あの日、君は笑っていた

紅蘭

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第一章

告白Ⅰ

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いつものように斜面に腰を下ろして並んで座る。

ここへ来て三十分も経っていないのにどっと疲れた。

今はギターの気分ではない。麗奈ちゃんもきっとそうだろう。

今日はサッカーをしていた小学生がいない。


「なんでもできて可愛げがないって言われたんです」


誰に言われたのかはさっきの会話からなんとなく分かる。

それから麗奈ちゃんは順番に話してくれた。

春に告白されて付き合い始めたこと。それなりに楽しかったこと。そして、秋に振られたこと。


「今はもう全くですけど、その時はそれなりに好きだったんですよ。あの頃はあそこまで馬鹿ではなかったですし」


その表情から今の言葉は本当なんだろうなと思う。


「……私が悪かったんでしょうか」


ぽつりと麗奈ちゃんがこぼした言葉は、そのままにしてはいけない気がする。


「それは違うよ。わざわざ相手のレベルに落としたら駄目なんだ」

「え?」


麗奈ちゃんがきょとんとして僕を見つめる。


「あんな美人が結婚していないなんて、ってよく聞くよね?」

「はい……」

「あれは男が努力をしないからなんだよ。美人過ぎて自分には釣り合わないって、同じレベルの人を探すんだ。だから、そういう女の人は結婚できない。でもそれじゃ駄目なんだ。そういう女の人に釣り合えるように努力をするべきだ。だから、麗奈ちゃんはそのままでいなきゃいけない。いつか麗奈ちゃんに釣り合えるように努力をしてくれる人が絶対にいるから」


麗奈ちゃんが僕を真っすぐ見てくる。

説教臭くなってしまっただろうか。少しすると麗奈ちゃんは微笑んで言った。


「ありがとうございます」

「うん」


沈黙が降りて、少しすると麗奈ちゃんがぽつりと言った。


「あず、すごく美人でしょう?」


あず?

少し考えてそれが麗奈ちゃんの友達のことだと気が付く。

さっき来た茶色い髪の女の子。


「うん、そうだね」


何気なく頷く。実際あんなにきれいな顔をした子はテレビの中でしか見たことがない。


「狙っても無駄ですよ、もう彼氏いるんで」


むせた。

まさかそんなことを言われるとは思わなかった。


「大丈夫ですか?」


涼しい顔でそう聞いてくる麗奈ちゃんを見ると、楽しそうに笑っていた。


「そういう冗談はやめようよ」


なんとなく悔しくなってそう言うと麗奈ちゃんは「すみません」と更に笑った。


「僕は年下には興味ないんだ」


実際は紗苗さん以外に、だけど、とりあえずそう言っておく。


「そうですか」


麗奈ちゃんは下を向いて自分の髪を触りながら一言、そう言った。


なにげない会話をしている内に五時の鐘が鳴る。

いつもならこの時間に帰っていく麗奈ちゃんは、今日はまだ立ち上がらなかった。


「帰らなくていいの?」


もう日は落ちている。

まだかろうじて周りが見える程度には明るいが、もう十五分も経たずに辺りは真っ暗になるだろう。

心配して声をかけるが、麗奈ちゃんはやっぱり動かない。


「今日はもうちょっとだけここにいたいです」


立てた膝を抱えてそう笑うその顔はどこか寂し気に見えて僕はそれ以上何も言えなかった。
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