あの日、君は笑っていた

紅蘭

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第一章

再会Ⅴ

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翌日東京に降り立った時には既に午後三時だった。

意外と時間がかかったな。

人垣をかきわけてどうにか進む。

携帯で地図を見ながら麗奈ちゃんが働いているという会社の前までたどり着いた。

高いビルを見上げてみると眩暈がした。

今は四時。仕事は五時か六時くらいまでだろうが、定時であがれるとは限らない。

教えてもらった麗奈ちゃんの番号は使っていない。

電話をかけてみようかとも思ったけどなんとなくかけられなかった。

だから、今日確実に会えるとも思ってはいない。

会えたらいいな、と軽い気持ちで来てみただけだ。

僕は近くの喫茶店の窓際に座った。

ここからなら麗奈ちゃんの会社のビルの出入り口がよく見える。

果たして麗奈ちゃんを見て分かるかは分からない。

だけどとりあえず待ってみようと思った。


六時を過ぎた頃だろうか。

三杯目のコーヒーを飲んでいると、スーツを着た女の子が出てきた。

よく見えないけど分かる。


「麗奈ちゃんだ」


他のお客さんに聞こえないように小さく呟いて席を立つ。

急いでお会計をして店を出ると麗奈ちゃんはまだ会社の前にいた。

男の人と話をしている。

もしかして彼氏か?

少し近付くと会話が聞こえた。


「三上さん、この後飲みに行こうよ」

「いえ、気持ちは嬉しいんですが、すみません」


きっぱりと断る麗奈ちゃん。

あの時と変わらないその声に僕は嬉しさと緊張が入り混じった微妙な気持ちになる。

僕はこれから麗奈ちゃんに声をかけるのか? いきなり来て迷惑だったんじゃないか?

今更ながらそんな気持ちが込み上げてきて、このままこの場から去ってしまいたかった。

だけど聞きたいことがたくさんある。

ああ、ダメだ。やっぱり帰ろう。

そう思って踵を返したその時、小さな声が耳に届いた。


「こ、うすけ、さん……?」


反射的に振り返る。

そして、麗奈ちゃんと目が合った。

その目を見た途端、僕は麗奈ちゃんに近づいていた。

驚きで目を見張る麗奈ちゃんの目の前に立った僕は、色々考えていたのも忘れて、気が付いた時には言っていた。


「麗奈ちゃん、君が好きだ」


その言葉に麗奈ちゃんは更に驚いた顔になった。次に泣きそうな顔。そして僕を睨んで、言った。
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