あの日、君は笑っていた

紅蘭

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第一章

再会Ⅱ

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「前から思っていたんですけど、弘介さんって麗奈のこと好きですよね?」

「え!?」


突然の言葉に驚いて、大きな声が出てしまった。

あずちゃんの腕の中で赤ちゃんがもぞもぞと動く。

しまった、と口を押えてあずちゃんを見ると「大丈夫ですよ」と言われた。


「私人の気持ちに鋭いんです。口調とか声とか、仕草とか、そう言ったものからなんとなく分かるんです。それは悪意だったり好意だったりしますけど」


そういう人の気持ちに敏感な人は僕の周りにも今まで何人かいた。

そういうのは理屈じゃなくて感覚らしい。

だから嘘をつかれてもなんとなく分かるんだそうだ。


「なんとなくそう思ったんです。私の向こうに麗奈を見ていますよね。違いますか?」


僕はため息をついた。

口先だけで「違う」と言うのは簡単だったけど、今嘘を付いたらきっとこの先も後悔する。


「正直、分からない」


麗奈ちゃんの告白を歯牙にもかけずに断っておいて情けない話だが、僕は確かに麗奈ちゃんに惹かれていた。

会わなくなってから気が付いた。

時間が解決するものかと思っていたが、そのよく分からない気持ちは日毎に大きくなる一方だ。

この気持ちは紗苗さんに抱いた恋心とどこか違う。

だからよく分からない。


「麗奈は弘介さんのことが好きでしたよ。多分、弘介さんが思っている以上に」


あずちゃんの長い髪が風に揺れ、赤ちゃんの頬をくすぐった。

それで赤ちゃんの目が開いた。


「ああ、起きちゃったか。ごめんね」


そう言いながらあずちゃんは立ち上がってゆらゆらと体を揺らす。

赤ちゃんは泣く暇もなく、再び目を閉じた。


「もし時間があるようなら、一緒に来てもらえませんか?」


時間なら腐るほどある。僕は立ち上がってあずちゃんの隣を歩いた。

あずちゃんは歩きながらさっきの続きを話してくれた。


「私は麗奈と弘介さんの関係がいまいち分からないんですけど、どういう関係なんですか?」


あずちゃんが僕を見上げて聞いてくる。

こうしてみれば、あずちゃんは麗奈ちゃんよりも身長が高いんだな。

そんなどうでもいいことを思った。


「僕が麗奈ちゃんにギターを教えてあげていただけだよ。それだけだ」


一冊の本をきっかけに偶然出会って、ギターを教えて、たまにサックスを聞かせてもらって、話をするだけ。

それだけの関係だ。
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