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第二章
旅行Ⅴ
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「何か聞きたいことはありますか?」
私はもうほとんど話すことがないのでそう聞くと、弘介さんは迷わず頷いた。
「まず、この前返してもらったギターだけど、あれに付いていたあのストラップはどうしたの?」
弘介さんが真っすぐ私を見る。その目を見ようとしたけど、なぜか真っすぐ見れなかった。
視線を逸らすと窓から夜景が見える。
そのたくさんの小さな光を眺めていると、吸い込まれそうな気がした。
「勘違いしないでくださいね。盗ったわけではありません」
「うん、分かっているよ。麗奈ちゃんはそんな子じゃない」
この期に及んで私の肩を持つ弘介さん。
訳が分からない。今まで散々酷いことを言った私に対して「そんな子じゃない」?
弘介さんの中の私は一体どれほど綺麗なのだろうか。
「雪だるまを作った日のことを覚えていますか?」
「懐かしいね」
「あの日、拾ったんです」
一人で帰っている途中に見つけたストラップ。中には紗苗さんの写真があった。
それを弘介さんがどこに付けていたのかはすぐに思い当たった。
すぐに返してしまおうと思っていたそれをずっと返せなかった理由は分からない。
だけど私は弘介さんがギターをくれたあの時、迷いはなかった。
あのストラップはあそこに付ける以外にふさわしい場所はなかった。
「弘介さんと別れた後、道を引き返していたらたまたま河原で見つけたんです」
私がそう言うと、弘介さんは何も言わずに別の質問をした。
「どうして麗奈ちゃんは家の場所を嘘ついていたの?」
そんなこと聞かなくても分かるじゃない。
そう思ったけど口には出さずに素直に答える。
「私があの場所にいることが不思議じゃないように、です」
きっと弘介さんが聞きたいのはこんなことじゃない。なんとなく分かっている。
だけど私はあえてそれを自分からは言おうとしなかった。
「図書館であったのは偶然?」
「もちろんです」
あそこから計算していたとしたら普通に怖い。
ストーカー予備軍になってしまう。そう思って、笑ってしまった。
弘介さんが不思議そうに私を見た。
「すみません、気にしないでください」
もう遅いな。五年前の私は十分ストーカーのようなことをしていたような気がする。
「じゃあ、ずっと気になっていたんだけど」
これが本当に聞きたかった事なんだと思う。少し置いて弘介さんが言った。
「僕が一番喜ぶものって何?」
部屋の中に耳が痛くなるほどの静寂が訪れた。
――これが弘介さんが二番目に喜ぶものだと思って。
あの日の私の声が聞こえたような気がした。
あの時私はなんて言ったんだっけ。ああ、そうだ。
「内緒です」
もう一度同じ言葉でごまかす。今度は弘介さんは笑わなかった。
怒っているわけでもない、真剣なその表情を見て私は立ち上がった。
「帰ったら渡しますよ」
これは本当だった。次に会う時に渡そうと思っていたあの手紙。
ただこのタイミングで会うとは思っていなかったから持っていないだけで。
帰ったらあれを弘介さんに渡して全て終わらしてしまおうと、飛行機の中で会ったあの瞬間、なぜかそう思った。
私はもうほとんど話すことがないのでそう聞くと、弘介さんは迷わず頷いた。
「まず、この前返してもらったギターだけど、あれに付いていたあのストラップはどうしたの?」
弘介さんが真っすぐ私を見る。その目を見ようとしたけど、なぜか真っすぐ見れなかった。
視線を逸らすと窓から夜景が見える。
そのたくさんの小さな光を眺めていると、吸い込まれそうな気がした。
「勘違いしないでくださいね。盗ったわけではありません」
「うん、分かっているよ。麗奈ちゃんはそんな子じゃない」
この期に及んで私の肩を持つ弘介さん。
訳が分からない。今まで散々酷いことを言った私に対して「そんな子じゃない」?
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「雪だるまを作った日のことを覚えていますか?」
「懐かしいね」
「あの日、拾ったんです」
一人で帰っている途中に見つけたストラップ。中には紗苗さんの写真があった。
それを弘介さんがどこに付けていたのかはすぐに思い当たった。
すぐに返してしまおうと思っていたそれをずっと返せなかった理由は分からない。
だけど私は弘介さんがギターをくれたあの時、迷いはなかった。
あのストラップはあそこに付ける以外にふさわしい場所はなかった。
「弘介さんと別れた後、道を引き返していたらたまたま河原で見つけたんです」
私がそう言うと、弘介さんは何も言わずに別の質問をした。
「どうして麗奈ちゃんは家の場所を嘘ついていたの?」
そんなこと聞かなくても分かるじゃない。
そう思ったけど口には出さずに素直に答える。
「私があの場所にいることが不思議じゃないように、です」
きっと弘介さんが聞きたいのはこんなことじゃない。なんとなく分かっている。
だけど私はあえてそれを自分からは言おうとしなかった。
「図書館であったのは偶然?」
「もちろんです」
あそこから計算していたとしたら普通に怖い。
ストーカー予備軍になってしまう。そう思って、笑ってしまった。
弘介さんが不思議そうに私を見た。
「すみません、気にしないでください」
もう遅いな。五年前の私は十分ストーカーのようなことをしていたような気がする。
「じゃあ、ずっと気になっていたんだけど」
これが本当に聞きたかった事なんだと思う。少し置いて弘介さんが言った。
「僕が一番喜ぶものって何?」
部屋の中に耳が痛くなるほどの静寂が訪れた。
――これが弘介さんが二番目に喜ぶものだと思って。
あの日の私の声が聞こえたような気がした。
あの時私はなんて言ったんだっけ。ああ、そうだ。
「内緒です」
もう一度同じ言葉でごまかす。今度は弘介さんは笑わなかった。
怒っているわけでもない、真剣なその表情を見て私は立ち上がった。
「帰ったら渡しますよ」
これは本当だった。次に会う時に渡そうと思っていたあの手紙。
ただこのタイミングで会うとは思っていなかったから持っていないだけで。
帰ったらあれを弘介さんに渡して全て終わらしてしまおうと、飛行機の中で会ったあの瞬間、なぜかそう思った。
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