あの日、君は笑っていた

紅蘭

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第一章

彼と彼女Ⅶ

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「山本くーん」


どこからか女の子の高い声が聞こえて、真っ赤だった山本君は今度は青くなった。

声の方を見ると女の子が走って来た。

麗奈ちゃんと同じ制服なのだろうが、スカートが短くて、ところどころいじっているのか、どうも同じ制服には見えない。


「どうしてミカを置いて行っちゃうのぉ?」


媚びるような声で山本君の腕にしがみついた女の子。

この子が隣のクラスの子か。

確かに可愛らしいが、見るからに頭は残念そうだ。

あれ、確か麗奈ちゃんが通っているところってこの辺では有名な進学校だったような……。

不思議に思うが、実際その子が麗奈ちゃんと同じ制服を着ているのは事実だ。

山本君は麗奈ちゃんを見て、次いで僕を見た。

女の子も麗奈ちゃんを見る。


「三上さん達? それに誰このおじさん」


おじさんか……。別にいいけど。


「こんな浮気女どうでもいい。行くぞ、ミカ」


山本君は吐き捨てるようにそう言って歩いて行った。

麗奈ちゃんはため息を落とした。


「あいつ麗奈を振ってあの子に乗り換えたはいいけど、最近微妙な感じらしい。思ったよりもあの子が馬鹿だったから麗奈と無理やりよりを戻そうとしたんじゃない? あの子成績は悪くないんだけど、あんなんだからね」


あずちゃんはそう言って「馬鹿だよね」と笑った。

麗奈ちゃんも笑うが、その笑顔はどこか疲れているように見える。

そりゃそうか。あんなことがあって疲れないわけがない。

それにしても、成績は悪くないのか。それもそれで不思議だけど。


「じゃあ私もう行くね。また明日」

「うん、ありがとう。あずが来てくれて助かったよ」

「それじゃ、お兄さん」


あずちゃんは僕にも手を振って歩いて行った。


「お兄さん、ですって。よかったですね」


麗奈ちゃんはそう言っていつものように笑った。


「巻き込んでしまってすみません。最近周りをちょろちょろされてたんですけど、まさかここまで来るとは思ってなくて」

「いや、別にいいんだけど……」


なんと言うべきか考えて結局、


「高校生って大変なんだね」


そう言うしかなかった。麗奈ちゃんは少し考えて、微妙な顔で「そうですね」と頷いた。
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