あの日、君は笑っていた

紅蘭

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第一章

再会Ⅰ

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太陽の光がさんさんと僕に降り注ぐ。

僕は河原の斜面に腰かけて流れる川を眺めていた。

きらきらと反射する光が目に入って目を細めると、少し眩しさが和らいだ。

僕はそのまま暇に身を任せてただぼーっとしていた。

もうすぐ夏が来る。

本格的な夏が来る前には次の仕事を見つけたいところだ。家にいても暑いし。


先週、五年間以上勤めていた会社が解散した。

それに伴って僕も仕事がなくなり、今こうして無意味な時間を過ごしている。

真昼間だからか道行く人は少なくて静かだ。

ただひたすら座ってぼーっとしていた時、突然後ろから女の子の声が聞こえた。


「あれ、もしかして弘介さんじゃないですか?」


はっとして後ろを振り返った。我ながらすごいスピードだったと思う。


「わ、」


その女の子は驚いて、だけど僕を見て笑った。

細い腕に小さな赤ちゃんを抱いている茶色い髪の女の子。


「もしかして、麗奈だと思いました?」


少しの落胆を覚えてしまった。

心の中で頷きながら立ち上がり、それを表には出さないようにして言った。


「久しぶりだね、あずちゃん」

「はい、お久しぶりです」


この五年間、仕事をしていたこともあって、ここには来ていなかった。

だからあずちゃんにも会うことがなかったんだと思う。

立ち上がってあずちゃんの方を向くと、赤ちゃんの顔がよく見えた。

色の薄い髪が太陽の光にキラキラしている。あずちゃんの腕の中が心地いいのか、幸せそうに目を閉じている。

僕が見ていることに気が付いたのか、あずちゃんが言った。


「先々月に生まれたんです。小さいでしょう」


そう言って笑った顔はもう『お母さん』の顔で、高校生だったあずちゃんがお母さんになるくらいの時間が流れていることに気が付いた。

僕はこの五年間特に何もなかった。ただ毎日仕事をしていただけ。

だけど、あずちゃんや麗奈ちゃんにとっての五年間は何かが変わるには十分な時間だったのだ。


「五年前が十八歳だったから、今は二十三歳?」

「はい、今年で二十四になります」


そうか、もうそんなになるのか。


「少し座りましょうか」


あずちゃんに促されて再び斜面に座る。

あずちゃんはぼくの右隣に座った。

こうしてこの場所で誰かと並んで座るのはあの時以来で、まるで五年前に戻ったかのような錯覚を覚えた。


「あれから麗奈と会いました?」

「ううん、会っていないよ」


会っていないどころか、連絡先も知らないので今どうしているのか全く知らない。

あの日、麗奈ちゃんと別れて家に帰った後、僕は麗奈ちゃんがくれた本を改めて見てみた。

その本は綺麗ではあったが、おそらく新品ではなかった。

もしあの本が麗奈ちゃんが持っていた本だとしたら、どうしてあの日図書館で同じ本を借りようとしていたのかが気になった。

大した理由はないのかもしれないが、そのことが妙に気になって、会って聞いてみたいとずっと思っている。

だけど、会う方法もないし、そんなことで会うのは麗奈ちゃんに迷惑じゃないかと思うと、なかなか行動できない。
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