね、僕にはもうギターを弾く理由がないんだ」
こうして言われるまではなぜかギターを辞めるという選択肢はなかった。
きっとまた仕事を始めたらいつの間にか弾かなくなるんだろうけど、意識して辞めるつもりはなかった。
だけど、麗奈ちゃんにそう言われたら、途端に辞めた方がいいような気がした。
「ギターを弾いていたらまたその人に会えるかもしれませんよ」
「それはないよ」
考えるより先に言葉が出た。
そしてその声に僕が驚いた。
僕はこんなにも冷たい声が出るんだ。
生まれてこの方聞いたことのない自分の声だった。
麗奈ちゃんも驚いたようで表情が固まっている。
「あ、ごめん、怒ったわけじゃないんだ」
はっとして謝ると、麗奈ちゃんは「いえ」と首を振った。
「もう会えないんだよ。全部僕のせいだ」
そう、全部僕のせい。僕が紗苗さんを殺したんだ。
だからもう絶対に会えない。
例え僕が死んでも紗苗さんは会ってくれない。
「……よく分かりませんが、演奏するのは楽しくないですか?」
ギターが楽しくないのか?
あの頃のようには楽しくない。紗苗さんが隣にいないから。
だけど、弾くこと自体は嫌いではない。
「よく分からないね」
そう言った時笛が鳴った。サッカーの試合が終わる。
勝ったのはビブスを付けていない方だった。
いつも通りギターを背負う。
ああ、そうだ、確か本があったはず。
靴を履いてから思い出し、本棚を見ると初心者向けのギター教本があった。
ギターケースの前面についたポケットに入れると、ケースにつけたあのストラップが揺れて金属音がする。
紗苗さんの写真を見て、再び背負うといつもより少しだけ重たかった。
昨日は結局微妙な雰囲気の中で五時になって、麗奈ちゃんは帰って行った。
その帰り際に言われたのだ。
――私にギターを教えてもらえませんか?
断る理由は特にないので頷いたが、僕が人に教えられるかは分からない。
僕なんかが教えるのでは麗奈ちゃんに申し訳ない。
だけど、引き受けた以上はできるだけやってみようと思った。
河原へ行くと、既に麗奈ちゃんがいた。
「こんにちは」
「こんにちは、今日は早いんだね」
今はまだ三時だ。いつもなら三時半過ぎくらいに来るのに。
「今日は大事な会議があるとかで短縮授業だったんです」
「短縮授業。懐かしい響きだ」
そう言うと麗奈ちゃんが笑った。
音楽が好きだという気持ちで溢れた笑顔を見て、もう一度あの頃のようにギターを弾きたいと思ったから。
だけど、きっとどんなに上手く弾けても僕はもうあの頃と同じようには弾けない。
この数日で分かった。紗苗さんがいないと、僕はギターを楽しめない。
「……そうだね、僕にはもうギターを弾く理由がないんだ」
こうして言われるまではなぜかギターを辞めるという選択肢はなかった。
きっとまた仕事を始めたらいつの間にか弾かなくなるんだろうけど、意識して辞めるつもりはなかった。
だけど、麗奈ちゃんにそう言われたら、途端に辞めた方がいいような気がした。
「ギターを弾いていたらまたその人に会えるかもしれませんよ」
「それはないよ」
考えるより先に言葉が出た。
そしてその声に僕が驚いた。
僕はこんなにも冷たい声が出るんだ。
生まれてこの方聞いたことのない自分の声だった。
麗奈ちゃんも驚いたようで表情が固まっている。
「あ、ごめん、怒ったわけじゃないんだ」
はっとして謝ると、麗奈ちゃんは「いえ」と首を振った。
「もう会えないんだよ。全部僕のせいだ」
そう、全部僕のせい。僕が紗苗さんを殺したんだ。
だからもう絶対に会えない。
例え僕が死んでも紗苗さんは会ってくれない。
「……よく分かりませんが、演奏するのは楽しくないですか?」
ギターが楽しくないのか?
あの頃のようには楽しくない。紗苗さんが隣にいないから。
だけど、弾くこと自体は嫌いではない。
「よく分からないね」
そう言った時笛が鳴った。サッカーの試合が終わる。
勝ったのはビブスを付けていない方だった。
いつも通りギターを背負う。
ああ、そうだ、確か本があったはず。
靴を履いてから思い出し、本棚を見ると初心者向けのギター教本があった。
ギターケースの前面についたポケットに入れると、ケースにつけたあのストラップが揺れて金属音がする。
紗苗さんの写真を見て、再び背負うといつもより少しだけ重たかった。
昨日は結局微妙な雰囲気の中で五時になって、麗奈ちゃんは帰って行った。
その帰り際に言われたのだ。
――私にギターを教えてもらえませんか?
断る理由は特にないので頷いたが、僕が人に教えられるかは分からない。
僕なんかが教えるのでは麗奈ちゃんに申し訳ない。
だけど、引き受けた以上はできるだけやってみようと思った。
河原へ行くと、既に麗奈ちゃんがいた。
「こんにちは」
「こんにちは、今日は早いんだね」
今はまだ三時だ。いつもなら三時半過ぎくらいに来るのに。
「今日は大事な会議があるとかで短縮授業だったんです」
「短縮授業。懐かしい響きだ」
そう言うと麗奈ちゃんが笑った。
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