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第二章
五年前Ⅱ
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ようやく見えたその後ろ姿が昨日図書館で会ったその人と同じだと気が付いて、私は嬉しくて泣いてしまいそうだった。
やっぱりあの人はこう君だったんだ。その気持ちでいっぱいだった。
後ろから様子を伺っていると突然歌が途切れた。
かつて紗苗さんと二人で何度も聞いて歌った曲。
気がついたら歌っていた。音が途切れると私はこう君の隣に腰を下ろした。
そしてギターを見る。このギターで紗苗さんも歌っていたのだろうか。
「ちょっと前に音楽で習った曲なんです」
そう言った自分に驚いた。
うちの学校は進学校なので音楽の授業はない。
どうして嘘を吐いたのか分からない。
だけど私は紗苗さんとの関係を隠したかったのかもしれない。
そう、私は紗苗さんとの関係を隠して、こう君が紗苗さんの死についてどう思っているのかを知りたかった。
話しているとこう君は言った。
「うまいとかうまくないとか関係なく、楽器は楽しむことが大切なんだ。それって結構難しいことだよ」
紗苗さんの言った通りの人だと思った。
素直で優しくて、自分にない人の才能を手放しに誉めることのできる人。
紗苗さんはこう君をそう言っていた。
そして同時に思った。こう君はもう楽器を楽しむことができないんだ、と。
「三上麗奈です」
先に名乗る。こう君もきっと知っているだろう、アオイから私を遠ざけるために。
私がアオイだと勘づかれないように、私とアオイを切り離すために。
こう君の名前は知っていた。
「朝賀弘介さん」
そう呟くと、それまでとは違った何かが込み上げてきた。
私の中でこう君が初めて実体を持った瞬間だった。
私はようやく見つけたこう君、弘介さんをまた見失うつもりはなかった。
しっかりと明日の約束をして、その場を去った。
私が帰って行く方向は、本当は家から正反対だった。
だけど、家に帰ろうと思ったら学校の方に戻らないといけないから。
弘介さんが不自然に思ったら困るから遠回りをして帰った。
それから私はギターを教えてもらうことを口実に弘介さんと河原で会うようになった。
弘介さんがたまに紗苗さんの話をする時は実はすごくどきどきしていた。
だけど何でもないふり、何も知らないふりをした。
ある日私は言っていた。その前に色々あって疲れていたのかもしれない。
「……私は、弘介さんを好きになってしまったんですけど」
そう言ったときの私は自分でも何を考えているか分からなかった。
そう言うことで弘介さんとの距離を縮めようとしたのかもしれないし、弘介さんを好きなふりをして前の彼女である紗苗さんのことを聞こうとしたのかもしれない。
それは私にも分からないことだった。
やっぱりあの人はこう君だったんだ。その気持ちでいっぱいだった。
後ろから様子を伺っていると突然歌が途切れた。
かつて紗苗さんと二人で何度も聞いて歌った曲。
気がついたら歌っていた。音が途切れると私はこう君の隣に腰を下ろした。
そしてギターを見る。このギターで紗苗さんも歌っていたのだろうか。
「ちょっと前に音楽で習った曲なんです」
そう言った自分に驚いた。
うちの学校は進学校なので音楽の授業はない。
どうして嘘を吐いたのか分からない。
だけど私は紗苗さんとの関係を隠したかったのかもしれない。
そう、私は紗苗さんとの関係を隠して、こう君が紗苗さんの死についてどう思っているのかを知りたかった。
話しているとこう君は言った。
「うまいとかうまくないとか関係なく、楽器は楽しむことが大切なんだ。それって結構難しいことだよ」
紗苗さんの言った通りの人だと思った。
素直で優しくて、自分にない人の才能を手放しに誉めることのできる人。
紗苗さんはこう君をそう言っていた。
そして同時に思った。こう君はもう楽器を楽しむことができないんだ、と。
「三上麗奈です」
先に名乗る。こう君もきっと知っているだろう、アオイから私を遠ざけるために。
私がアオイだと勘づかれないように、私とアオイを切り離すために。
こう君の名前は知っていた。
「朝賀弘介さん」
そう呟くと、それまでとは違った何かが込み上げてきた。
私の中でこう君が初めて実体を持った瞬間だった。
私はようやく見つけたこう君、弘介さんをまた見失うつもりはなかった。
しっかりと明日の約束をして、その場を去った。
私が帰って行く方向は、本当は家から正反対だった。
だけど、家に帰ろうと思ったら学校の方に戻らないといけないから。
弘介さんが不自然に思ったら困るから遠回りをして帰った。
それから私はギターを教えてもらうことを口実に弘介さんと河原で会うようになった。
弘介さんがたまに紗苗さんの話をする時は実はすごくどきどきしていた。
だけど何でもないふり、何も知らないふりをした。
ある日私は言っていた。その前に色々あって疲れていたのかもしれない。
「……私は、弘介さんを好きになってしまったんですけど」
そう言ったときの私は自分でも何を考えているか分からなかった。
そう言うことで弘介さんとの距離を縮めようとしたのかもしれないし、弘介さんを好きなふりをして前の彼女である紗苗さんのことを聞こうとしたのかもしれない。
それは私にも分からないことだった。
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