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第二章
あの日のことⅤ
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どのくらい歩いただろう。
あれからも何度か震えていた携帯はいつの間にか大人しくなっていた。
そろそろ帰らないとな。そう思った時だった。
後ろから腕が伸びてきて、気が付いた時には抱き締められていた。
「ようやく、見つけた」
何事かと驚いた私は、耳元で聞こえた声と荒い息に安堵と焦りを感じた。
どうにか腕から出ようと頑張ってみるが、その腕はびくともせず、私を離す気はないようだった。
「……ひろ君、ずっと探していてくれたの?」
段々と整ってくる息が聞こえる。ひろ君が頷く気配がした。
「頼むから電話くらい出てくれ」
静かな声に心がさあっと澄んでいくのが分かる。
「……うん、ごめん」
素直に謝るとひろ君はようやく私を解放した。
ひろ君の顔が見える。だけど私はその目が見られなくて目をそらした。
申し訳なくて恥ずかしくて、なんともいえない気持ちが胸のあたりでもやもやしている。
「帰ろう」
ひろ君は私の手を取って歩き出す。
斜め後ろからひろ君の顔を眺めると、少し疲れているように見えた。
そりゃそうだ。あんな話に付き合わされて、挙句に私を探してあちこちしたんだから。
「後悔してる?」
何を、とは聞かなかった。聞かなくても分かった。
考える前に頷いていた。
「ひろ君の前であんなこと言いたくなかった」
そう言うとひろ君は笑った。
何が可笑しかったのか分からない。私はそれまで握られていただけの手で、ひろ君の手を握り返す。
「麗奈は俺の前じゃなかったとしても後悔するよ。優しいからね」
それには素直に頷けなかった。
私はひろ君が思っているほど綺麗じゃない。
「さっきの朝賀さんに言ったこと」
「え?」
「あれ、俺には麗奈が自分に言っているように聞こえたんだけど」
「自分に言っているように……?」
ひろ君を見るが、その表情は私からは見えない。
言っている意味が分からない。私は弘介さんに言ったのに。
私が何も言わないと、ひろ君は振り返って私の顔を見た。そして言う。
「分からないか」
その表情を見て確信する。
きっとひろ君は私以上に私のことを知っている。
私が知らない私を知っている。
「……ひろ君」
「うん?」
この言葉を言うのには勇気が必要だった。
喉元で止まった言葉をなんとか吐き出す。
「ずっと一緒にいてくれる?」
驚いたように私を見たひろ君は、少しして頷いた。
「うん、麗奈がそう望むならね」
ほっと胸をなでおろし、家に向かって歩く。
私とひろ君の家。二人だけのあの家に早く帰りたかった。
「帰ったら聞いてくれる?」
「うん」
それだけでひろ君は頷いてくれる。
ひろ君に知っていて欲しかった。
五年前のこと。私が何をしたのか、全部聞いて欲しかった。
あれからも何度か震えていた携帯はいつの間にか大人しくなっていた。
そろそろ帰らないとな。そう思った時だった。
後ろから腕が伸びてきて、気が付いた時には抱き締められていた。
「ようやく、見つけた」
何事かと驚いた私は、耳元で聞こえた声と荒い息に安堵と焦りを感じた。
どうにか腕から出ようと頑張ってみるが、その腕はびくともせず、私を離す気はないようだった。
「……ひろ君、ずっと探していてくれたの?」
段々と整ってくる息が聞こえる。ひろ君が頷く気配がした。
「頼むから電話くらい出てくれ」
静かな声に心がさあっと澄んでいくのが分かる。
「……うん、ごめん」
素直に謝るとひろ君はようやく私を解放した。
ひろ君の顔が見える。だけど私はその目が見られなくて目をそらした。
申し訳なくて恥ずかしくて、なんともいえない気持ちが胸のあたりでもやもやしている。
「帰ろう」
ひろ君は私の手を取って歩き出す。
斜め後ろからひろ君の顔を眺めると、少し疲れているように見えた。
そりゃそうだ。あんな話に付き合わされて、挙句に私を探してあちこちしたんだから。
「後悔してる?」
何を、とは聞かなかった。聞かなくても分かった。
考える前に頷いていた。
「ひろ君の前であんなこと言いたくなかった」
そう言うとひろ君は笑った。
何が可笑しかったのか分からない。私はそれまで握られていただけの手で、ひろ君の手を握り返す。
「麗奈は俺の前じゃなかったとしても後悔するよ。優しいからね」
それには素直に頷けなかった。
私はひろ君が思っているほど綺麗じゃない。
「さっきの朝賀さんに言ったこと」
「え?」
「あれ、俺には麗奈が自分に言っているように聞こえたんだけど」
「自分に言っているように……?」
ひろ君を見るが、その表情は私からは見えない。
言っている意味が分からない。私は弘介さんに言ったのに。
私が何も言わないと、ひろ君は振り返って私の顔を見た。そして言う。
「分からないか」
その表情を見て確信する。
きっとひろ君は私以上に私のことを知っている。
私が知らない私を知っている。
「……ひろ君」
「うん?」
この言葉を言うのには勇気が必要だった。
喉元で止まった言葉をなんとか吐き出す。
「ずっと一緒にいてくれる?」
驚いたように私を見たひろ君は、少しして頷いた。
「うん、麗奈がそう望むならね」
ほっと胸をなでおろし、家に向かって歩く。
私とひろ君の家。二人だけのあの家に早く帰りたかった。
「帰ったら聞いてくれる?」
「うん」
それだけでひろ君は頷いてくれる。
ひろ君に知っていて欲しかった。
五年前のこと。私が何をしたのか、全部聞いて欲しかった。
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