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第二章
あの日のことⅣ
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「それなら、」
自分でも驚くほど冷ややかな声が出た。
これ以上は言ってはいけないと分かっている。
ただの八つ当たりだと私は知っている。
頭は冷静だったけど言葉は止まらなかった。
ひろ君がはっとしたように私の腕を掴んだけど私はそれを振り払って言った。
「どうしてあなたは生きているんですか?」
「え……?」
「紗苗さんはもういないのに、弘介さんは生きて一人で幸せになるんですか?」
これは言ってはいけなかった。絶対に口にすべきじゃなかった。
そう分かっていたけどもうどうでもよかった。
弘介さんが傷付いて、それで私を憎んでくれればいい。
もう私に関わらなければいい。
「それは紗苗さんに対しての裏切りですよね?」
それだけ言って立ち上がると、呆然としている弘介さんとひろ君の顔が見えた。
「ひろ君、それ朝賀さんに返しておいて」
その言葉と二人を残してその場を離れる。
一人になった途端涙が出そうになった。
それが怒りからなのか、悲しみからなのか分からないけど、グッと我慢して歩いた。
弘介さんにもらったギターのことを考える。五年間弾き続けた。
私の手によく馴染んでくれるあのギターは、私のものじゃない。
そしてギターケースについたストラップも私のものじゃない。
なんとなく家にも帰りづらくてあてもなくぶらぶらしていた。
ひろ君と弘介さんは今何を話しているだろう。ひろ君は今どんなことを思っているのだろう。
さっき振り払ったひろ君の手の感触が忘れられない。
あんな風に拒絶したのは初めてだった。
目についたカフェに入ろうかとも思ったけどよく考えたらお財布を持っていない。
閑散とした住宅街の奥へ奥へと歩いていると落ち着いた。
今は人に会いたくない。喋りたくない。
だけどひろ君にだけは会いたかった。
少しするとズボンのポケットに入れていた携帯が震えた。
画面を見たらひろ君の名前が表示されていた。
少し考えて赤い受話器マークを押した。
静かになった携帯に安堵していると、すぐにまたかかってきた。同じ動作をする。
ひろ君に会いたかった。だけどどんな顔をして会えばいいか分からない。
きっと弘介さんにあんなことを言った私を嫌いになったはずだ。
かかってきた電話を切ることを何度か繰り返してようやく鳴らなくなった。
これからどうなるんだろうと考える。
ずっとひろ君と一緒にいたかった。だけどこうなった以上もう一緒にはいられない。
きっとひろ君は私を軽蔑しているだろうから。
ああ、再来週北海道に行く予定だ。これはどうなるんだろうか。
最後にひろ君と一緒に行きたいと心からそう思った。
適当に人がいなさそうな道をぶらぶら歩く。
いつまでもこうしてられないのは知っている。
財布すら持っていない私は結局家に帰ることしか選択肢にない。
だけどそれを少しでも先に延ばしたくて、私はただ歩いた。
自分でも驚くほど冷ややかな声が出た。
これ以上は言ってはいけないと分かっている。
ただの八つ当たりだと私は知っている。
頭は冷静だったけど言葉は止まらなかった。
ひろ君がはっとしたように私の腕を掴んだけど私はそれを振り払って言った。
「どうしてあなたは生きているんですか?」
「え……?」
「紗苗さんはもういないのに、弘介さんは生きて一人で幸せになるんですか?」
これは言ってはいけなかった。絶対に口にすべきじゃなかった。
そう分かっていたけどもうどうでもよかった。
弘介さんが傷付いて、それで私を憎んでくれればいい。
もう私に関わらなければいい。
「それは紗苗さんに対しての裏切りですよね?」
それだけ言って立ち上がると、呆然としている弘介さんとひろ君の顔が見えた。
「ひろ君、それ朝賀さんに返しておいて」
その言葉と二人を残してその場を離れる。
一人になった途端涙が出そうになった。
それが怒りからなのか、悲しみからなのか分からないけど、グッと我慢して歩いた。
弘介さんにもらったギターのことを考える。五年間弾き続けた。
私の手によく馴染んでくれるあのギターは、私のものじゃない。
そしてギターケースについたストラップも私のものじゃない。
なんとなく家にも帰りづらくてあてもなくぶらぶらしていた。
ひろ君と弘介さんは今何を話しているだろう。ひろ君は今どんなことを思っているのだろう。
さっき振り払ったひろ君の手の感触が忘れられない。
あんな風に拒絶したのは初めてだった。
目についたカフェに入ろうかとも思ったけどよく考えたらお財布を持っていない。
閑散とした住宅街の奥へ奥へと歩いていると落ち着いた。
今は人に会いたくない。喋りたくない。
だけどひろ君にだけは会いたかった。
少しするとズボンのポケットに入れていた携帯が震えた。
画面を見たらひろ君の名前が表示されていた。
少し考えて赤い受話器マークを押した。
静かになった携帯に安堵していると、すぐにまたかかってきた。同じ動作をする。
ひろ君に会いたかった。だけどどんな顔をして会えばいいか分からない。
きっと弘介さんにあんなことを言った私を嫌いになったはずだ。
かかってきた電話を切ることを何度か繰り返してようやく鳴らなくなった。
これからどうなるんだろうと考える。
ずっとひろ君と一緒にいたかった。だけどこうなった以上もう一緒にはいられない。
きっとひろ君は私を軽蔑しているだろうから。
ああ、再来週北海道に行く予定だ。これはどうなるんだろうか。
最後にひろ君と一緒に行きたいと心からそう思った。
適当に人がいなさそうな道をぶらぶら歩く。
いつまでもこうしてられないのは知っている。
財布すら持っていない私は結局家に帰ることしか選択肢にない。
だけどそれを少しでも先に延ばしたくて、私はただ歩いた。
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